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久保裕也が描く劇的な成長曲線。ハリルJの柱へ、今求められる万能ゴールゲッターへの進化

5/31(水) 11:38配信

フットボールチャンネル

 日本代表の欧州組は、チームの集合に先がけて千葉県内で合宿を行っている。今年1月のベルギー移籍以降、驚異的なスピードで進化を続ける久保裕也には何が必要なのか。ヴァイッド・ハリルホジッチに魅入られた万能ゴールゲッターが、日本の柱になるため歩むべき道とは。(取材・文:元川悦子)

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●日本代表欧州組、ハードな練習で体を追い込む

 6月の日本代表2連戦(7日=シリア戦、13日=イラク戦)に向け、28日から千葉県内で始動している日本代表。3日目の30日は前日から合流した大迫勇也(ケルン)も全体メニューに加わり、午前中は欧州組10人でインターバル走などの走力アップ練習を消化した。

 午後は右足首痛の乾貴士(エイバル)を除く9人でボールを使ったサーキットや3対3などに注力した。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督体制発足後、毎年恒例の欧州組合宿ではあるが、1日3~4時間に及ぶハードな練習は、シーズン終了直後の面々にとってかなりの負担に違いない。

 今季は開幕前からリオデジャネイロ五輪を見据えてオフなしで調整を続け、スイス・ヤングボーイズでいち早くシーズン開幕を迎え、冬の移籍期間にベルギーのKAAヘントへ移籍した久保裕也に、一際大きな負荷がかかっているはず。それでも本人は「まあ、きついですけど、僕以外の選手もみんなこなしているので、ポジティブに捉えています」と涼しい顔。その淡々とした物言いと立ち振る舞いが大物の風格を漂わせていた。

 同日午後の3対3では、サプライズ招集された加藤恒平(ベロエ・スタラ・ザゴラ)、バックアップメンバーの宇佐美貴史(アウグスブルク)と同組になった。「加藤選手は守備面がすごくいい選手だと思いました」と久保は刺激を受けつつ、攻守両面でアグレッシブに動いた。最後のミニゴールを使ったゲームでも次々と得点を奪い、欧州の舞台で磨き上げた鋭いゴール感覚を披露。ヘントでの17試合11得点も含めて、シーズン通してゴールを量産した自信が色濃くうかがえた。

「ベルギーで半シーズンやりましたけど、スイスよりはプレッシャーのある中でやって、それに慣れてきたのはよかったかなと思います。結構、対人が多いというか、オープンな試合もありますし、僕にとってはすごいプラスだった。チームにうまくフィットできたから結果がついてきたんだと思います」と久保は2017年の半年間を述懐する。

●久保が貫いたストイックな姿勢。鍵は「自分のプレー」

 彼の新天地での適応能力の高さは特筆に値する。ヘントを率いるハイン・ファンハーゼブルック監督はベルギーきっての戦術家として知られ、プレーオフでも3-4-2-1と4-2-3-1を巧みに使い分けながら戦っていた。起用する選手を試合ごとに変え、それぞれの役割やポジションも細かく修正していくため、久保のような新戦力がチームに溶けこむのは非常に難しい。

 本人が指摘している通り、スイスとベルギーは同じ欧州といっても全く異なるリーグ。その違いに慣れるのも容易なことではない。さまざまなハードルを一足飛びに超えられたのは、久保がサッカーへのストイックさと真摯な姿勢を貫いき続けたから。そこは今一度、強調しておかなければならない点だ。

「チームのスタイルもそうだし、言葉の部分もそんなに苦はなかった。いろんな部分でヘントに適応できたのかなと思います」と本人も神妙な面持ちで話したが、その適応力と柔軟性は日本代表で戦ううえでも武器になる。ハリル体制では昨年11月のオマーン戦(カシマ)から4試合しか招集されていないにもかかわらず、すでに2ゴール3アシストという驚異的な結果を残している。ハリルホジッチ監督が6月の2連戦でも引き続き大きな期待を寄せるのは、ある意味当然のことと言っていい。

 とはいえ、同じ右サイドのポジションを争う本田圭佑(ミラン)もシーズン終盤に復調の兆しを見せている。3月の時点では試合勘やクラブでの活躍度で久保に大きなアドバンテージがあったものの、6月シリーズは準備期間が普段より長くとれるため、本田にも巻き返しのチャンスが少なくない。久保も原点に戻って熾烈な競争を強いられるのだ。

「本田さんとの違い? 僕は僕で、チャンスをもらえた時に自分のプレーをするだけ。それがチームの結果として出れば一番いいので、特に意識することなく自分のプレーをやりたい。本田さんと僕だけじゃなくて、全ての選手が個人個人違った特徴を持っているので、とにかく自分のプレーを出すのが一番だと思います」

 彼は「自分のプレー」という言葉を何度も繰り返した。それはつまり「ゴールに直結するプレー」に他ならない。中央に動いたり、前後に動いたりしながらゲームメイクにも幅広く関わる本田はよりMFに近い選手。矢のようにゴール前へ飛び出していく生粋の点取り屋である久保とは明らかに特徴が違う。

●縦横無尽に走れるアタッカーを目指して

「ハリルさんの求めてるサイドはホントのアタッカーじゃないですか。(久保)裕也とか(原口)元気(ヘルタ・ベルリン)とかガッツリ前に行くタイプだと思う」と今回落選の憂き目に遭った清武弘嗣(C大阪)も語っていたが、久保はまさにハリルホジッチ監督好みの選手。

 だからこそ、ボスニア人指揮官は攻守にわたってより多くのアップダウンを求めている。左サイドの原口がその仕事を献身的にこなして最終予選前半戦のエースに躍り出たように、右の久保もそれを上回るほどのレベルを目指すべきだろう。

 その覚悟は久保本人の中にもあるようだ。

「(ハリルホジッチ)監督からは『もっと上下運動ができるようなトレーニングをしたり、この合宿でやるような練習をやっていけ』と言われました。代表はチームよりも上下運動がすごく求められる。ゴールに入っていく回数を増やすことは監督にすごく言われますし、こっちの方が守備も要求されます。ベルギーでは当たりとかのフィジカル強化をやってますけど、これからはいろんなことを考えて取り組んでいきたい」と縦横無尽に走れるアタッカーを目指して、進化を続けていくつもりだ。

 さしあたって、6月の日本代表2連戦でその大きな一歩を踏み出すことができ、日本もイラクに勝ってロシア行きに王手をかけられれば最高だ。久保はそのけん引役にならなければいけない。UAE戦で見せたような電光石火のゴール、そして味方の攻撃をお膳立てするパスやドリブルをテヘランの地でも発揮すれば、彼は真のエースにより一層近づいていく。

 今夏の移籍市場でイングランド、ドイツなどの主要リーグへのステップアップを思い描くのであれば、代表で明確な結果を残すことは必要不可欠。この1年で劇的な成長曲線を描いている久保ならば、全てハードルを超えられそうな雰囲気が漂う。それを現実にすべく、今回の合宿を日々、大事にして、走力強化とフィジカルコンディション向上に努めてほしいものだ。

(取材・文:元川悦子)

フットボールチャンネル編集部

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