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映画化連発! 荒木源の最新作『人質オペラ』はリアル・テロ群像劇 

5/28(日) 11:30配信

Book Bang

昨年公開された杏さん主演『オケ老人!』などのヒット映画の原作を書いているのが荒木源さん。「映画化連発作家」とも呼ばれる荒木さんの最新小説『人質オペラ』が5月に刊行される。日本人女性が海外のテロ組織の人質になったことをきっかけに、人質の家族や官僚、政治家、メディア記者などが絡み合ってクライマックスへと突き進む、設定はヘビーだが軽やかさのある群像劇だ。本作も映画化されるのか? などを担当編集者と共に語った。

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■すでに「映画化したい」との声が! 

水口 この題材は荒木さんが長く温めてきたもので、小説のプロットを聞かせていただいたときにすごく面白いと思い、ぜひ単行本にしましょうとお話させていただきました。

荒木 いつの頃からか、「ウケ」が何よりも大事な世の中になりましたよね。テレビなどのメディアはもちろん、政治の世界も「ウケ狙い」で物事を判断しがちです。海外のテロ組織に日本人が人質に取られた場合でも、「人命は地球よりも重い」と考えるか、「自己責任」と突き放すかは、それが国民にウケるかどうかで判断されてしまうのではないか。それが良いか悪いかを言うつもりは私にはありませんが、そういう現象に関心があって小説にしたいと考えていたんです。

水口 荒木さんは元新聞記者ですから、リアルな情報を収集するのもお手のものですよね。

荒木 知り合いのメディアの人間からも話を聞いて、いろいろ参考にしました。こういう状況なら首相はどう考え、官房長官はどう動くかといったことを取材したうえで、キャラクターを作っていったんです。外務官僚や警視庁の捜査員が考えそうなことも一定のパターンがありますが、この小説の中ではあえてパターンに当てはまらないことをさせたりしています。

水口 小説だから書ける、というところもあるのかもしれませんね。

荒木 そこが難しいところで……。私が新聞記者を辞めて小説を書こうと思ったとき、最初は「ノンフィクションを捏造すれば小説になる」と思っていたんです。新聞記事は全部ノンフィクションですよね。続きものの記事になると、短編小説くらいの分量になったりもする。新聞記者としてそれまで書いてきたようなものに想像で肉付けをすれば、簡単に小説が作れる。そう思って書いたんです。

水口 ところが……。

荒木 まったくうまく行かなかった。現実に乗っかって書いた場合、想像したものをひとつでも入れてしまうと、途端に破綻するんです。小説というのは、一から全部作らなければいけないんだと思い知らされ、愕然としましたね。どえらいことを始めてしまった、と(笑)。小説に登場させる新聞社の名前ひとつ考えるのだって大変なことなんですよ。

水口 登場人物の名前なんかも同様ですね。

荒木 そう。作家のどなたかが「登場人物の名前を半分考えれば、もう小説はできたようなものだ」と言っていた気がします。名前を考えてその人物のイメージがだいたい形作られたら、物語の方向性もおのずと決まってくるわけです。

水口 今回は登場人物が多いから大変でしたね。

荒木 少ししか登場しない人に関しては、名前をつけずに肩書だけにするという方法もあったのですが、そうするとやっぱりリアリティが出ないんですよね。全員に名前をつけるほうが、大変でも私には向いているようです。

水口 本作では、事件のさなかの官邸が何度か出てきますが、リアルに官邸の動きを描いたエンタメ作品としては、最近は映画『シン・ゴジラ』が話題になりました。

荒木 あの映画の製作陣は、めちゃくちゃ取材したようですね。総理執務室のビジュアルも、綿密に取材して作ったとか。大きな嘘をつくときには、小さなことをきっちり固めなければいけないというのは、みなさんおっしゃることですけれども、私も今回、そういうことを意識して執筆に当たりました。

水口 荒木さんの小説が原作になった映画は、2010年公開の『ちょんまげぷりん』、2015年公開の『探検隊の栄光』と『オケ老人』でこれまで3本あります。『人質オペラ』以前に刊行した小説は計7作ですから、映画化打率は4割超えです。本作をすでに読んでいただいた人の中には、「ぜひこれは映画化したい。でも、僕につくような予算じゃ無理だ」とおっしゃった方もいまして。

荒木 私の小説がいくつか映画化されてきたのは、安く作れる内容だからではないかと私も思っているんです(笑)。もし、『人質オペラ』が映画化されたら、それだけが理由ではないんだなってことだから嬉しいです。本作を映画にするとしたら、総理執務室を作り込まなければいけないし、人質を巡るシーンは、さすがに現地ロケはしないと思うけれど、イスラムの地に見える場所で撮影しなければならない。これは結構おカネがかかりますよ(笑)。

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最終更新:5/28(日) 11:30
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