ここから本文です

ガバナンス効かぬクールジャパン機構がもたらす惨状

5/30(火) 12:20配信

Wedge

 「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構、以下、CJ機構)の出資先は意味が分からない。ガバナンスもまったく効いてない」
 CJ機構は2013年におおむね20年間を期限として設置された官民ファンドだ。日本の生活文化の特色を生かした商品やサービスの海外需要を開拓するとともに、海外における日本の魅力を高めることを目的としている。民間投資の呼び水となるリスクマネーを供給することが役割で、これまで計22件の出資を行っている。

 Wedgeでは2016年12月号の特集「クールジャパンの不都合な真実」の中で、CJ機構の出資先についての疑問を呈したが、多くの関係者から冒頭のような声が寄せられた。

買収から1年での減損

 彼らがまず教えてくれたのが、2016年4月、映像制作大手のイマジカ・ロボットホールディングス(以下、イマジカ)が発表した米国子会社ののれんの減損だ。CJ機構とイマジカが日本の顧客に対する、字幕・吹き替えサービスの提供などを目的として、映画やアニメの字幕制作の世界最大手である米SDIメディアの買収を発表したのは2015年2月。住友商事と共同で買収し、買収額は約190億円に及んだ。買収のための特別目的会社への出資比率は、イマジカが50・1%、CJ機構が49・6%、残りは住友商事が出した。ほぼイマジカとCJ機構、2社での買収だった。

 減損額は当初計上したのれんの一部にあたる43億円、イマジカの2017年3月期の経常利益の2倍以上に及んだ。買収から1年でのれんの減損に至ったことについてイマジカは「市場環境の大きな変化や為替相場の変動等による急な業績悪化が要因」(広報)とする。

 しかし、「リーマンショックが起こったわけでもないのに1年でここまで大きい減損が起こることは通常ありえない。デューデリジェンス(買収先の事前審査査定)が甘かったのだろう」(投資業界関係者)と厳しい声も聞こえる。

 一方、CJ機構はイマジカの減損発表と同日、ホームページに「株式会社イマジカ・ロボットホールディングスからのお知らせ」を掲載した(詳細は図参照)。CJ機構にとって、SDI買収への出資額は、これまでの出資案件のなかで2番目に大きい。また、共同出資者であるイマジカは連結業績予想の修正を受け、役員報酬を減額した。にもかかわらず、「お知らせ」にはCJ機構自身はのれんを減損したのかの記載は一切なかった。

 これについて独立系の民間ファンド、ニューホライズンキャピタル(東京都港区)の安東泰志会長兼社長は「共同出資者が減損を発表している場合、減損するにしてもしないにしても、その判断の理由を投資家に説明するのが当たり前。官民ファンドであれば、それを国民が調べれば分かるような状態にしておく必要がある」と当初の開示姿勢についての不備を指摘する。

 CJ機構に減損の有無を質問すると、「2016年3月期決算については、会計方針に基づき、減損処理を行う必要はないと判断した。本決算については、会計監査人から適正であるとの意見を受けている。よって役員報酬等に影響を及ぼす理由はない」と回答がきた。東証一部上場企業の共同出資者が減損し、役員報酬の減額も行なっているのならば、公的資金が入るCJ機構はもっと「慎重に検討し」なくていいのだろうか。

1/4ページ

最終更新:5/30(火) 12:20
Wedge

記事提供社からのご案内(外部サイト)

月刊Wedge

株式会社ウェッジ

2017年8月号
7月20日発売

定価500円(税込)

■特集  世界を揺るがす中国の地政学
・「アジアの地中海」をめぐる攻防
・「一帯一路」は中国共産党の生命線
・地政学で読む中露の「おいしい」関係