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メキシコのジャーナリスト殺害件数は中東と同レベル。取材活動は死と直結

5/27(土) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 5月16日、メキシコのシナロア州の路上で、ジャーナリストのハビエル・バルデス氏が殺害されました。

 バルデス氏はジャーナリストとして受賞経験もある人物。長年にわたり麻薬取引や組織犯罪などを追い、著書も多数あります。氏が殺害されたシナロア州はメキシコ最大の麻薬カルテル「シナロア・カルテル」の本拠地となります。

◆ジャーナリストであることは、ブラックリストに載るようなもの

 バルデス氏は麻薬犯罪を長年追ってきた人物だけあり、当然のことながら、自らの命が常に危険と隣り合わせであると認識していました。

 ザ・アトランティックによれば、バルデス氏は昨年「ジャーナリストであることは、ブラックリストに載るようなもの」と著書で述べたとしています。

 なお今年は、バルデス氏の警戒心はさらに強まっていたと考えられます。これには、約2か月前の事件が関係しています。今年3月、ジャーナリストのミロスラバ・ブリーチ氏が殺害されていますが、ブリーチ氏とバルデス氏には2つの接点があります。

 2つの接点とは何か。

 1つ目が、ブリーチ氏もバルデス氏同様、有名紙のラ・ホルナーダ紙に寄稿していたという事実。つまり、両者は同僚のようなものです。

 2つ目が、両者とも、メキシコでの「犯罪」を主なテーマにし、報道していたという点です(特に麻薬犯罪の点については重なる点もあります)。

 ちなみに先のブリーチ氏の殺害状況は凄惨でした。自宅前の自家用車内、しかも子供の目の前で、8発もの銃で撃たれたと当時のBBCは報じています。

◆バルデス氏殺害と同時期に、100人の集団による襲撃事件がある

 メキシコでは、バルデス氏殺害と同時期に、麻薬カルテル絡みと考えられている別の事件が起きています。

 13日、麻薬犯罪の取材をしていた記者など7人が、100人の集団から襲撃されました。幸いなことに命に別状はありませんでしたが、犯行グループは、

「生きたまま燃やす」

 など脅し、所持品を奪っていったとされています。記者団にとっては恐怖の警告といえるでしょう。

 襲撃された記者7名のうち、2名は上記でも書いたラ・ホルナーダ紙の記者とされています。ラ・ホルナーダ紙は有名な全国紙ですが、被害者が増えていることから、危機感を感じているジャーナリストは数多くいるでしょう。

◆誰が犯罪の糸を引いているのかはわからない

 なお、100人での襲撃があった場所は以前にも学生43人失踪事件の起きたゲレロ州。市長が首謀者で、警官と麻薬カルテルが実行役だったというむちゃくちゃな事件で、学生たちは焼かれ、棄てられたとされる場所です。

 このように、市長までも凶悪犯罪に加わりうることがあるというのが、メキシコの怖いところです。

 ジャーナリストへの殺害に関しても同様で、一番危険とされる麻薬カルテルだけから身の安全を確保すればいいというわけではありません。イグアラ市の例からも分かるように、そもそも麻薬カルテルと高官がつながっているケースもあるわけです。

 バルデス氏のジャーナリスト仲間であるブリーチ氏は、麻薬犯罪と汚職のつながりについて追っていました。

 この事件の背後に誰がいるかはまだ捜査中ですが、汚職の追及をされている高官が背後におり、ジャーナリストを「黙らせた」可能性も指摘されています。

 つまり、麻薬カルテルの背後に黒幕がいる可能性も十分考えられるわけです。

◆イラクよりもジャーナリストの犠牲者が多い国、メキシコ

 メキシコはジャーナリストにとっては危険地帯。これは共通認識となってきています。

 国境なき記者団は昨年、メキシコが世界で3番目にジャーナリストの犠牲者が多い国と発表。1番目に多い国はシリア、2番目がアフガニスタン、3番目がメキシコで、4番目がイラク、5番目がイエメンです。

 IS関連のニュースで頻繁に耳にする中東の国々が上位入りする中、メキシコが3番目に入っているのです。

 政府がこれまで以上に強固な政策をとらない限り、今年度も引き続き、メキシコがジャーナリストにとって危険地帯であるのは間違いありません。

<文/岡本泰輔>

【岡本泰輔】

マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。

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最終更新:5/27(土) 13:51
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