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「はらぺこあおむし」絵本作家の意外なルーツ!『エリック・カール展』の見どころ

5/27(土) 17:10配信

サライ.jp

取材・文/藤田麻希

絵本作家エリック・カールの『はらぺこあおむし』といえば、世界中の子どもたちに愛されてきた絵本です。幼少時代に読んだ、子供に読み聞かせたなど、手に取ったことがある方も多いでしょう。

ニューヨーク州に生まれ、6歳のときに、両親の祖国であるドイツに移住したエリック・カールは、青少年時代を第二次世界大戦下で過ごしました。絵を描くことが好きだったカールの才能を見出した美術教師のフリードリヒ・クラウスは、クレー、ピカソ、カンディンスキー、マティスなど、ナチス政権で「退廃芸術」として禁じられていた前衛芸術家の作品の複製をカールに見せました。

建物の色すら目立たないものに統制されていた時代、色を渇望していたカールにとって、この経験は代えがたいものになりました。中でも「青い馬」と題されたカールの作品には、カンディンスキーらの芸術運動「青騎士」に通じるものがあります。

そんなエリック・カールと日本には、じつは深い関係があります。『はらぺこあおむし』は日本の出版社の協力なくしては、本として発表できなかったかもしれないのです。

というのも、当時のアメリカでは、ページの幅が数種あり、穴をあける型抜き加工を施した複雑な製本は、採算のとれるものではなく、実現が難しかったのです。そこで、担当編集者が、はるばる日本の出版社に協力を仰ぎ、日本で印刷・製本することで刊行にこぎつけました。

その後も関係は続き、日本では、英語圏以外の国としては最も多く、カールの絵本が出版されています。

カールは日本で絵本の美術館を訪れたことをきっかけに、2002年、マサチューセッツ州に「エリック・カール絵本美術館」を開きました。そして現在、同館の協力のもと、東京の世田谷美術館では、カールの絵本の原画や作品を集めた大規模な展覧会『エリック・カール展 The Art of Eric Carle』が開かれています。

子どもはもちろんのこと、大人にも楽しむことができる濃い内容になっています。

世田谷美術館学芸部の遠藤望さんに、今回の展示の見どころを伺いました。

「展示の後半で、アンリ・マティス、パウル・クレー、フランツ・マルクといった画家たちの作品を、小コーナーで展示しています。ナチス政権下のドイツで青少年時代を過ごしたエリック・カールが決定的な影響を受けた作家たちであり、カールの仕事との関係を今回初めて具体的に紹介します。

またフェルナン・レジェ、ルネ・マグリットに関連する意外な絵本も展示しているほか、抽象作品や、オペラ『魔笛』のための舞台美術も含まれています。また作家が注目してほしい作品として挙げた最新作は、画家パウル・クレーへのオマージュです」

本展は、京都の美術館「えき」KYOTO、岩手県立美術館にも巡回します。誰もが目にしたことがある、あの絵本の原画に会いに、ぜひお出かけください。

【今日の展覧会】
『エリック・カール展 The Art of Eric Carle』
■会期/2017年4月22日(土)~7月2日(日)
■会場/世田谷美術館
■住所/世田谷区砧公園1-2
■電話番号/03・5777・8600 (ハローダイヤル)
■開館時間/10時から18時まで(入場は閉館30分前まで)
■休館日/毎週月曜日

取材・文/藤田麻希
美術ライター。明治学院大学大学院芸術学専攻修了。『美術手帖』などへの寄稿ほか、『日本美術全集』『超絶技巧!明治工芸の粋』『村上隆のスーパーフラット・コレクション』など展覧会図録や書籍の編集・執筆も担当。

最終更新:5/27(土) 17:10
サライ.jp

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