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iPhoneは「引き算商品」のお手本 「丸」と「長方形」だけでわかる

5/30(火) 6:10配信

日経BizGate

機能の引き算で新たな価値が生まれる

 「完璧がついに達成されるのは、何も加えるものがなくなった時ではなく、何も削るものがなくなった時である」(サン・テグジュペリ)

 商品の品ぞろえの引き算や、ターゲット顧客の引き算だけでなく、商品開発においても「引き算」が力を発揮する。「引き算の商品開発」の考え方自体はシンプルだ。自分が取り扱う商品に関して、一般的な「機能」や「部品」を洗い出し、その中から「何か」を引き算して、「別の何か」に集中する。

 ポイントになるのは、引き算をしたときに新しい価値が生み出されることである。もし、新しい価値が生まれなければ、それは「引き算」ではなく、単に「無駄を省いた」「余分なものを取り除いた」に過ぎない。

「丸」と「長方形」だけで表現できる

 まずは、次の質問に答えてほしい。

 Q 右の図に示すものは何だと思いますか? メーカー名と商品名をお答えください。

 全国1000人の消費者に、「メーカー名」と「商品名」を自由に書いてもらった。結果は、「角の丸い長方形」と「小さな円」の2つの図形の組み合わせを見るだけで、1000人中481人が「Apple」という特定のメーカー名をあげ、1000人中467人が「iPhone」という特定のブランド名をあげている。

 これは驚くべきことだろう。世の中に、たった1つの「丸」と「長方形」だけで表現できるブランドがいくつあるだろうか。iPhone以外では、「日本の国旗」ぐらいしか思いつかない。iPhoneは、今を代表する「引き算商品」といってよいだろう。iPhoneが人の心を引きつけるのは、引き算から生まれた「シンプルなデザイン」や「使い勝手の良い機能」だ。

 iPhoneには「ホームボタン」と呼ばれるボタンがひとつしかない。ひとつだけのボタンは、アップルが追求するシンプルさの象徴だ。スティーブ・ジョブズは、iPhoneのボタンをひとつにすることにこだわり、多くの案を却下して、最終版にたどり着いた(シーガル、2012年)。iPhoneには「説明書」もない。考え抜かれた商品には説明はいらないということなのであろう。

 とはいえ、シンプルに至るのは、簡単ではない。iPhoneのボディーの外側から見えるネジは、極小サイズのものがわずか2本とほとんど目立たない。だが、内部構造はまったく違う。

 内部構造を日本メーカーの端末と比較した際のもっとも特徴的な違いは、使われているネジの多さだ。内部は、ネジの方向もバラバラだ。日本メーカーでは、生産効率の観点からねじ止めの方向の統一は常識。非効率だが妥協をしない(「日経デザイン」2012年6月号)。シンプルの裏には、多大な努力が隠されているのである。

 iPhoneユーザーのブランドロイヤルティは高い。「買い替えるとしたら、どのブランドが良いですか」を聞いたところ、iPhoneユーザーは、88.2%が「現在と同じブランドが良い」と回答している。一方、iPhone以外のスマートフォンを利用するユーザーでは、「現在と同じブランドが良い」と回答する人は59.9%にとどまる。

 「今後とも、このブランドを利用し続けたいですか」を聞いたところ、iPhoneユーザーは、73.1%が「その通り」「ややその通り」と回答している。一方、iPhone以外を利用するユーザーでは、「その通り」「ややその通り」と回答する人は41.5%にとどまる。

 「現在利用しているスマートフォンを人に薦めたいですか」と聞いてみると、iPhoneユーザーは、67.1%が「その通り」「ややその通り」と回答している。一方、iPhone以外を利用するユーザーでは、「その通り」「ややその通り」は36.2%と半数に満たない。引き算で生まれる絆は強いということだ。

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最終更新:5/30(火) 10:54
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