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レシピにも、料理本にも、ルールはない 美しき異色の本、細川亜衣『野菜』

6/1(木) 12:01配信

CREA WEB

熊本の野菜にはよけいな手を加えるのが申し訳ない

 とことん美しい。と同時に、どうにも奇妙な本が出た。『野菜』という。

 書籍名としては、かなり異例だ。野菜。こんなありふれた、大きいくくりの単語ひとつをタイトルにするとは。これでは書店に並べようと思っても、どこに置けばいいのか書店員は迷ってしまう。もうすこし詳しく内容を想像させるものでないと、読者を想定するのもむずかしい。

 案の定、刊行元の出版社の営業担当からは、企画段階で再考を促す意見が降ってきた。

――このままでは「レシピ・料理」のコーナーに置いてもらえない。タイトル、変えていただけませんか。

 と。そう、『野菜』はレシピの載るれっきとした料理本である。

 著者の細川亜衣さんは、熊本を拠点に活動する料理家。タイトル変更の提案に対して、首を縦に振らなかった。

 彼女の思いの丈は、本の冒頭に掲げられた「宣言」のような文章に集約されている。

私のからだの大部分は野菜でできている。
だから“野菜”の本を作ろうと思ったのは、ごく自然なことである。
今日も明日もあさっても、私は野菜に埋もれて生きてゆきたい。

 というものだ。本書で紹介されている料理は「ゆでアスパラガス」「にら豆腐」など、「料理と呼ぶのもどうかというものも、けっこう多く載っている」(細川さん)ので、たとえば「野菜料理大全」といったタイトルよりも、もっとシンプルなほうがしっくりくるという面もある。

「私がおいしいと思うのは、たいていそういう料理です。あめつち・太陽の力で育ち、作り手が手助けすることで野菜は実る。料理する側はあれこれ手をかけるより、できるだけそのまま受け止めればいいんじゃないか。とくに、私がふだん接している熊本の食材は本当にいいものなので、何かよけいに手を加えてしまうとかえって申し訳ない気分になる。それでだんだん、できるかぎり何もしない料理になっていった。その結果ですね、こういうタイトルになったのは」

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最終更新:6/1(木) 12:01
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