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PSG、リーグ制覇逃すも国内カップ2冠は達成。圧倒的戦力有すも、勝負強さ欠くシーズンに

5/30(火) 7:20配信

フットボールチャンネル

 5月27日、フランス杯決勝がスタッド・ド・フランス(サンドニ)で開催され、パリ・サンジェルマン(PSG)がアンジェに勝利し、記念すべき100回大会の優勝チームに輝いた。モナコにリーグ戦は譲ったPSGだが、今季の出来からすれば、国内カップ2冠は十分な成績と言えるかもしれない。(文:小川由紀子)

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●決勝の相手とはケタ違いの経験値

 5月27日に行われたフランス杯決勝をもって、今季のフランスリーグの幕は閉じた。そしてフランス最古のコンペティションであるこの大会の記念すべき100回目の勝者は、パリ・サンジェルマンに決まった。

 3連覇を狙うパリSGに挑んだのはSCOアンジェ。ここ30年ほどはリーグ2常連だった彼らは、トップリーグ復帰後2年目にしてボルドーやギャンガンらリーグ1のライバルを倒してクラブ史上初の決勝進出を果たした。

 しかし経験値はケタ違い。カタール体制になってからスタッド・ド・フランスで戦うカップ戦決勝はこの試合で6回目、過去5回はいずれも勝利と、パルク・デ・プランスに次ぐ『第2のホームグラウンド』で戦う感覚のPSGに対し、アンジェのメンバーでこの偉大なる国立スタジアムのピッチに立ったことがある選手は3人しかいなかった。

 前日の会見ではアンジェのステファン・ムーラン監督も、「これはダビデとゴリアテの戦いだ」と、旧約聖書を引用して、“番狂わせ”を意味する発言をしていた。

 しかし彼も「アンジェを応援する声が信じられないくらい届いている」と話したように、PSGサポーターと、おそらく彼らが優勝すればヨーロッパリーグ出場権がまわってくるリーグ6位のボルドーのサポーター以外は、皆がアンジェをサポートした、といっても過言でないほど、フランスのサッカーファンは世紀の『ジャイアント・キリング』に期待した。

 しかして結果はアディショナルタイムのオウンゴールでアンジェが0?1で敗れるという痛恨のエンディングに。

 PSGの右CKの場面でマテュイディと競り合って飛び上がった、ちょうどそのタイミングに体の一部にボールが当たったアンジェの右サイドバック、イッサ・シソコはアンラッキーだった。むしろ称賛すべきは、アンヘル・ディ・マリアが蹴った、ゴールに向かって弓なりに弧を描いた素晴らしい右CKだろう。

●カバーニ、イブラ超えはならず。マクスウェルは有終の美

 そしてあと数秒でアディショナルタイム!という瞬間まで、PSGの猛攻をしのいだ彼らアンジェの戦士たちにも、賛辞のみが贈られた。

 別の取材で南仏にいたため、この試合は残念ながらテレビ観戦することになったのだが、『アンジェ市民であることを誇りに思う』と染め抜かれたマフラーを掲げた2万人のアンジェサポーターが、最後まで声援を贈り続けていた姿は、画面で見ていても感動的だった。

「結果には反映されなかったが、チームは自分たちが持てるクオリティを十分に発揮してくれたと思う」というムーラン監督のコメントも、また泣けた。

 PSGは、史上3クラブ目となるフランス杯3連覇を達成。これまで通算10回でマルセイユと並んでいたが、11回目の王者に輝き単独の歴代最多優勝クラブにのし上がった。

 この試合の前まで今季通算49ゴールをマークし、イブラの持つ年間50 得点を追い抜くかどうかが期待されていた主砲のカバーニは、数々の惜しいチャンスはあったがやっぱり決めきれなかった。“やっぱり”などと言ってはファンの方には失礼だが、ここ一番、という肝心な場面で得点を決めることの少ない、言ってみればカバーニらしい顛末だった。

 しかし相手GKルテリエ(皮肉にも彼はPSGの育成所出身!)の渾身の守りも素晴らしかった。PSGでプロ入りが叶わなかったときには敗北感を覚えたというが、この試合での彼は、決してPSG軍団に負けていなかった。

 この試合は、11-12シーズンの冬から5年半在籍したマクスウェルが、PSGのユニフォームを着て戦う最後の試合でもあった。

 彼はカタール勢が参入してチーム再建を始めた時の第1期生とも呼べるメンバーで、オランダ、イタリア、スペインで数々のトロフィーを勝ち取った経験は、フロントの期待どおりフランスでも存分に活かされた。

 昨シーズン、彼にインタビューさせてもらう機会があったが、見た目の印象通りのスーパーナイスガイで、どのクラブでも仲間やコーチ、スタッフらに愛されていたのがありありと想像できた。そのインタビューのときには「今季で最後。もうそれは決めている」と話していたが、一転、今季も残ることを決めていた。

 終了のホイッスルが鳴ったあと、こみあげる涙を懸命にこらえていたマクスウェルの姿からは、このクラブに心底愛着を感じていた彼の思いがひしひしと伝わってきた。

●スタートダッシュ失敗が響いたシーズン。その2大要因

 結果的に国内カップ戦2冠、リーグ準優勝という結果に終わった今季のPSGだが、開幕後の2ヶ月でわずか4勝とスタートダッシュでつまずいたのはその後の成績に大きく影響した。

 その要因は大きく2つあったように思う。新監督の起用と、夏のメルカートの失敗だ。

「欧州での成功」を託されて着任したウナイ・エメリは、彼なりの野望をもってパリの地におりたった。当初は彼なりの采配を示そうと、昨季まで完全に機能していたモッタ-ヴェッラッティ-マテュイディの中盤トリオを崩すなど試行錯誤していたが、思うように結果が出ずに、批判の声は高まる一方だった。

 そしてイブラヒモビッチという大黒柱が抜けた後、カバーニが主砲となった今季のメンバーには、キャプテンのチアゴ・シウバを含め、絶対的なリーダーシップが欠けていた。

 古巣セビージャから連れてきたMFクリホヴィアク、昨季ニースで大活躍したベン・アルファ等、今季獲得した新戦力は、エメリが思うようなパフォーマンスは出せず、結果的に『昨季の面子-イブラ』と、単純に考えても戦力はダウンしていた。

 そこから終盤に向けて回復したのには、エメリがひとまず自身の野望は脇におき、安定した元のシステムに戻すなど、着実に勝ち点をとれる作戦にシフトしたこと、そうして勝利を重ねることで選手たちが自信を取り戻し、昨年までの『常勝チーム』の顔が蘇ってきたことが挙げられる。

 やはり昨年夏のユーロの後に入団し、期待されるパフォーマンスが出せずにいた右SBムニエも徐々に本領発揮し、冬のメルカートでユリアン・ドラクスラーを獲得したことで戦力もアップしてきた。

 その結果、今年に入ってからのリーグ戦での黒星は終盤の35節のニース戦のみ。CLラウンド16の対バルセロナ戦、ホームでの1stレグで4-0と快勝した時には、V字回復もここまで来たか!と、期待も最高潮に高まった。が、2ndレグで歴史的な逆転劇を喫して精神的にもドン底に落ちることに。しかしそこから彼らは予想以上の強さで這い上がってきた。

●要所で欠けていた勝負強さ。エメリ監督は「200%残留」

 第35節のニース戦での敗戦は非常に痛かった。あの黒星で、事実上、モナコから首位を奪回するチャンスは消滅してしまった。白星で終わりたかった最終節のカーン戦も、アディショナルタイムに同点に追いつかれてドローに終わった。

 冒頭のフランス杯決勝戦も、相手の渾身のプレーがあったとはいえ、戦力に大差があるアンジェに対し、あわや延長戦、という時間帯まで、得点を決めることはできなかった。

 総合して今季のPSGは、要所要所で勝負強さに欠けていた。その中でカップ戦での2冠(スーパーカップを入れれば3冠)という成績は、十分な結果だったといえるのかもしれない。

 試合の後、ナセル・アル・ケライフィ会長は「エメリ監督は来季も残る。これは200%だ!」と明言した。

 これまでも「残る」とは匂わせていたが、数字をあげてまで断言したことはなかったから、リーグタイトルを逃した後は『フランス杯優勝』が残留の条件だったのではないかと疑いたくなるところだが、ともあれ、PSGは早々と新スポーツダイレクターにアンテロ・エンリケを招聘し、夏のメルカートに動いている。

 長らく仕えたFCポルトでもデコやフッキ、ハメス・ロドリゲス、ルーチョ・ゴンザレス、ファルカオら、数々の移籍を成功させてきたエンリケ氏は世界中にコンタクトをもち、とくに南米のマーケットには強力なパイプを持っていると言われている。

 ヴェッラッティを手放してでもネイマールを獲る、ドルトムントのFWオーバメヤンを狙っている、など様々な噂が飛び交っているが、彼の主導のもと、今夏PSGがどのような補強をおこなうかに乞うご期待だ。

 ディフェンディング・チャンピオンのモナコ、新オーナーのもと本格的な補強に乗り出すマルセイユ、安定してハイスタンダードのチームを送り出す、今季ELベスト4のリヨンなど、PSG以外の注目度も高まっているリーグ1。

 8季ぶりにリーグ1に復帰するストラスブール、クラブ史上初のトップリーグ参戦となるアミアン、そして、今季からスタートしたプレーオフを経て勝ち上がったトロワを加えた新シーズンのカレンダーは、6月15日に発表される。

(文:小川由紀子【フランス】)

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