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【U20】日本、16強敗退も導き出した「正解」。全ての日本代表で採用すべき「崩しの型」【西部の目】

5/31(水) 11:50配信

フットボールチャンネル

 30日、FIFA U-20W杯決勝トーナメント1回戦の試合が行われ、日本はベネズエラを相手に延長戦の末0-1で敗れた。ベスト16で大会から去ることになったが、今回の日本チームは世界大会に臨む際に日本代表がどう戦うべきかの指針を示していたように思える。その意味で、今大会は意義深いものとなったのではないだろうか。(文:西部謙司)

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●日本が崩せるようになった3要因

 ベスト16で敗退したものの意義のある大会だったのではないか。

 A代表から育成年代まで、日本代表の問題点は引いている相手をどう崩すかだった。ボールポゼッションは高いが引かれると崩せず、CBとGKはほぼ全世代のウイークポイントなのでカウンターに弱い。負けパターンだけがやけにはっきりしていたのだが、今回のU-20は崩しができるので戦い方にようやく整合性がとれてきた。

 今大会で日本が崩せるようになった要因をまとめると、[1]ボールコントロール、[2]距離感、[3]相手を見る。この3点が良かった。

 具体例をいくつかあげたい。まず、前半に市丸のふわりとした浮き球のパスから岩崎がヘディングシュートを放ったシーン。中央右寄りでボールを持った市丸は右サイドへ展開するような体の向きから、中央の岩崎へパスを出しているのだが、岩崎をマークしていたDFがボールサイドへ一歩動くのを予測して、その背後へボールを蹴っている。このときペナルティーエリア内にはベネズエラのDFが3人、日本は岩崎しかいないが決定機を作れている。

 市丸はDFの動きをよく見ていて、スパッとFWへのクサビを何本か打ち込んでいた。相手の動きを見る、あるいは予測して、相手の守れない場所を意識してプレーできる選手が何人かいたのは今回のチームの強みだった。

●3人で1人を攻略した距離感。狭いエリアでの崩し

 延長12分、堂安→久保→岩崎→堂安とつないで、堂安がシュートした場面では非常に狭いスペースを突破していた。この距離感でプレーできたのも進歩である。

 中央左寄りでボールを持った堂安の5メートルほど前方に久保が立ち、その足下へ堂安からのパスが入る。久保はベネズエラのMFとDFの間のつかまりにくい場所に立ち、堂安からのパスを引き出していた。このポジショニングが良かった。そして、堂安からのパスをワンタッチでターン。ここからはわずか1、2メートルの距離でのコンビネーションである。

 岩崎をマークしていたDFが一歩前に出て久保に寄せるが、久保はその動きを見てDFの重心の乗っている側の足(左足)ぎりぎりを通過させるパスを岩崎へ通す。岩崎はワンタッチで久保へ短いリターン、そこへ久保と堂安が動いていて、堂安がボールを受けてすかさずシュートした。

 ベネズエラのCBの1人は久保と岩崎の2人を相手にしなければならず、2人のパス交換で無力化されている。もう1人のCBは後ろへ下がってしまっていて何もできていない。さらに、最初にパスを出した堂安が寄ってきているので、局面的にはベネズエラのCB1人に日本は3人になっていた。俯瞰でみればベネズエラの4バックは揃っているが、狭い局面でみれば日本の3人でベネズエラの1人をやっつけた形である。

 パスの距離は5メートル、1メートル、1メートルと極めて短いが、この距離だからこそベネズエラのDFに修正の時間を全く与えないままシュートへ持ち込めているわけだ。

 ボールタッチの精度、相手の体重移動を見る眼、そして距離感。日本は広いスペースで1対1を作って個の力で突破するよりも、ごく近い距離でコンビネーションを使ったほうが有利。そのためのアイデア、ボールコントロール、センスを備えた選手が今回のチームには何人かいた。それが崩しを成功させていた要因である。

 U-20の崩し方は、すべてのカテゴリーの日本代表で採り入れるべきものだ。世界と戦ううえで、最後のフィニッシュへ持ち込むところでの正解を出したのは、今回のチームの大きな功績といえる。

●この後の3年間がカギ。ここから開く世界との差

 ベネズエラは組織的によくトレーニングされたチームで、日本は何度か決定機を作れていたが全体に圧倒できていたわけではない。均衡したゲームをベネズエラが制していて、フェアな結果だろう。1対1のデュエルのところではベネズエラに優位性があり、唯一の失点も1対1の空中戦に負けたことで喫している。

 CKが2本続いている。1本目は4番(フェラレーシ)を狙ったもの。2本目は4番をおとりにして8番(エレーラ)に合わせた。4番に少し釣られたために8番への対応が遅れてしまったのだが、競り合いはできているので単純に高さ勝負で負けている。失点場面だけでなく、ベネズエラはセットプレーからチャンスを作っていて、日本は空中戦でやや劣勢だった。

 試合を重ねるごとに中山、冨安のCBコンビは強度と安定感を増していった。中山は左利きの利点もあり、攻撃面でもミスが少なく、有望なCBである。ただ、全体的にベネズエラに対してフィジカルで劣勢であり、その差をいかに埋めていくかは今後の課題だ。

 U-20のプレーぶりは、日本がどうプレーするかの指針になった。崩し方を示せたのは大きい。ただ、この年代から五輪年代(U-23)までをいかにつなぐかの道筋が見ていないのが現状だ。ここから世界との差が開いてしまっている。こちらは日本サッカー界全体の課題である。

(文:西部謙司)

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