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学校不祥事の顛末 -女性教諭にセクハラとパワハラ-(1)

5/30(火) 11:00配信

教員養成セミナー

後を絶たない職場のハラスメント 特徴の一つは「加害意識の欠如」

【今月の事例】
A県教育委員会は、同僚の女性教諭に暴言を吐いたり、キスをしたりするなどのパワハラやセクハラをしたとして、B市立中学校の男性教諭(40)を同日付で懲戒免職にしたと発表した。県教委によると、教諭は当時勤務していたB市内の中学校で、女性教諭に対して、頻繁に肩や頬を触ったり、「教師が嫌になったら、やめちまえ」などと罵倒を繰り返したりしていたという。女性教諭が学校に被害を打ち明け、発覚した。教諭は、「大変申し訳ないことをした」と女性教諭に謝罪したという。


1 ハラスメント被害の特徴~加害意識の欠如
 「セクハラ」「パワハラ」といった言葉そのものは、既に社会へ浸透していると言ってもよいと思います。しかし、その被害は後を絶ちません。何故なのでしょうか。

 本事例では、40歳の男性教諭が、同僚の女性教諭に暴言罵倒のほか、キスのような性的行為などを繰り返していました。

 この男性教諭も「セクハラ」「パワハラ」という言葉は知っていたはずです。ただ、自分のしていることがこれらに該当するかどうか、客観的に判断できなかったのではないでしょうか。こうした加害意識の欠如は、ハラスメントにおける一つの特徴です。


2 セクハラに関する処分量定の例
 加害者が自分の行為一つ一つにそれぞれ理由があると主張しても、ハラスメント被害の有無は客観的に判断されます。

 東京都教育委員会による「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」のうち「職場におけるセクシュアル・ハラスメント等」の部分を次に引用します(東京都教育委員会Web サイト参照)。


・ 地位を利用して強いて性的関係を結び又はわいせつな行為を行った場合
・ わいせつな内容のメール送信・電話等、身体接触、つきまとい等の性的な言動を繰り返して相手が強度の心的ストレスにより精神疾患にり患した場合
→【免職,停職】

・ わいせつな内容のメール送信・電話等、身体接触、つきまとい等の性的な言動を繰り返した場合
・ 相手の意に反することを知りながらわいせつな言辞等の性的な言動を行った場合
→【停職,減給】

・ 職場等において相手に性的な冗談・からかい、食事・デートへの執ような誘い等の言動を行
い性的不快感を与えた場合
→【減給,戒告】


 本件の場合、キスのほか、肩や頬など身体的接触が頻繁に行われていたところ、これに恫喝といったパワハラも加わっていることから、「懲戒免職」という最も重い懲戒処分が相当と判断されたものであり、これは上記量定基準に鑑みても妥当と考えられます。


3 被害者の声
 本件の女性教諭は、勇気を持って学校に被害を打ち明けました。しかし、一般的には、以下のように悩んでしまう被害者もいるのではないでしょうか。当事者の気持ちに寄り添うつもりで、一読してみてください。


・ 相談したことが分かったら、もっとひどい目に遭いそうで怖いから言えない。
・ 恥ずかしくて誰にも相談できない。なかったことにしたい。
・ 自分にも隙があったのかもしれないから仕方ない。忘れたい。
・ 相手(または自分)の異動まで我慢しさえすれば済む。
・ 相手は仕事ができて管理職の信頼も厚いから、自分が管理職に相談しても信じてもらえないかもしれない。
・ 管理職が相手をかばえば、自分だけが悪者になってしまう。
・ このような問題を解決できないのは自分が悪いからではないか。「嫌になったらやめてしまえ」と言われても仕方ないのではないか。


4 相談窓口
 被害に遭ったら、追い詰められるまで抱え込んではいけません。できるだけ早く信頼できる人を見つけ、相談することが大切です。また、加害者になってはいけないのは当然として、同僚が被害に遭っていることに気付いたら、見て見ぬふりをしないことも大切です。

 管理職に相談するほか、自治体のセクハラ相談窓口やパワハラ相談窓口など学校外の相談窓口を利用するなども選択肢の一つです。


弁護士 樋口 千鶴(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)
※「教員養成セミナー2017年6月号」より

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