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実在しないゲーム「Arc Symphony」:それはSNSの投稿者全員が仕掛人のPR企画だった

5/31(水) 18:30配信

WIRED.jp

懐かしきPlayStationロゴにビジュアル、デザイン…。SNS上でゲーマーたちをざわつかせた90年代の「名作ゲーム」を彷彿させるパッケージは、実は巧妙に仕組まれたプロモーション企画だった。

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先日、「Arc Symphony」という謎のゲームソフトのパッケージ画像がソーシャルメディアを中心に拡散され、1990年代後半のノスタルジックなJRPGとして一部で話題になった。

画像をシェアしたユーザーの多くが同作へ馳せる懐古の念を投稿する一方で、同年代の名作を懐かしむゲーマーのなかに「Arc Symphony」というタイトルを覚えている者など一人もいなかった。それもそのはずである。そんなゲームは最初から存在しないのだから。

「90年台の名作JRPG」…なのか?

90年代後半のゲーム業界といえば、日本ではPlayStation向けのロールプレイングゲームが隆盛を極めた時代。ソニーの「ビヨンド ザ ビヨンド ~遥かなるカナーンへ~」に次いで、サードパーティ製では初となる王道ファンタジーRPG「幻想水滸伝」が世に放たれたのもこのころ。その後、「ファイナルファンタジー7」や「クロノ・クロス」といった名だたるシリーズの続編が発売され、3Dグラフィックの普及とともに次々と群雄が割拠した。

しかし、そのなかに「Arc Symphony」というタイトルはない。PlayStationのロゴが入ったディスクケース。「ファイナルファンタジー」シリーズに登場しそうな飛空艇のイラスト。Aether Interactiveという聞いたこともない企業名。しかし、あたかもファンタジーRPGを連想させる謎のゲームに、「Arc Symphony」のパッケージ画像をシェアしたユーザーの多くは「近年のゲーム開発に与えた影響は計り知れない」と拍手喝采を送っていたのだ。

ゲーマーの誰もが目を疑う奇妙な光景は、ゲーム関連のフォーラムサイトでも話題になり、「Arc Symphony」の正体をめぐって議論が過熱した。ちなみに海外ユーザーの間ではほとんど触れられることはなかったが、パッケージに記された「フライ射撃無料・タクティカル・フライトの行動」という日本語の表記が極めて不自然で意味不明なことは言うまでもない。よく見れば明らかにゲームソフトの非実在性を物語っている。

実は「Arc Symphony」の正体は、カナダのインディーディヴェロッパー、ソフィア・パークとペネロペ・エヴァンズが開発したテキスト形式のアドヴェンチャーゲーム。謎のパッケージは同作のプロモーション用につくられたもので、先日トロントで開催されたコミック・アートフェスティヴァルにて限定販売されたのだという。ソーシャルメディアに写真を投稿したユーザーはすべて、トロントを拠点に活動するインディーゲームコミュニティのメンバーだったというわけだ。

特筆すべきは、このプロモーション企画にリアリティをもたせるために、「Arc Symphony」を“不朽の名作”としてアーカイヴすることを目的にしたファンサイトまでインターネット上に用意していた点だ。しかも、トップページに2002年制作と記されているように、ウェブサイトのデザインまで当時の雰囲気を醸し出すようにつくり込まれた徹底ぶり。「Arc Symphony」は現在、インディーゲーム共有サイトitch.ioにて、最低価格2.99ドルで販売されている。

最終更新:5/31(水) 18:30
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