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「映画保存に対する一つの見方を提示」 岡田秀則に聞く、「アーキビストの眼で見た映画」〈映画本大賞受賞記念インタビュー〉

5/29(月) 6:30配信

Book Bang

■フィルム・アーカイブの体系化へ

 映画本大賞2016でベスト・ワンを受賞した『映画という《物体X》 フィルム・アーカイブの眼で見た映画』(立東舎)は、日本ではいま現在、まず類書のない映画本である。
 目次を眺めただけでも興味津々、ハッとさせられるようなことばが並んでいる。「日本では映画は保存しないようです、とアラン・レネは言った」「映画は牛からできている」「映画はなくても映画史は立ち上がる」……。

 著者の岡田秀則は、東京国立近代美術館フィルムセンター研究員として、映画フィルムや関連物の収集・保存、特集上映や展覧会の企画などに携わってきた。

「おそらくこの本は映画保存に関する日本で最初の商業出版物でしょう。ただ、最初の著者が私で正しかったかどうかはいまだ疑問です(笑)。この世界にいれば誰もが、フィルムセンターの前主幹で、日本でこの分野を切り拓いた岡島尚志が最初に書くのが自然だと思っていたはずです。この本には彼から学んだことも多く含まれていますから」

 じっさい、岡田氏は<自分のプロフィールに「フィルム・アーキビスト」と記すようになったのは、ごく最近のことである>と書いている。なぜならば日本では映画保存とはどういうものかを学べる機関もそのためのノウハウも確立されていないからだ。
<学ぶ場所がないから、いざそういう組織に勤務することになってから、初めて考え始めることになる。日々直面する課題を前にして試行錯誤をする、その過程をつなぎ合わせた、あまり理路整然としていない過程の中でしか、私はフィルム・アーカイブの像を結ぶことができない>
 数年前、筆者が岡田氏と本書の企画について話した際、「研究書のような硬い本ではなく、エッセイ的に読める柔らかい本にしたい」とおっしゃっていたことを思い出す。はたして本書はまさしくそのような手ざわりをもった本として完成された。

「これはアーカイブの指南書ではなく映画保存に対する一つの見方を提示した本なので、興味の入口として機能してくれれば嬉しいですね。2006年には『映画の復元と保存に関するワークショップ』が始まり、個々におこなわれてきた映画保存にまつわる活動が少しずつ体系化されている。これからはこの分野に関する本もたくさん出てほしいですし、むしろそうした流れのなかの一冊に早くなってくれることを願っています」

 状況整理や議論への入口として本書があるとすれば、その文章は貴重な思索の記録として、まさしくアーカイブ的な価値をもつことになるだろう。

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最終更新:5/29(月) 6:30
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