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日本の科学研究―地盤沈下は止められるのか

5/31(水) 16:45配信

nippon.com

「日本の科学研究は過去10年で失速」と報じた英科学誌「ネイチャー」の3月の特集は、若手研究者たちの厳しい現状を浮き彫りにした。先端科学研究に携わる筆者が、大学の研究体制の構造的問題を指摘する。

日本の科学研究―地盤沈下は止められるのか

減少をたどる日本発科学論文

日本の科学にとって憂うべきレポートが、最近、英科学誌「ネイチャー」(3月23日号) に掲載された。過去10年間に日本の科学は失速し、他国に遅れをとっている、という内容である。わが国のニュースではそろって「衝撃的」と報道されていたが、当事者、特に大学で研究に従事している人たちにとっては、日頃からの懸念が裏付けされたにすぎない。

「Nature Index 2017 Japan」と題されたそのレポートの骨子は、複数のデータベースに基づいて日本からの論文発表の経年変化を他国と比較したものだ。また、なぜそのような状況に至ってしまったのかについて考察している。その内容を簡単に紹介しながら、国立大学法人において生命科学を研究する一人として、現場における経験と実感からの解説を加えてみたい。

主として用いられているデータベースは、「Web of Science(WOS)」「Scopus」、および「Nature Index」だ。WOS、Scopusは世界の数万におよぶ科学雑誌に掲載された論文、Nature Indexが自然科学各分野でトップジャーナルとして選定された68誌に掲載された論文についての動向を示す。

まず前者を見ると、2005年~15年までの10年間で、日本からの論文はほぼすべての分野において横ばいから減少の傾向だということが分かる。横ばいならそれほど悪くないのではと思うかもしれないが、それは違う。この期間に世界全体では論文数が80%増加したのに対して、日本からの論文は14%にとどまっている。一方のNature Indexでは、12年から16年までの4年間に日本の論文数が8.3%低下しているのに対し、英国は17.3%、中国に至っては50%近い増加を見せている。世界的に論文数が増加する中で、日本の相対的な地位は着実に低下している。

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最終更新:5/31(水) 16:45
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