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与野党議員が嘆く、「民意の不在」

5/31(水) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」

 日本国憲法41条には、そうある。

 誰しも小中学校の社会科の授業で触れたことのある条文だし、この条文こそが我が国を議会制民主主義の国たらしめている。そしてこの条文こそが、時として暴走しがちな政府を、民意を直接的に反映する国会こそがチェックできる根拠だ。

 だがどうも、最近、この原則が歪み出してきている。

◆無視された56個項目の資料提出

 先日、民進党は「これまでのヒアリングで民進党から財務省・文科省・国交省・内閣官房等へ求めたもの」と題する書面をリリースした。この書面は、2月9日から5月12日までの約2か月の間に民進党が行なった、森友問題に関するヒアリングで各省庁に提出を求めた資料や調査の一覧だ。全部で56項目あるが、このうちどれ一つとして提出されたことはない。この状況は、民進党の私的なヒアリングだけでなく、公式な国会答弁でも変わらない。民進党をはじめとする野党各党がいくら資料の開示を請求しても、答弁は「廃棄した」「自動的に消失することになっている」の一辺倒。何一つ出てきた試しはない。

 森友だけではない。文科省の前川前事務次官が「確かに『総理のご意向』と記された文書は存在する」と表明し、それに基づき野党議員が文科省内の調査を要求しても、政府側は「確認できない」「調査するつもりはない」と突っぱねる。

 まるで政府は、「国会の要求に応じるかどうかは、政府が決める。国会は黙って政府の提出する法案を審議していればいい」と言わんばかりなのだ。

◆与党議員すら呆れる「国会軽視」

「正直、国会軽視、だよね。軽視って言葉は生温いかも。ほぼ国会として機能してない。政府がまともに答えないから議論なんか発生してないし、野党もだらしないから怒らない。僕ら全員、給料泥棒みたいなもんだよ」

 驚くべきことに、取材に応じてこう答えたのは、野党議員ではなく、西日本選出の自民党参議院議員だ。

「共謀罪の参院審議入りだって、民進党も共産党もほぼ無抵抗だったよね。僕ら自民党の野党時代だったらここで確実に完全審議拒否に打って出てて暴れまくってた。しかし、まあ、今の政府なら、無駄かもね。何しようが、馬耳東風で無茶な国会運営になるんだろうけどなぁ」と、この自民党参議院議員は、野党時代の自党の姿と今の野党を比べて「野党が不甲斐ない」と嘆いて見せる一方、「今の政府の無茶苦茶さ」をも指摘する。与党議員の中にも、国会があまりにも軽視されている現状を嘆く声があるのは事実だ。

 一方、「不甲斐ない」と指摘される当の野党議員はどう考えているのか?

「そりゃ、『黙ってたらだめ! 政府が国会の要求を完全に無視するのなら、審議に応じる必要はない!審議拒否で当然だ!』って声は、私だけでなく、他の同僚議員もあげてますよ。でもね、執行部が及び腰でね……」と嘆息しながら答えたてくれたのは、民進党のとある衆議院議員。

 別の野党議員も「確かに、野党時代の自民党に比べたら僕らはおとなしい。審議中に物投げたり、大声あげたりしないもの。野蛮かもしれないが、野党時代の自民党ぐらいやんなきゃダメなのかなぁ」と半ば、自分たちの「不甲斐なさ」を認めている。

 前出の民進党議員はこう続ける。

「確かに、私たちは不甲斐ない。普通の国なら、ここまで議会が軽視されたら議会はボイコットするのが当たり前。だって政府がそもそも議会を必要としてないのだもの。こんなの民主主義でもなんでもないんだから。だからここで審議拒否するのはむしろ当然でしょう。でもね、何か足りない。何かが足りないんですよ、審議拒否するには」

◆「市民の声」は無視できない

 一体何が足りないというのか?

「市民の声ですよ。やっぱりなんだかんだ言って、与野党限らず、国会議員は、デモや抗議活動に気を配るんですよ。なんてったって世論が怖いんだから。そしてデモや抗議活動に行く人は、選挙に行くわけですから。自民党の議員も公明党の議員も、もし今、安保法制の頃のようなデモがあったら、だいぶ動揺すると思いますよ。だって実際、安保法制の頃、自民党の一部議員はだいぶ揺れてたんだから」

 果たして本当にそうか? 前出の自民党参議院議員に聞いてみた。

「まあ、デモが大きいから自分の態度を変えるかどうかと言われれば、YESでもありNOでもありますなぁ。子供じゃないんだから。でもね」

 ここでコーヒーを一口すすって、こう続ける。

「民意は恐ろしい。恐ろしいんですよ。もし、いま、『国会を軽視するな!』『民主主義を守れ!』と、例えば韓国の朴槿恵大統領糾弾デモのような事が起こったら、僕たちだって、『いろいろ』できますわな」

 いろいろ、とは、どういうことなのか?

「まあ、僕たちだって黙ってるばっかりじゃないんだから。自分の選挙も怖いしね。それにね、ほら、言いにくいことだけどさ、安倍さんのお爺さんの内閣は、それで潰れたようなもんでしょ?なんにせよ、市民の声は、恐ろしいもんですよ」

<取材・文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>

※菅野完氏の連載、「草の根保守の蠢動」が待望の書籍化。連載時原稿に加筆し、『日本会議の研究』として扶桑社新書より発売中。同作が第一回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞読者賞に選ばれた。また、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中

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最終更新:5/31(水) 16:20
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