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生活を豊かにするイタリアン・デザイン

5/29(月) 18:56配信

GQ JAPAN

新興住宅地が始まりだった

デザインは愛に似ている、という説がある。デザインといってもあまりにも多様で、定義するのがむずかしいからだ。

【写真をみる】デザインが魅力的な家具

それにもかかわらず、イタリアのデザインというと、わたしたちは、楽しいとかぜいたくとか、さまざまなイメージをふくらませることができる。

じつは、彼の地で家具の”デザイン”が始まったのは1950年代だ。比較的最近である。

イタリア人が家具に目覚めたのは、戦後のベビーブームと住宅ブームゆえ、といわれる。

イタリアン・デザインの本拠地となったミラノでは、多くのひとが旧市街の物件よりスペースが広い郊外のアパートメントに移り住んだ。

スペースがあれば家具を置かなくてはいけない。しかし戦前のような旧態依然としたものに飽きていたイタリア人は、新しい造型を求めた。そこで最初は北欧家具がブームになった。

それがきっかけとなり、家具メーカーが多かったミラノでは、新しい世代に向けての製品の開発が急がれるようになった。結果、必死の競争が起こり、それがミラノを家具デザインのメッカにしたのだ、とミラノにあるトリエンナーレ・デザイン美術館のキュレーターが教えてくれた。

椅子は最高のキャンバス

1950年代から70年代にかけてイタリアでは、数多くのデザイナーが後世に残るすばらしい仕事をした。なかでも、このページでおわかりのように椅子が多い。それには理由がある、というのはデザイン評論家のアリス・ローソーンだ。

プロダクトデザインについての彼女の名著『Hello World』(日本語訳は『デザインが私たちに必要な理由』)で、椅子は大きさからいってもデザイナーにとって最高のキャンバスだと分析している。
「最新の材料や生産プロセスを使うのに十分な大きさがあり、デザイナーやメーカーが実験を躊躇するほど大きくない」(石原薫訳)

印象的なのは、50年代にカスティリニオーニ兄弟が手がけた「メッツァドロ」(85頁)や「セッラシート」。これはトラクターや自転車のシートを流用している(日本では驚くほど高価)。

いっぽうでこの特集の最初にあったようにジオ・ポンティは建築家らしく構造的にたいへんすぐれた超軽量で、すばらしく美しいスーパーレッジェラを手がけている。

イタリアのデザインが並外れて優れていることは、50年代から60年代を経由して70年代、そして80年代と、切れ目なく名作を生み出してきた事実が証明している。いまも毎年4月にミラノで開かれる家具の見本市が世界的な注目を集めているのはご存知の通りだ。

イタリアのデザインが一過性のブームで終わらなかったのは、精神的支柱がしっかりしていたせいだと、ローソーンは指摘している。それのいい例として挙げられるのがブルーノ・ムナーリだ。日本では『闇の夜に』といった着想ゆたかな絵本作家として有名なムナーリは、日用品は日常接するものだけにいいかげんなデザインをしてはいけない、と説いた。

さきのカスティリオーニ兄弟をはじめ、ジョエ・コロンボ、エンツォ・マーリ、アレッサンドロ・メンディーニ、それにエットーレ・ソットサスといった巨匠たちは、みなムナーリの考えに同調した。

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最終更新:5/29(月) 18:56
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