ここから本文です

「自衛隊の航空事故が多い」と感じるワケ

5/27(土) 9:00配信

週刊SPA!

◆「自衛隊ができない10のこと 04」

 さる5月15日、陸上自衛隊の連絡偵察機がレーダー上から消息を絶ち、16日には搭乗していた4名の自衛隊員が遺体で確認されました。お亡くなりになった自衛官のご冥福をお祈りいたします。通常、民間の航空機事故に対するテレビ報道は、旅客や乗務員などの安否を気づかい、ご遺族の気持ちにも配慮した内容となりますが、自衛隊機の事故の場合には「どんな過失が考えられるか」「機体そのほかに不備がなかったか」という話に重きが置かれます。自衛隊員も同じ人間なのに、人の痛みのわからない報道ばかりでいたたまれなくなります。

 今回のフライトは北海道知事の要請によるもので、亡くなった隊員達は、状態が悪化し専門治療が必要な患者を函館市の病院から緊急搬送するという任務を遂行中でした。

 では、なぜ、自衛隊機に要請があったのでしょうか?

 天候不良で自治体等のヘリが危険で飛べないために自衛隊に要請が回ったのです。自衛隊は入隊宣誓で「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め」と宣誓していますが、危険を伴う任務だったことは明らかです。

 つまり、自衛隊に救難要請があるのは「ほかのヘリは危険で飛べないような悪条件のとき」なのです。

 自衛隊の航空機事故が多いように感じるのはなぜでしょうか。

 山岳地帯や海上の救助、緊急医療搬送などの第1報は、民間の医療機関や警察、海上保安庁などにいきます。しかし、現場に危険なガスが発生したり、天候などの理由で波が高かったり、風が強かったり、見通しが悪くなったりすると、一般のパイロットは危険を理由に飛びません。そういうときに、最後の手段として、もっとも危険な条件の救助作業に呼ばれるのが自衛隊の救難航空機なのです。事故に至る確率が格段に高くなるのは当然です。決してパイロットの技量や機体ばかりの問題などではないということを知っておいてもらいたいと思います。

 事故を起こしたことは確かに問題です。しかし、「命を救ってほしい」という要請があったとき、自衛隊機も他と同じように条件が悪いことを理由に応じるべきではないのでしょうか? 安全第一と考えるか、救えるかもしれない人の最後のチャンスと捉えるか。これはとても難しい問題だと思います。

 空の交通については国交省への報告義務があります。民間航空機のパイロットは航空計画をパイロット以外の人がつくりますが、自衛隊では多くの場合、パイロットがフライトプランや許認可関係の手続きをします(航空自衛隊は別動隊がフライトプランなどをつくるようですが、多くの場合、自衛隊のパイロットはほかの雑務や手続きを自分でやります)。フライトが終わった後もその報告をパイロット自身が上げなければなりません。

 たとえば8時間のフライトがあれば、任務の確認や天候や条件などのブリーフィング、フライトが終わってからの報告などでほとんど丸一日拘束されます。パイロットは長時間任務にさらされているのです。

 救難活動は本来の任務ではないため、通常任務に加えて救助任務がくるわけです。しかも難易度の高いフライトです。これを引き受ける自衛隊パイロットさんたちの負担はどれほどのものでしょうか。想像を絶します。

 自衛隊は最後の砦と呼ばれています。危険な任務でも、何とか助けてあげたい一心で要請を受けるのです。でも、ひとたび事故が起これば非難され、事故責任が糾弾されるばかりです。命を懸けて人を救うためにフライトした代償がこれでは浮かばれません。

 また、こういった救助航空機事故に医師などの民間人が搭乗していれば、賞恤金が支払われます。賞恤金とは、生命の危険を顧みずに任務を遂行した殉職・負傷者に功労が認められたときに、勇敢な行為をたたえ、遺族に支給される弔慰金・見舞金のことです。民間人には確実に支払われる賞恤金ですが、殉職したパイロットには、内局が「過失相殺」を提示することが多く、かなりの金額が削られてしまう傾向にあるようです。

 事故により殉職した隊員は「過失があったはず」だから、賞恤金が支払われるとしても、その責任分を相殺して減額するのです。壊した航空機などの損害について責任を問われる場合すらあります。

 自衛官が救難や急患輸送で危険を顧みず多くの人の命を救ってきたことは正当に評価されていません。任務の成功で特別な報酬や受勲を受けることはありません。どれほど成功を重ねても当たり前と流され、殉職すれば非難される。重大な責任とリスクを背負い込み殉職した隊員の遺族への賞恤金も減額支給を内局からせっつかれるのが自衛隊です。

 こんなんじゃダメです。救いがどこにもありません。

 昔の日本では、勇敢な救難航空機が墜落などの重大事故で搭乗員が亡くなられたときには、その街やその遺族たちが慰霊を行うのが普通のことでした。

 昭和37年、奄美大島で、子宮外妊娠で大量出血を起こした女性に血液を運ぶため、海上自衛隊第1航空群所属のP2V 4628号機が悪天候のなかを飛び立ち、山林に激突して乗員12名と住民1名が亡くなりました。自衛隊航空機事故で最大の犠牲者を出す痛ましい事故でした。事故から50年余りたっていますが、地元青年会議所や市民の皆さんが今も慰霊祭を行っています。昔の日本の心を残す奄美大島の島民のように、自衛隊機事故に心からの追悼を捧げつつ、自衛隊の救難に携わる人やご家族のご苦労が報われるようにとお祈りいたします。

 政府は殉職された隊員のご遺族に減額されない賞恤金を支払ってあげるべきです。黙祷。

【梨恵華】

りえか。ミリオタ腐女子。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰

日刊SPA!

最終更新:5/27(土) 9:00
週刊SPA!

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊SPA!

扶桑社

2017年8月15・22日合併号
08月08日発売

¥440

・[東京VS地方]貧困のリアル
・[情弱ビジネス]騙しの最新手口11連発
・[神戸5人殺傷事件]報道できない裏側
・猛暑の[悪臭スポット]を測定してみた