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【U20】久保建英、15歳で経験したU-20W杯。悔しさの先に見えたもの…未来への決意

5/31(水) 17:01配信

フットボールチャンネル

 日本のU-20W杯が終わった。第一目標だった決勝トーナメント進出はクリアしたものの、ベスト16でベネズエラ相手に敗退。延長戦までもつれた死闘の末、力の差を見せつけられた。15歳でU-20日本代表メンバーに選ばれた久保建英は、この大会で何を得たのか。悔しさの先に、当たり前のようで忘れがちなひとつの答えが見えた。(取材・文:舩木渉【大田】)

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●久保建英、15歳でU-20W杯出場

 途中出場3試合、128分間プレーして無得点1アシスト。

 これが15歳の久保建英がU-20W杯で残した成績である。30日の決勝トーナメント1回戦でベネズエラに延長戦の末0-1で敗れた後、取材エリアに出てきた久保は他の誰よりも悔しげな表情を浮かべていた。

 いつもハキハキと質問に答える青年はうつむき、言葉が出てくるまで10秒ほど考え込んだ。そして消えるような声で「延長戦までいって、結果負けてしまったっていうのは悔やむこともできないですし、終わってしまったなぁという感じです」と、大会を終えての感想を述べた。

 久保の一挙手一投足には、U-20W杯以前から異様なまでに注目が集まっていた。昨年のJ3でのJリーグデビュー戦然り、今月初旬のFC東京トップチームでの公式戦デビュー然り、何かあるたびに15歳の少年の周囲を無数の大人が囲んだ。

 実力が高く評価されているのはもちろんのこと、久保には「元バルセロナ」「15歳」「技巧派アタッカー」など、注目されやすい要素が揃っていた。U-20W杯には欧米の列強国ですらほとんどメディアを送り込んでこなかったが、日本からは相当な数の記者やカメラマンが取材に訪れていた。

 日本以外からの久保への期待も高かった。いくつかの韓国メディアは久保のコメントをとるため、U-20日本代表の練習に記者を送り込んでいた。ベンチにいるか、ピッチに立っているかにかかわらず試合の中継映像でも久保をアップで映す場面は何度もあった。普通の15歳であれば、必要以上にプレッシャーを感じていてもおかしくない。

 グループステージ初戦の南アフリカ戦で途中出場からチームを逆転勝利に導くアシストを記録した後、第2戦のウルグアイ戦を前に久保はこんなことを言っていた。

「非常にレベルの高い国々の選手とやりに(U-20代表に)選ばれている。レベルが高い方がより緊張感も増しますし、そのレベルの高い相手に自分とチームがいい結果を残すことで、自分たちのレベルアップにつながるかなと思っているので、非常に楽しみです」

●敗退後に見えた“15歳”の本当の姿

 だが、ベネズエラ戦を終えてみると「正直終わってから今は、あまり考えられないですね」と思考を整理できていない様子で、「(期待は)気にせずやっていたつもりでしたけど、期待には応えられなかったので、自分としては本当に不甲斐ないです」と落胆を隠せなかった。そこには“普通の”15歳の少年がいた。

 それでも久保自身、U-20W杯を通して得たものは大きかったはずだ。「前の選手なんで毎試合ゴールは狙ってます」と語っていた通り、起用されればどんな相手にも臆することなく果敢に向かっていき、何度も決定的なプレーを見せた。

 結果的にノーゴールで大会を終えることにはなったが、「どんどん自分のプレーをいつも通り出していければ」という思いはしっかりと形になってあらわれていた。ベネズエラ戦では相手が久保のことを警戒して厳しいマークをつけ、久保にボールが渡らないよう警戒していたのは明らかだった。

 毎試合、課題を克服する姿も見られた。初戦の南アフリカ戦では「今日はちょっと下がってボールを受けていた分、自分ではシュートまでいけていなかった。次はもうちょっと前でボールを受けられるように工夫して、自分からもシュートを狙ってもっと積極的にいきたい」と話していた。

 次のウルグアイ戦、小川航基の負傷で急きょ前半途中からピッチに立った久保は「前半全然いい入りができなくて、ハーフタイム、これじゃ終われないなと思っていた」と、悔やんだが、後半は修正してゴール前に何度も顔を出し、決定的なパスでも観客を沸かせた。

 この試合で出た「ファーストタッチ」という課題も、3度目の出番が訪れたベネズエラ戦で改善が見られた。相手のマークがつきづらい場所に立ち、少ないタッチで前を向ける状態を自ら作るよう工夫して惜しいチャンスを作った。ゴールに結びつかなかったのだけが心残りだ。

 出番のなかったグループステージ第3戦のイタリア戦翌日、「(成果は)そんな簡単に得られるものではないと思うんですけど、5年後、10年後の自分に経験という形で得られるものは大きいんじゃないか」と話していた。初めて経験した世界の舞台で掴んだ感覚は、一生の財産となったに違いない。

●内山監督への感謝。最善だったスーパーサブ起用

 自分を招集してくれた内山篤監督への感謝も忘れない。ベネズエラ戦を終えてなかなか整理がつかない中でも「自分なんかに声をかけてくれて、この大会に呼んでくれて、本当に内山監督には感謝の言葉しかないです」と言葉を絞り出した。

 フィジカル面で勝る年上の選手ばかりの中で、久保をいかに生かすか内山監督も頭を悩ませただろう。先発出場で余計な負担をかけず、スーパーサブという短い時間でエネルギーを爆発させる起用法は、15歳の選手にとって最善だった。

 エース小川航基の離脱が決まってもその方針を崩さず、0-2から2-2に追い上げてグループステージ突破が濃厚になったイタリア戦で久保を起用しなかったのも、適切な判断だった。身体的にも精神的にも無駄なエネルギーを使わせず、負担を最小限に抑えながら世界の舞台を経験させた指揮官の決断は正しかった。

「日本に戻ってきて、こっち(日本)だと1年単位で本当にカテゴリが変わったり、色々な環境が目まぐるしく変わっていくので、向こうでやっているより成長速度は、自分のイメージより2倍、3倍以上速かったかなとは思う。最初のイメージよりも全然成長できている。日本に帰ってきてよかったなというのは正直思います」

 もしバルセロナに残っていたら、18歳になるまでクラブの公式戦に出場することはできなかった。クラブ事情で帰国を余儀なくされたとはいえ、FC東京に加入していなければU-20W杯の舞台を15歳で経験することはできなかったかもしれない。U-20代表はおろか、U-16代表ですら候補に入れなかったかもしれない。

●「こういう思いはしたくない。もっともっと努力したい」

 そう考えれば、いまは久保の成長速度に合わせて適切な戦いの場を用意できている。今後彼の進化がさらにスピードを上げれば、追いつかなくなってしまう可能性もあるが…。

 久保は「自分は世界トップレベルの選手になるのが小さい頃の夢だった」と語る。U-20W杯で同世代、あるいは近い世代の世界トップレベルを目の当たりにして、進むべき道は彼の目にはっきり見えてきているはずだ。

 ベネズエラ戦でU-20W杯での戦いを終えた久保は、最後に何かを噛みしめるように力強く未来への決意を語った。

「こういう思いは本当に、これから先何度もあると思うんですけど、本当にこれを最後にしたいと思っている。(U-17W杯は)まだ先の話なんですけど、選ばれたらこういう思いはしたくないので、もっともっと努力したい。努力の一言に尽きます」

 努力。それこそが「世界トップレベル」にたどり着くための最も長い道のりであり、最も短い道のりでもある。久保は15歳にしてその現実から目を背けず、真っ向から勝負を挑もうとしている。

 力不足で負けるのは、サッカー選手にとって何よりも悔しいはず。久保建英がこの経験をバネにして、彼の言う「努力」の末にどんな選手へと飛躍していくのか、ますます楽しみになるW杯だった。

(取材・文:舩木渉【大田】)

フットボールチャンネル編集部

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