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自分にも落ち度があった性被害者は、幸せになってはいけないの――? 『先生の白い噓』

5/28(日) 18:00配信

ダ・ヴィンチニュース

 読むと苦しくなってしまうのに、どうしても目をそらせないマンガがある。『先生の白い噓』(鳥飼茜/講談社)だ。大学時代、男性経験もないのに、親友の彼氏に襲われてしまって以来、秘密の関係を強要されている25歳の高校教師・美鈴。優しい人だと思っていたバイト先の店長の妻に、ラブホテルに連れ込まれ逆レイプを受けて以来、女性の身体が怖くてたまらない男子高生・新妻。二人を中心に性と暴力、そして愛のなんたるかを抉り出す作品だ。

「人間を2つに分けたとして、必ずどちらかが少しだけ取り分が多い」「私はいつも少し取り分がすくない方にいる」。そんな美鈴の独白ではじまる本作は、親友・美奈子との対比から描かれる。愛されることに微塵もてらいのない美奈子。欲しいものはまっすぐつかみにいく彼女にとって、美鈴はただの引き立て要員だ。言葉の節々にマウンティングの棘を仕込み、美鈴を居心地の悪い“下”へと追いやっていく。だが美鈴に“勝って”いると思っている彼女の婚約者・早藤の本性は、処女食いのドS鬼畜男。美鈴の性器の写真をとり、美奈子しか友達のいない美鈴の境遇と、教師という立場を盾に、関係を強要し続けている。

 脅されている。虐げられている。暴力にさらされている恐怖は、美鈴の尊厳を奪い続ける。そしてときに、性の悦びを覚えてしまう自分を嫌悪し、美奈子に対する優越感をも覚えてしまう。そのことでますます、美鈴は自分自身を許せなくなっていく。

 自分にも落ち度があった、と美鈴は思う。逃げようと思えば逃げられた。どこかで関係を断ち切ることもできた。そして、自己嫌悪から逃れるために、彼女はさらに思う。男と女は平等じゃない。男の強大な暴力の前に、女にはなすすべはないのだと。だからこそ、男であるのに性被害者となった生徒・新妻の存在は、彼女にとって大いなる矛盾となって現れる。おまえは逃げられたはずじゃないのか、と。

 もちろん新妻の場合、本気で腕力に訴えれば逃れることもできただろう。けれど彼はそうしなかった。「旦那のある女をホテルに連れ込んだんだから責任を取って最後まで抱きなさいよ?」。そう迫られた新妻は、美鈴のように力ずくで抑え込まれたわけではないし、最終的には抱いている。けれど、だからこそ彼はその後、EDになってしまう。いやだったのに、こんなのはおかしいと思ったはずなのに、勃起してしまった自分。女の人を汚したのか、それとも汚されたのか。わからずに苦しむ彼はまぎれもない性被害者なのだ。

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