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【私に影響を与えた4つの絵画】ジーン・クレールのカルチャーメモ

5/31(水) 12:10配信

GQ JAPAN

その進化の仕方からして、芸術の形式の中で最も偉大なのは絵画だと言えるのではないだろうか。たとえば文学は、多くの場合、現代でも何世紀も前と同じ方法で書いているという点で、ある程度までは古典的なレベルに留まっている。しかし、画家は違う。モダニズムやコンセプチュアリズムを意識するという点で、絵画は芸術の最先端だといえる。

私の愛したギタリストたち

私は常に芸術を自分の感情をまじえてとらえてきた。そうしないと意味がほとんどなくなってしまうからだ。芸術作品とのふれあいは型にはまったものであってはならない。芸術家が作り出そうと望んだ真の対話が立ち現れるのを妨げることになってしまうからだ。芸術作品とは、この世界における芸術家自身の居場所についての省察、視点、そして物語なのだ。

今回は私の好きな4点の絵画を選んだ。これらの共通点は私自身との関係性、つまり私の人生や仕事に強い感情的な影響をもたらした。

まずは、ほとんど知られていない傑作、ヤコポ・ダ・ポントルモの「十字架降下」。この絵を知ったのは、美術評論家のアンドリュー・グレアム=ディクソンを通じてのことだ。絵があるのはフィレンツェにあるサンタ・フェリチタ教会のカッポーニ家礼拝堂。初めてこの絵と対面したとき、私は文字どおり膝からくずおれてしまった。それほどの荘厳さだったのだ。色や構図など、多くの点でこの作品はマニエリスムの傑作だ。しかし何よりも素晴らしいのは、この絵が内包する感情の量だ。フィレンツェを訪れるなら、必ずこの絵を見に行くようおすすめする。

もう一つ、あまり知られていない絵を紹介するが、これにも魅力的な物語がある。トニー・クラークという1人の兵士によって、第二次世界大戦の破壊から守られた絵だ(それを記念して町の通りに彼の名がつけられた)。クラーク自身は当の絵を見たことがなかったが、絵の美しさを語る噂は広まっており、彼は絵を救わねばならないことを分かっていた。その絵とはピエロ・デラ・フランチェスカの「キリストの復活」。イギリスの作家オルダス・ハクスリーが「これまでに描かれた中で最高の絵画」と評したこの作品には、キリストの復活が描かれている。また、4人の眠りこけた兵士たちが神と人間との出会いを表している。私にとってこの絵は複雑な作品ではなく、むしろ信心し帰依する心の純粋な発露が厳粛に表現されていると感じた。一つの記憶として、この絵は時を超越して存在するのだ。

フィンセント・ファン・ゴッホの「アルルの寝室」は、彼の作品の中で一番知られているものではないかもしれないが(「星月夜」「カラスのいる麦畑」などが有名だ)、私としては一番思い入れの強い絵。個人的に迫ってくるものがある。禁欲的な題材、部屋の簡素さが、ロンドンのタッチブルック・ストリート48番地のワンルームアパートに住んで、自分とは何者なのかを模索していたことを思いださせるのだ。しかし私にとっては誠心誠意の絵、つまりゴッホという画家、そして絶えずつきまとう孤独から逃れるための彼の闘いを表現している絵のように感じられる。

4枚目の絵は、アメリカの抽象表現主義の画家、マーク・ロスコによるもの。私にとってロスコは最後の偉大なアメリカの芸術家だ。絵は「Four Darks in Red」。これは真の意味で魂の絵画、神性を探求し、魂を探求した作品だろう。ニーチェに傾倒したロスコは、私たちの多くにとって芸術の重要性を伝えてくれた存在だ。彼の絵は他の芸術作品にはない方法で話しかけてくる。私がそれを分析することはない。分析しようとすることほど気を散らす、馬鹿げたことはないからだ。

Gene Krell

最終更新:5/31(水) 12:10
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