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バルサ、国王杯3連覇の立役者。先進的なフィジカル理論でチーム支えた青年コーチ

5/30(火) 11:21配信

フットボールチャンネル

 5月27日、コパ・デル・レイ(国王杯)の決勝戦が行われ、バルセロナがアラベスを3-1で下した。ルイス・エンリケ監督が指揮を執る最後の試合で、バルサは同大会3連覇を達成。ルイス・エンリケはバルサの監督として3シーズンで9つものタイトルを獲得したことになるが、この快挙の影には、青年コーチの尽力があった。(文:坪井健太郎【バルセロナ】)

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●コパ3連覇の立役者、ラファエル・ポル

 2017年5月27日に行われたスペイン国王杯(コパ・デル・レイ)決勝の組み合わせは、ルイス・エンリケ監督の退任が決まっているFCバルセロナと、1部昇格組ながら破竹の勢いでコパを勝ち上がってきたデポルティーボ・アラベスの対戦となった。

 結果としては大方の予想通りFCバルセロナが3-1で勝利を飾り、ルイス・エンリケ監督のラストゲームを有終の美で飾った。このタイトルを受けて、ルイス・エンリケ監督のFCバルセロナはコパ・デル・レイ3連覇を成し遂げ、率いた3シーズンで9つものタイトルを獲得したことになる。

 ルイス・エンリケ体制のバルサで何よりも注目されたのはMSNと呼ばれるメッシ、スアレス、ネイマールの3トップの存在だろう。世界トップレベルの選手たちが常に在籍しているバルセロナだが、この3トップは歴代の中でも群を抜くメディアティコ(注目される存在)なクラック(スター選手)であり、マネジメントが難しい。FIFAワールドカップ、南米選手権など毎シーズン代表のコンペティションがオフシーズンに入ることもありコンディション管理は容易ではない。

 そのような、非常に難しい条件下でチームのフィジカル管理を担当したプレパラドール・フィジコ(フィジカルトレーナー)が“チームルイス・エンリケ”には在籍している。その名はラファエル・ポル。マジョルカ島出身、若干30歳の青年だ。

 ポルは2010年にINEF(スペインの体育大学)のサッカー専門課程を卒業すると、2011年にルイス・エンリケがセリアAのASローマの監督就任する際に引き抜かれ、その後ローマ、セルタ、バルセロナという3つのクラブでルイス・エンリケと共にプロのキャリアを歩み、同監督から絶大な信頼を得ている。

●試合のようにトレーニングをする。そうでなければサッカーではない

 バルセロナのフィジカルトレーナーに就任してからは、メッシのコンディションをトップギアの状態へと戻したことはスペインでも有名な話である。バルセロナのチームのパフォーマンスは良い意味でも悪い意味でもメッシに依存している部分が大きく、メッシのパフォーマンス次第でチームの成績は上下すると言っても過言ではない。

 そのような選手のコンディションを見事にトップレベルに再調整したという意味では、ポルの存在は大きいと言える。

 事実、元バルセロナ監督で現マンチェスター・シティ監督のジョゼップ・グアルディオラも「バルサ成功の鍵はポルにある」と述べている。

 ラファエル・ポルのトレーニングメソッドの哲学には「トレーニングは試合のように行うべきだ。そうでなければ、それは“ただのトレーニング”となってしまう」というものがある。5月30日に発売されるラファエル・ポルの著書『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』(筆者が翻訳を担当)にもその要素が満載だ。

 フィジカルトレーニングの理論といっても、コンディショニングの話のみに終わることなく、「集団スポーツとしてのサッカーのプレーモデル」や「複雑性」にも言及している。

 また、『サッカーにおいてフィジカルコンディショニングは存在しない。存在するのはチームアクションを条件付けるファクターの相互作用である(パコ・セイルーロ)』、『私にとってフィジカルコンディションが良い選手というのは存在しない。プレーモデルに沿ったプレーができる状態かどうか、だ。私にとって持久力とはプレーのアイデアに順応し、個人アクションとチームアクションを実行できる状態にあるかどうか、である(ジョゼ・モウリーニョ)』(共に『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』から引用)という考え方に賛同し、過去のサッカー界のフィジカル概念(フィジカルとサッカーを個別に取り扱う考え方)に対して真っ向から疑問を投げかける姿勢をポルは著書で示している。

●1-3-4-3というオプション生んだ相互作用

 ルイス・エンリケを支えたフィジカルトレーナーは、サッカーそのものを扱う新たな視点での選手の状態管理理論を駆使してFCバルセロナを進化させ、3年で9タイトルという輝かしい成功をもたらした。

 チームを有機体の集合と捉え、怪我や過密日程による選手のコンディションの乱れ、移籍やチームの若返りによるポジションのコンバートなどのネガティブな条件も複雑性の概念で見れば「チームが成長するための条件」とポジティブに捉えたのだ。

 事実、今季のバルセロナはダニエウ・アウベスのユベントスへの移籍によって本職はインテリオール(インサイドハーフ)のセルジ・ロベルトが右サイドバックを務め、個人として大きな成長をみせた。

 チームとしてもインテリオールの選手がサイドバックでプレーすることで変則システムとしての1-3-4-3というプラスアルファの戦術オプションを手に入れ、相手チームにとっては手を焼く要素の一つとなった。

 これもポルの哲学にある「相互作用から生まれる、以前には存在し得なかった新しい要素」として見ることが可能だ。この3シーズンのバルセロナの進化と成功は、従来のフィジカル理論の概念を根底から否定するラファエル・ポルの哲学が欠かせないものだったことは明白だ。

(文:坪井健太郎)

フットボールチャンネル編集部

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