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「テロについてSNS投稿」する前に考えなければならないこと

5/30(火) 12:10配信

WIRED.jp

英中部のマンチェスターで発生した自爆テロ。衝撃的な事件の写真や動画がソーシャルメディアで一気に広がったが、こうした「恐怖の拡散」は、テロリストの思うつぼであり、さらなる恐怖や苦しみを生むことを忘れてはならない。

増える「Facebook殺人動画投稿」、その規制はなぜ難しいのか?

英中部のマンチェスターで、2017年5月22日(現地時間)に発生した自爆テロ。少なくとも22人の命が奪われたこの事件の直後には、衝撃的な事件の写真や動画がTwitterやFacebookなどで一気に広がった。このような衝撃的な事件への反応としては自然なもので、その行動は理解できるものであろう。だが、こうした「恐怖の拡散」は、テロリストの狙い通りでもあることを忘れてはならない。

テロリストの狙いのひとつは、世界の注目を集めることである。それがソーシャルメディアの普及によって簡単に、かつ勢いを増して実行できるようになった。テロリストは、ソーシャルメディアを利用して人々を“洗脳”し、関係を構築し、そして誘い入れる。

だが、それだけではない。一般の人々に恐怖を拡散し、被害者の家族を含む大勢の人々を傷つける。さらには誤った情報を意図的に流すことで、政府などを混乱に陥れるのだ。こうしてテロは加速し、模倣を招き、テロリストという犯罪者を「殉教者」へと変えていく。

世界のどこかで爆発が起きれば、瞬時にインターネット中に広まる。もし同じような事態をTwitterやFacebookなどで目にした際は、以下のことを気に留めてほしい。

脊髄反射的な反応という“罪”

「#PrayForManchester」というハッシュタグが付けられた月曜のツイートには、自爆テロの瞬間と人々が恐怖で逃げ惑う姿を映した携帯動画が添付されていた。このツイートは、テロが報道される頃には594人にリツイートされていた。主要な放送局でも同じような動画を数時間にわたって繰り返し流した。映像や画像からは、何か新しい情報が得られるわけではないのに、この繰り返しが次の朝も続いたのである。

テロが起きると、その恐怖を世の中の誰もが広く拡散しようとする。中東報道研究機関(MEMRI)でテロリストのインターネット利用を研究するスティーヴン・スタリンスキーは、「いつ何が起きたとしても、誰かがスマートフォンで動画を撮っている前提になりつつあります」と語る。

テロの目的は単なる殺傷行為ではなく、地域社会や国家全体を恐怖に陥れることである。その目的のためにテロリストは、メディアの力が必要なのだ。ここでいう「メディア」には、テレビなどの既存のメディアだけでなく、ソーシャルメディアも含まれる。このため誤った情報や、意図的に歪められた情報、そしてニセの情報が一気に広まっていくのだ。これが現代におけるテロの新しい“定石”であり、テロリストが求めているものでもある。

「宗教や白人至上主義、そして学校での発砲のような大量殺人テロの戦略に、結果としてメディアは加担し続けているのです」。月曜のテロの直後にこうツイートしたのは、作家で研究者のジーナップ・トゥフェックチーである。オンラインでの情報拡散に関する専門家である彼女の発言は、遺体の画像や恐怖の瞬間を映し出したヴィデオを拡散しないよう警告するものだった。これらの問題は、テロリストのアカウントを削除するだけで解決するものではない。

人々がソーシャルメディアにテロの様子を載せるのは、誰かを助けようとする目的もある。マンチェスターでのテロでは、避難経路を見つけ出す目的でTwitterを利用していた人々もいたようだ。こうした利用法とイデオロギーの拡散との間でバランスを取るのは、かなり難しいことだと言える。

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最終更新:5/30(火) 12:10
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