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過去のインスタ作品をすべて削除して、撮り始めたプロジェクト - Q.サカマキ Instagramフォトグラファーズ

6/1(木) 10:48配信

ニューズウィーク日本版

<在日韓国人のストリートフォトグラファー、チョルス・ キムは、人気のあった自分の投稿写真を一旦すべて削除した>

インスタグラムの最大の功績の1つは、ストリートフォトグラフィーを再確立したことだ。街やコミュニティをリアルに切り取る写真ジャンルを、普通の家族写真に匹敵するほどに一般化したことである。

そうした中、この数年で多くの才能あるストリートフォトグラファーが出現し始めた。今回紹介するチョルス・ キムもそうした写真家の1人。日本で生まれ育った36歳の韓国人である。白黒写真をベースとし、街と人の絡みを、その決定的瞬間を見事に捉えている。

写真は、2010年にiPhoneを購入してからの独学だという。その後、ストリートフォトグラフィーやドキュメンタリー写真が持つリアルさ、そして、それらがはらむ人間性、臨場感、躍動感に強い衝撃を受け、写真にハマるようになった。

【参考記事】人間臭さを感じさせる、ディープ大阪の決定的瞬間

とはいえ、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSが火をつけた昨今のストリートフォトグラフィー流行は諸刃の剣だ。プラスの面としては、一瞬にして互いに刺激を与え合うことが可能になったため、冒頭で述べたように、多くの優れたストリートフォトグラファーたちが出現し始めたことだ。

だが、面白さやかっこよさばかりが先行して、中身のある、あるいは物語のある写真は少なくなってしまった。あったとしても、コピーのコピーが出回るようになってきている。これがマイナス面である。

Chulsu Kimさん(@chulsukim)がシェアした投稿 - 2017 5月 27 4:29午後 PDT




Chulsu Kimさん(@chulsukim)がシェアした投稿 - 2017 5月 19 11:32午後 PDT


実のところ、キムの写真も、そうした罠にはまってしまう可能性が大きかった。写真、いや、すべてのアートは、本質的に自己満足から始まるべきだが、そこに時代性や社会的普遍性がなければ、一時的に注目されたとしても、すぐに飽きられ忘れ去られてしまう。それでは、上手い写真の向こうにある凄い写真にはまずなれないのである。テクニックなど二の次なのだ。

そうした懸念は、結局、取り越し苦労だったかものしれない。彼は自分のインスタグラムから、それまで自分の人気を生み出してきた典型的なストリートフォトグラフィーをすべて削除して、その代わりに「PROJECT. KIDS」という形でギャラリーをリセットしたのである。

被写体はすべて彼の家族である。「ハイ、チーズ!」的な家族写真ではなく、リアルさを追求するストリートフォトグラフィーの特性を生かした家族写真だ。

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加えて、キムには他の者にはまず存在しない強みがある。在日韓国人であることだ。常に周りと違うことを意識してきたため、人とのコミュニケーションでは余計にありのままの自分を表せなかったというが、そうした葛藤は写真ではかえってプラスになる。同じような感情を持つ者に通じる普遍性があるからだ。

それは、自身の家族をモチーフにした作品に絡みつき、より純粋な自己表現となるのみならず、ある種、社会のメタファーにまで発展する可能性がある。今後、キムはさらに大きな成長を遂げるかもしれない。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Chulsu Kim @chulsukim

Chulsu Kimさん(@chulsukim)がシェアした投稿 - 2017 5月 27 12:57午前 PDT




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