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辣腕バイヤーのメンズカジュアルブランド発掘&育成術

5/31(水) 20:00配信

WWD JAPAN.com

 ファッションがビジネスである以上、数字(売り上げ)は重要な要素である。それが振るわなければ、どれだけ担当者の思い入れが強くても、計画がとん挫することや変更を余儀なくされることは往々にしてある。しかしファッションの消費が落ち込み、採算性が強く求められる時代にあっても、小規模でなかなか芽が出ないブランドのことを見限ることなく、むしろ勇気づけながら成長させる人がいる。例えば、輸入代理店メイデン・カンパニー(MAIDEN COMPANY)で買い付けを担当する甫坂浩幸クリエイティブディレクター(以下、甫坂CD)がその人だ。

 甫坂CDを語るうえで欠かすことができないのが、「インディビジュアライズド シャツ(INDIVIDUALIZED SHIRTS)」である。かつて「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」のカスタムオーダーシャツの縫製を一手に担っていたことで知られる、米国シャツメーカーの代表格。

 「『インディビジュアライズド シャツ』との出合いは、前職フリークスストア時代に遡る。先輩バイヤーがアメリカ出張の際、個人買いしてきたものを見て『米国モノなのに、ヨーロッパの雰囲気のあるシャツだな』と感じたのを覚えている」と甫坂CD。その理由は後年、メードインUSAにこだわりつつも、欧州メーカーの生地を贅沢に使用していたためと解明された。

 1999年、メイデン・カンパニー入りした甫坂CDは、加藤東太・社長に「インディビジュアライズド シャツ」の取り扱いを直訴する。しかし米国製シャツが9800円で販売されていた時代に、1万円代中盤から後半の「インディビジュアライズド シャツ」では勝ち目がない、と却下された。

 それでも甫坂CDは、ラスベガスで行われる世界最大のファッションの祭典マジックに「インディビジュアライズド シャツ」が出展することを知り、加藤社長の手を引きアメリカに飛んだ。そこで100年以上に渡り、「ブルックス ブラザーズ」に米国製生地を納入していたファブリックメーカー、ダンリバー社のオックスフォード素材が使えること、さらには同じく「ブルックス ブラザーズ」が使用していたプルオーバーのパターンが使えることなどを知り、これをもってアイビー好きでもある加藤社長の説得に成功。2000年、晴れて正規代理店契約を結ぶこととなった。

 ファーストシーズンからビームス、ベイクルーズ、ワールドなどのオーダーが入り、08年には「ユナイテッドアローズ ブルーレーベルストア」原宿店で、カスタムオーダーを受注するトランクショーを初開催。

 現在の価格帯は2万5000~2万6000円が主。メンズのシャツ専業のファクトリーブランドで、これを1シーズンに1万枚、卸ベースで1億円販売したというのは、「なかなかに健闘したのではないかと思う」と甫坂CD。「これからも古き良きアメリカを伝え続けていきたい」と続けた。

最終更新:6/1(木) 11:20
WWD JAPAN.com