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「ウソ」も繰り返して言えば、「真実」になる──トランプ大統領の発言と「真理の錯誤効果」についての考察

6/1(木) 18:31配信

WIRED.jp

同じ文言を何度も繰り返していると、そのうち事実とは関係なく「真実」として受け入れられ始める。こうした「真理の錯誤効果」をトランプ大統領は、ツイッターのみならず大統領令でも利用しようとしているようだ。

トランプ「演説の語彙力」は、ほんとうに低かった

こんな話が人々の間でまことしやかに語られている。たとえば、「人間は脳の10パーセントしか使っていない」「ニンジンを食べると視力が上がる」「普通の風邪はヴィタミンCで治る」「米国での犯罪率は史上最高の水準に達している」──。

これらはすべて嘘だ。

しかし、事実であるかどうかは実際には問題ではない。何度も繰り返し見聞きしているうちに、人々は信じるようになるのだ。これは「真理の錯誤効果」(illusory truth effect)と呼ばれ、人間心理の欠陥である。マーケティング担当者や政治家は、まさにこうした錯誤を操る名人といえるだろう。これについては、思い当たる節がある人もいるのではないだろうか。

米国のトランプ大統領は、自分が「優れたビジネスマン」だと繰り返し発言しているが、それが真実ではない可能性を示唆する事実も、いくつか確認されている。2017年2月、トランプは3つの大統領令に署名した。同氏が何度も繰り返し言い続けてきた、米国の法執行官に対して頻繁に生じる暴力事件を阻止するための大統領令だ。

重要なことのように聞こえるのは確かだ。ただし、そのような犯罪の発生率は、実はこの数十年間で最も低くなっている。米国での過度に暴力的な犯罪についても同様だ。大統領が主張する「米国の大虐殺」(American carnage)は、必ずしも正しいとはいえないのだ。

「トランプ大統領は、実際には存在しないような国内の傾向について調査し、それを食い止めるための対策本部を立ち上げようとしているのです」と述べるのは、米国自由人権協会(ACLA)の法務副部長を務めるジェフリー・ロビンソンだ。同氏が述べているように、そのような傾向はもちろん存在しないが、いまでもそう考えている人は少なくない。大統領が真実ではないことをツイートしたり、発言したりするたびに、人々が大急ぎで真実を確認して嘘を指摘しているが、ほとんど効果は出ていない。

2016年11月にピュー研究所が行った世論調査では、大統領選挙に投票した人の57%が、全米での犯罪は08年よりも悪質になっていると思うと回答した。ところがFBIのデータをみると、犯罪件数は約20%も減少していたのだ。

米国で一体何が起きているのだろうか。トロント大学で心理学を研究するリン・ハッシャー教授は、「物事は繰り返されることで、ありそうなことだと思えるようになります」と説明する。ハッシャー教授の研究チームが、真理の錯誤効果に初めて気づいたのは1970年代のことだ。「この効果は、人々がそれ以外の情報にうんざりしていたり、悩んでいたりするときのほうが、より強力になるようです」。つまり、2017年はその条件が整っていたということだ。

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最終更新:6/1(木) 18:31
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