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権威者の指示なら、「9割」が電気ショックのボタンを押し続ける:実験で明らかに

5/29(月) 17:50配信

WIRED.jp

大量のユダヤ人を殺害したホロコーストの責任者、アドルフ・アイヒマンは、ただただ命令に従っていた「凡庸」な男だった。アイヒマンのように、権威者の指示に従ってしまう人間の心理を調べるための「ミルグラムの実験」。1963年から度々繰り返されてきたこの実験がいま、再び行われた。

『ヒトラーに抵抗した人々』著者・對馬達雄インタビュー

「わたしの罪は、従順だったことだ」(アドルフ・アイヒマン)

あなたは強大な権威をもつ誰かに、ほかの人間を傷つけたり、殺害したりするような残虐な行為を命じられたとき、その命令に背くことができるだろうか。苦痛を訴える絶叫や、悶絶の金切り声を聞きながら、権威者の「迷うことはありません。この実験を続行してください」の超然たる一言で、さらなる苦悶を促すボタンを押すことを選ぶだろうか。

多くの人々はこう訊かれると、「自分は絶対にそんな命令には従わない」と答えるという。しかし、実に6~8割を超える人々が、権威をもつ人物に強く命令されれば、良心の呵責に苛まされながらも、残虐非道な行為を実行し続けてしまう──。それが、1963年よりたびたび実施されてきたミルグラムの実験により明らかになったことである。

今回、新たに発表されたポーランドでの再実験でも結果は同じだった。2017年3月、学術誌『Social Psychological and Personality Science』に掲載された「2015年でも電気ショックを与えられるか」という題名の研究では、驚くことに90パーセントの被験者たちが、権威の下で電気ショックのボタンを最後まで押し続けた。最初の実験から半世紀の年月を経て、グローバル化やインターネットにより「開かれて」いった社会に住む現代人の意識をもってしても、正義という名の内面的モラルは、権威者の影で身を潜めてしまうものなのだろうか?

わたしたちの多くは、おそらく無意識に、誠意、平等、公平、正義などに、「善であることへの憧憬」のようなものを抱いている。テレビや漫画や小説でも、主人公は多くの逆境を経験しながらも、正義の名のもとに精神的または肉体的な壁を乗り越えることで、オーディエンスにカタルシスを与えてくれる。そんなひたむきな姿に、わたしたちは感動を覚え、涙さえ流すものだ。

ここで、ひとつ自問してもらいたい。「善であること」にある程度のモラルを置くあなたは、自分の心のなかの道徳観が、組織の圧力に負けるときが一度たりともないと言い切ることができるだろうか?

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最終更新:5/29(月) 17:50
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