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【U20】覚醒する堂安律、共鳴する攻撃陣。日本を16強に導いた2ゴールの意味

5/28(日) 11:16配信

フットボールチャンネル

 U-20日本代表は、27日のU-20W杯グループステージ最終戦でイタリアと2-2で引き分けて決勝トーナメント進出を確定させた。試合開始から7分間で2失点という状況から、チームを救ったのは堂安律だった。小川航基の離脱で燃える男が、圧巻の2ゴールで主役に躍り出た。(取材・文:元川悦子【天安】)

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●序盤にまさかの2失点。絶望を打ち破ったのは…

「我々は決勝トーナメントに出ることを一番の目標にここに来ている。そこは間違ってはいけない。(グループ)3試合の1戦目で南アフリカに勝って、2試合目でウルグアイにやられた今、3試合目をどう戦うのか。その判断を間違っちゃいけない」

 内山篤監督が口を酸っぱくしてこう語っていた通り、27日の2017年U-20W杯グループステージ最終戦・イタリア戦(天安)は勝ち点1以上を視野に入れた試合運びが強く求められた日本。ところが、彼らは開始早々の7分間で2失点という信じがたいミスを犯してしまった。

 前者はDF陣のラインコントロールのミスが発端。相手アンカー・マンドラゴラ(8番)の縦パスが出た瞬間、初瀬亮(G大阪)と杉岡大暉(湘南)の2人がオフサイドラインの後ろに残ってしまい、エースFWファビッリ(9番)に飛び出され、彼からのクロスを右FWオルソリーニ(7番)に決められた。

「僕の経験の浅さでラインを下げてしまった」と大会初先発の杉岡は悔やんだが、日本は3戦連続で先制点を献上する羽目になった。

 後者はフリーキック時の守りの乱れから。左FWバニコの飛び出しにマークの初瀬がつき切れず、アッサリとゴールを許してしまった。いずれにせよ、2点のビハインドが重くのしかかったのは事実。「これはちょっとまずいな」とスタメン出場した遠藤渓太(横浜)も動揺を覚えたという。

 0-2という絶望的なスコア。すでにエースFW小川航基(磐田)が負傷離脱していて、2点を返せる可能性は極めて低い。日本は絶体絶命の危機に瀕した。その崖っぷちからチームを救い出したのが、宿舎同室の小川から「いいところ持って行けよ」と激励された堂安律(G大阪)だった。

 反撃ののろしを上げたのは前半22分。自ら中央にボールを運び、いったん中山雄太に預け、左の遠藤に渡ったのを見極めて、背番号7はゴール前へ一目散に走った。次の瞬間、2人のDFの間に侵入。滑り込みながら左足でコースを変えて値千金の1点をゲットする。

「あれこそガンバで求められていたプレー。ワンタッチで点取るのは自分に今までなかったプレーなんで、それができたのはちょっと成長したところかな。ああいう怖いところに入っていけば得点量産はできると思う」と本人も目を輝かせたが、崖っぷちの状況で新たな得点パターンを出せてしまうところが堂安の非凡さ。これで彼も日本も完全に勢いづいた。

●「マラドーナかメッシを見ているようだった」圧巻の2点目

 圧巻だったのが、後半5分の2点目だ。同じガンバの盟友・市丸瑞希(G大阪)が前目に出してきたパスを「前へ行け」というメッセージだと受け取った背番号7は、3人のDFとGKがいることを承知でドリブル突破に挑んだ。面白いようにスルスルと相手をかわすと、最終的にはGKの逆を取る形でゴール。

「前半から相手が遅いなと思いながらドリブルしてたんで、調子がよかったのかなと。相手に当たってましたけど、俺のゴールです」と本人も強調。小川のユニフォームを掲げて喜びを爆発させた。

 このような仕掛けからの得点は堂安の最も得意とするところ。視察した日本サッカー協会の西野朗技術委員長も「マラドーナかメッシを見ているようだった」と驚き半分にコメントしたが、アジアMVPの卓越した打開力と攻撃センスが世界の大舞台で発揮されたのは特筆すべき点だ。

 U-20W杯のグループステージで3ゴールというのは、柳沢敦(鹿島コーチ)、高原直泰(沖縄SV)、平山相太(仙台)といった先輩FWたちも果たせなかったこと。それだけ堂安は異彩を放っている。ガンバの先輩・遠藤保仁や今野泰幸もこの大会でブレイクしてA代表にステップアップしているが、堂安も同じ軌跡を辿ってくれれば最高だ。それだけのポテンシャルの高さを彼は強烈に印象づけた。

 背番号7が多彩なゴールパターンを示したのに加え、遠藤や市丸らと息の合った連携を見せたのも前向きな材料と言っていい。「あのアシストのシーンは、自分がカットインしている時に律の動きが見えたし、点と点が合わせられた」と遠藤が言うように、攻撃陣の連動性とコンビネーションは試合を重ねるごとに高まっている。

 実際、遠藤のいる左サイドは杉岡、原輝綺(新潟)と3人が絡みながら何度かいい形を作り出していたし、遠藤自身もドリブル突破より中に絞って杉岡に高い位置を取らせることを第一に考えてプレーしていた。以前の背番号11は縦へ縦へ行くばかりで周りが見えていないプレーが多かったが、世界の大舞台で臨機応変さを表現できている。それは大きな前進だ。こういう選手がいるから堂安も光る。小川を失った日本攻撃陣に新たな光明が差したのは間違いない。

●16強で再び南米の雄と対戦。堂安なくして躍進なし

 堂安・初瀬・初瀬という右のガンバトライアングルも躍動感あふれる攻めを随所に出していた。「ミズ君(市丸)はホントにうまいし、(初瀬)亮君含めてやりやすい」と堂安もポジティブに話したが、彼らがいるからこそ大胆な仕掛けにも出ていける。強固な守備ブロックを武器とするイタリア相手にドリブルやクロスで変化をつけながら崩したという事実は自信と手ごたえにしていいはずだ。

 2-2になってからは、指揮官が繰り返し言い続けた「したたかな戦い方」をチーム一丸となって実践。結果的にきちんと勝ち点1をもぎ取ることができた。そこは大きな収穫だろう。もちろんイタリアが「引き分けOK」という感覚で来ていたからなし得たことではあるが、そういう展開に相手を引きずり込んだ堂安ら攻撃陣の働きは評価されるべき。守りの方は3試合5失点と改善の余地が大いにあるものの、小川不在の攻撃陣に「得点の取れそうな匂い」が漂ってきたことは、今後に向けて力強い要素と言える。

 日本は最大の目標だったベスト16入りを達成。決勝トーナメント1回戦はB組1位のベネズエラと30日に大田で戦うことになった。グループステージ3連勝、10得点無失点という圧倒的な数字を誇る南米の強豪は、ウルグアイと同等かそれ以上の実力を備えている可能性が高い。守備の修正は当然だが、ここまで以上に攻撃陣が迫力を出さないと、無失点を維持している相手守備陣の攻略は不可能だろう。

 そのけん引役となるのは、間違いなく堂安律だ。プレーの幅を確実に広げている18歳のアタッカーが点を取らずして、日本のさらなる躍進はない。

「個人的には満足したら自分はよくならない、悪くなるんで、ホントにまだまだだぞって言い聞かせながらピッチに立ちたいと思います」と語気を強める日本のキーマンの一挙手一投足から目が離せない。

(取材・文:元川悦子【天安】)

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