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ホークとケンスキーの出逢いwithマサ斎藤――フミ斎藤のプロレス読本#012【Midnight Soul編7】

5/30(火) 9:00配信

週刊SPA!

 1992年

 ロード・ウォリアーズが初めて日本に来たころ、まだ若手だった佐々木健介はジャパン・プロレスのジャージの上下を着てリングサイドをうろちょろしていた。健介からみればホークは雲の上の人だった。何年かあとに自分がその人とタッグチームを結成することになろうとは夢にも思わなかっただろう。

「ミネアポリスでケンスキーと会ったときね、ああ、これがオレの新しいパートナーになる男なんだなと思ってね、頭のてっぺんから足のさきまでよおく観察してやった。体つきをみたら、こいつはタフなやつなんだろうなって、すぐにわかったよ」

 ホークと健介は、新しいタッグチームとして新日本プロレスのリングでデビュー戦をおこなうまえに、アメリカで大がかりなデモンストレーションをやった。

 ミネアポリスのスポーツ・バー“ローパーズ・クラブ”で毎月第3月曜の夜に開催される“酒場プロレス”の舞台を借りて、初めてタッグを組んだふたりが地元の無名レスラーたちを相手にストリートファイトのような試合をしてみせた。

 テレビ朝日がこれをビデオに収録し、翌週の『ワールドプロレスリング』でその一部始終をオンエアした。

 “酒場プロレス”のアンダーグラウンドな雰囲気がロード・ウォリアーズのイメージにぴったりだったし、ホークのようなビッグネームがいきなり来てくれたり、日本のテレビ局のカメラが入ったりで“ローパーズ・クラブ”のほうでも大喜びだった。

 ホークと健介にコンビを組ませるアイディアから“酒場プロレス”での衝撃のデビュー、それを映像に収めるためのロケーションの段どりまで、すべての仕掛けはマサ斎藤のプロデュースによるものだった。

「オレからマサに連絡をとったんだ。もうアメリカでは試合はやらないから、ニュージャパン・プロレスリングはオレを必要としてますか、ってね。そうしたら、マサが『いい考えがあるからまかせとけ』って」

 ぼくは黙ってホークのはなしに耳を傾けた。

「ケンスキーとはこれからずっといっしょにやっていくよ。あんまりことばは通じねえけど、試合になればコミュニケーションは問題ない。ナイス・ガイだ。オレは彼がビッグになっていくところを見届けたいんだよ」

「アニマルはこれからどうするつもりなの?」

 元パートナーのことをもういちどだけ聞いてみることにした。

「ネバー・セイ・ネバーNever say never。でも、ロード・ウォリアーズをやることはないだろうな。オレはケンスキーを正式なパートナーだと思っている。アニマルが新しい相棒を見つけたら、そうだなあ、いつかは敵味方に分かれて闘うことになるんじゃないかな。オレはそれがいちばんいいと思う」

 ホークはビールをいっきに飲み干すと、空になった缶を右手でつぶした。

 パワー・ウォリアーになった健介は、ホークのように顔にペインティングをして、ホークのようなスパイク・プロテクターのコスチュームに身を包み、ホークのような黒のロングタイツと黒のブーツでリングに上がっている。ビジュアル的には日本製のロード・ウォリアーズになった。

 基本的なキャラクター設定と試合のスタイルはこれまでとほとんど変わらないが、ホークにとっては、日本をホームリングにしてプロレスをつづけていくことが自分のなかの新しい出発点になっている。どうしたらほんとうにハッピーになれるかを考えに考えたらこうなった。

「たばこ、1本もらえねえか」

 ホークはふだんはたばこなんか吸わないけれど、ビールを飲んで饒舌になってくるときまって一服したがる。ホークが手にとったたばこにぼくが火をつけてあげると、ホークは最初のひと口を深く吸い込み、それから天井に向かってゆっくりと煙をはき出した。

「じゃあ、あとでまた来る」

 そういうと、ホークはさっきいたところに戻ってビデオの山をひっかきまわしはじめた。そして、気に入ったのを一本みつけるとそれをビデオデッキのなかに乱暴に放り込み、それから後方の座席へと消えていった。

 ホークが選んだ映画は『ナショナル・ランプーン・クリスマス・バケーション』だった。(つづく)

※文中敬称略

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

日刊SPA!

最終更新:5/30(火) 9:00
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