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不妊治療で超高齢出産続出、誰がための幸福か

5/31(水) 12:20配信

Wedge

 スペインに住む64歳の女性が今年3月15日、米国での体外受精を経て、帰国後に双子を分娩し、大々的なニュースとなった。生殖補助医療が発達した現在、超高齢出産が可能になり、産むことの意義が問われ始めている。

 女性は帝王切開で男女を出産し、母子ともに健康な状態だ。しかし、6年前に不妊治療で生まれた長女の養育が放置され、施設保護されていることから、今回の出産には批判も相次いでいる。

 生殖補助医療の技術が進むスペインでは、昨年、67歳と62歳の女性2人が超高齢出産を実現。インドでは、06年、ともに74歳の女性2人が出産。07年には、ロシア人女性が79歳で子を授かり、世界最年長記録となった。

 一般的に女性は、42歳を超えると、「自らの卵子で」自然妊娠できる確率が激減し、人工授精や体外受精といった不妊治療に望みを託すことが多い。

 スペインの公立病院では、不妊治療の年齢を40歳、プライベート施設では、50歳までに設定してはいるものの、その年齢を遥かに超える例外も少なくない。第三者による「提供卵子」次第では、高齢妊娠も十分可能になったのだ。

 だが、こうした高齢出産に対し、倫理的な問題に警戒を示す専門家もいる。スペイン生殖医学会のアルフォンソ・デラフエンテ倫理担当は、次のように語る。

 「子供を持つということは、教育をしたり、かわいがったり、愛したりと、受精うんぬんよりも遥かに多くのことを意味するのです」

 同じヨーロッパでも、不妊治療への取り組みや方針は大きく異なる。フランスやイタリアなど、大半の国々では有償による卵子提供は違法だが、スペインでは、1回の卵子提供につき、約900ユーロ(約10万8千円)が支給される。

 しかし、有償による提供は、金稼ぎに走る女性や肉体への悪影響、倫理や宗教の問題が懸念されている。

 一方で、無償提供の弱点もある。無報酬で卵子を提供しようと試みる女性の数が減るため、国内に十分な卵子が集まらず、体外受精を求める出産適齢期を超えた女性たちは、たやすく治療が行えなくなる。従って、欧州諸国の女性たちは、スペインや米国に足を運ぶという現象が起きるのだ。

 米国には、五輪選手や有名人らによって提供された精子や卵子を高額で買い取り、子をデザインする「デザイナーベイビー」と呼ばれる治療さえある。

 米コーネル大学の医局に勤務するグレン・シャットマン准教授は、この技術について、「子供ができない人が提供者を選ぶのは、パートナーを選ぶことと同じくらい大切なことだと思う」と語る。

 いまや出産は、超高齢出産のみならず、理想の子をデザインすることさえできる。

 不妊治療とは、夫婦やカップルの幸福を満たせばよいのか、それとも、生まれてくる子供の幸福を考えるべきなのか。スウェーデンのカロリンスカ研究所のケニー・ロドリゲス産婦人科医は、こう指摘する。

 「不妊治療は、夫婦ではなく、子供にとってベストであるべきだという考えが原点になっているのです。これから生まれる子供が18歳になるまで、親としての役割を果たせるかどうか。その観点に従えば、(不妊治療を行う)母親だけでなく、父親の年齢も重要な要件になるのです」

 日本でも、6組に1組の夫婦が、自然妊娠できないという。不妊治療で高齢出産は可能になったが、誰のための幸福かを考え直すことも重要なのかもしれない。

宮下洋一 (ジャーナリスト)

最終更新:6/1(木) 10:42
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