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アルビノ襲撃はびこるアフリカ、根強い偏見と誤解

5/30(火) 10:06配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

 少年の名前はエマ、15歳。彼が6歳のとき、なたを持った4人の男に襲われ、左腕と右手の指、顎の一部、前歯4本を失った。

インドに暮らす3世代全員がアルビノという家族、タンザニアのアルビノの子どもたち

 エマは先天性白皮症(アルビノまたはアルビニズムとも呼ばれる)だ。黒い肌の両親から受け継いだ遺伝子の劣性形質が発現した。そのため肌は象牙のように白く、短く刈り込んだ髪は薄いオレンジ色で、視力が弱い。

 サハラ以南のアフリカでは、古くからアルビノの人々は恐れられ、家族からも蔑まれてきた。そして今では身の危険にもさらされている。その体を材料にした薬や魔よけが、富と名声をもたらすと言う呪術医がいるのだ。

 嘲笑の的になる、視力が弱い、太陽の光に過敏といった彼らの境遇は世界共通だ。さらにエマたちが暮らす地域では、悪魔や魔力がまだ当たり前に信じられている。十分な教育を受けられず、貧困がはびこっているせいで、アルビノへの誤解が根強い。アルビノの赤ちゃんは生まれてすぐに殺されるか、村のおきてに従って生き埋めにされるのだ。

1990年以降、少なくとも190人が殺された

アルビノに対する偏見の払拭を目指すNPO「アンダー・ザ・セイム・サン(同じ太陽の下)」の記録によると、1990年代以降、アフリカ27カ国で少なくとも190人が殺され、300人が負傷した。襲撃のほとんどは2008年以降に発生し、最も件数の多いタンザニアでは、アルビノの人々の墓の盗掘まで起きている。

 アンダー・ザ・セイム・サンにはタンザニア人スタッフが26人いるが、半数以上がアルビノだ。アルビノの人々の殺害や襲撃、誘拐などが起きた村があると、彼らはそこでアルビノへの理解を深めてもらおうとセミナーを開く。そうした辺境の村々では、呪術医や妖術師、占い師といったさまざまな相談役がいて、彼らはスワヒリ語で「ワガンガ」と呼ばれている。ワガンガには、病気だけでなく、牛の乳量や妻のそっけない態度まで、あらゆる相談がもち込まれる。彼らはその内容に応じて、植物の根、薬草、動物の血などを処方するのだ。

 そうしたワガンガのなかには、仕事や政治における成功をより確実なものにしたいのなら、近隣に住む白い肌の人間に宿る魔力を手に入れるよう、助言する者もいる。彼らはアルビノの毛髪、骨、性器、親指に、それぞれ独自の効力があると信じているのだ。それらを乾燥させ、すり潰し、袋に入れて持ち歩いたり、海にまいたりすれば、網いっぱいに魚が捕れ、岩肌に金脈が浮かび上がり、政治家は選挙に当選するという。

 警察によると、アルビノへの襲撃は家族が関与していることがほとんどだという。アルビノは「歩く現金」とからかわれることもある。ワガンガは腕1本をおよそ50万円で依頼者へ売り渡し、被害者の父親には5万円、10万円といった金が転がり込む。タンザニア人の平均年収は30万円余りなので、これはかなりの大金だ。

 アルビノの体と神秘的な力が結びついた理由ははっきりしない。だが研究によると、こうした状況になったのは、ほんの十数年前からだという。自給自足の生活を送っていた農民たちが、リスクはあるものの、魚を捕ったり、金鉱で働いたりすることで、収入を得られる機会が増えた頃のことだ。

※ ナショナル ジオグラフィック6月号「白い肌に生まれて」では、アルビノの人々への根強い偏見や差別に焦点を当てています。

Susan Ager/National Geographic

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