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京都にちょこっとだけ開通した新名神は、まるで無人の荒野を往くが如し

5/27(土) 9:00配信

週刊SPA!

 去る4月30日、新名神の城陽JCT-八幡京田辺JCT間3.5kmが開通したので、実走してきた。

⇒【写真】新名神の小さな横断幕

 わずか3.5kmとは言え、一応天下の新名神である。しかし交通量は恐ろしいほど少なく、ピカピカの4車線道路は無人の荒野の如し。まるでSFのような光景だった。

 しかも現場には「新名神」の文字はごくわずかで、案内標識には「京奈和自動車道」「第二京阪道路」の文字ばかりが目立つ。

 それもそのはず、この3.5kmは、この2本の道路を接続するために建設されたのである。

 前後の新名神(大津-城陽間および八幡京田辺-高槻間 合計36km)は、15年前の道路公団民営化議論によって建設が凍結。そのまま凍結が続けば、城陽-八幡京田辺間は、ポツンと取り残された孤島のような新名神になる「はず」だった。

 その場合、新名神という呼称はかえって混乱を招く。案内標識に新名神の名前がないのは、それが理由だ。

 前後区間の建設が凍結されたのには、理由がある。

 新名神の大津-高槻間は、名神高速と並行する京滋バイパスおよび第二京阪道路に、さらに並行する形になり、完成すると3本の高速道路が並ぶ。これはさすがにムダだということで、民営化委員だった猪瀬直樹氏が、小泉首相(当時)に建設凍結を進言した唯一の区間なのだ。途中の城陽-八幡京田辺間のみ、連絡道路として残されたのである。

 ただ、当時の日本には「高速道路建設はすべてムダ」という空気が蔓延しており、大マスコミは「民営化の成果はたったのこれだけか」と、非難一色だった。

 2009年、これに異を唱えたのが橋下徹大阪府知事(当時)だった。橋下知事は、京滋バイパスは新名神の代替路たり得ないと主張。「猪瀬さんが命がけで取り組まれ、世間も後押しした経緯もあるが、国土軸を貫く基幹道路ということを説得したい」と、建設凍結解除を要望した。

 事業者のNEXCO西日本も、「危機管理の点からも絶対に必要な道路。当然、着工しないといけない」と、新名神の全線建設に執念を燃やしていた。

 紆余曲折の末、2012年に民主党政権が凍結を解除。新名神は2023年度中に全線開通する運びとなった。つまり、現状の孤島状態はあと7年で終了し、ばんばんクルマが走るようになる。並行する名神や京滋バイパスの渋滞も、ほぼ完全に解消されるだろう。

 ところで、建設凍結は正しかったのか?

 凍結当時は、私もこの区間の建設は不要と考え、自著にそのように書いたが、結果を見ると、橋下知事の主張が正しかったと認めざるを得ない。

 京滋バイパスはあくまで地域幹線道路。カーブや勾配が多く、週末の交通集中時を中心に、瀬田東JCT付近で渋滞が多発している。

 ただ、当時の日本の世論は、高速道路建設を絶対的な悪者と見ていた。つまり、なんらかのガス抜きは必要で、それがなければ世論はますます納得せず、道路公団民営化そのものが完全に説得力を失っただろう。

 もちろん、SAPAの活性化や建設費用の縮減、債務の順調な返済等を見れば、道路公団民営化は大成功だったわけだが、この孤島のような新名神は、その小さな生け贄となった考えるのが、適当ではないだろうか。

取材・文・写真/清水草一(道路交通ジャーナリスト)

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

日刊SPA!

最終更新:5/28(日) 19:57
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