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本田、ミランで再評価の理由。最終戦で託されたキャプテンマーク。失わなかった実直さ

5/30(火) 10:20配信

フットボールチャンネル

 28日、セリエA最終節が行われ、ミランの本田圭佑は今季はじめてフル出場。前節のボローニャ戦で直接フリーキックからゴールを決めた日本代表MFは、ミランでのラストゲームではキャプテンマークを託された。シーズンを通してベンチを温める時間が長かったが、なぜ最終盤にきて出場機会が与えられたのか。その理由を思案してみれば、本田圭佑の本質的な魅力の一端が見えてくる。(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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●1季で8試合221分出場。うち123分はラスト2ゲーム

 最終節のカリアリ戦で、本田圭佑はキャプテンマークをつけてフル出場を果たした。フル出場は今シーズン最後にして、初めてのことだった。

 8試合、221分間出場、しかもそのうち123分は最後の2試合で稼いだという数字を見ると、試合に出られないという苦境がはっきりと見て取れる。一度はスタメンから外れるも、中盤戦で主力の座を奪回した昨季とは違い、そういう機会は訪れぬままベンチで1年のほとんどを過ごした。本田の16/17シーズン、そしてミランでのラストシーズンは、そのようにして幕を閉じた。

 しかしなぜ、今季はそれほどまでに立場が変わったのだろうか? 要因をまとめれば、次の2つに集約される。

 まず一つは、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督が戦術の方向性を変えたということだ。シニシャ・ミハイロビッチ監督下の堅い守備からのカウンターとは違ってラインを高く設定するが、かといってクリスティアン・ブロッキ監督のように4-3-1-2のシステムのもとポゼッションにこだわる、という格好でもない。

 守備はコンパクトにしつつ、攻撃ではサイドバックも一気に上げ前線に5人を送り込むよう切り替えの速さを重視するというものだ。特に左右のウイングは積極的に中へ切り込ませ、敏捷性を求めた。

 ボールを持って仕掛けを行う際の瞬発力に優れているとは言えない本田にとっては、やや居場所がない戦術だったか。前節のボローニャ戦では、前半のチームが機能しなかったため4-4-1-1に修正し、その時にやっとサイドでバランスを取るのが上手い本田を使うことができた。

 それまでモンテッラ監督が本田をあまり起用しなかったのは、彼の置きどころがなかったという判断に基づいたものだったのかもしれない。

●ポジション争いに参入できる余地はなく…

 もう一つは、ライバルの低迷がなかったことだ。昨季チームがトップ下を使うシステムを採用した時には、本田はもちろんのことジャコモ・ボナベントゥーラもうまくこなせなかった。また4-3-3や4-4-2のサイドでアレッシオ・チェルチを使っても、攻撃でもムラがある上に守備も懸命でないことで、ミハイロビッチ監督の信頼を失っていった。

 そういうところで本田がポジション争いに参入できる余地はあったのだが、今シーズン右のウイングには不運にもスソがいた。ジェノアでのレンタル生活で、容赦なくスペースを消してくるイタリアサッカーの守備陣に慣れた若いスペイン人は、持てる攻撃センスを駆使してモンテッラの信頼を得た。

 しかも守備をしても懸命に走り、ボールコントロールも安定している。盤石な彼の立場を脅かすのは極めて難しいことになった。

 そしてもう一つは、厳しいようだがやはり本田自身の力不足もあっただろう。前半戦でのジェノア戦でスソを温存するために先発させたが、ミスを連発したためスソを起用せざるを得なくなった。

 これ以降、本田の出場期間は激減することになる。冬にはジェラール・デウロフェウやルーカス・オカンポスも加入。モンテッラ監督がバックアップとしても本田を評価しなくなったということだ。

●本田圭佑の本質は努力と実直性にこそあるのでないか

 しかし、たとえそういう状態になっても腐らずにいることがチームには必要となるし、そんな人物の存在は指揮官にとっても喜びである。昨季のミハイロビッチが本田を再評価したプロセスがまさにそうだった。

 今季、モンテッラ監督には若くて向上心溢れる若手選手が多く与えられ、チームが規律を保って動くことについて心配はなかった。しかしやはり、長いシーズンコンディションを整えるのは難しくなる。

 もう少し再評価が早くなっても良かった気もするが、結局モンテッラはそんなチーム状況下で本田を見直し、ボローニャ戦でチャンスを与え結果にも繋げた。

「自分はチャンスをあまり与えてやれなかったが、プロフェッショナルな姿勢へのご褒美をあげたかった」と、カリアリ戦でキャプテンマークを与えたことについて記者会見で説明していた。

 派手なルックスと言動が目立つが、本田圭佑の本質はそういった努力と実直性にこそあるのでないだろうか。

「爪痕を残すために必要なこと」と彼は以前守備に走ることについてコメントしたことがある。本人が生き残るための活路としたのも、背中の10番に見合う成績が出せなかったミランで一番評価された部分も、結局はそんなプレーだったのだ。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

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