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トランプ大統領は中国にとって有利で日本にとっては不利?

6/2(金) 19:01配信

マネーポストWEB

 ドナルド・トランプ大統領が誕生した際、米中貿易摩擦は激化すると思った人が多かったようだ。しかし、トランプ大統領の対中政策は、4月6、7日に行われた習近平国家主席との会談を経て大きく変わった。トランプ大統領が貿易問題で中国を攻撃することは無くなり、中国に対して好意的な発言が増えている。この点について、日本のマスコミは、北朝鮮核開発問題で中国の協力が必要であるとか、政権幹部が不動産事業で中国と密接な関係があり、ビジネスを通して政権内に人的関係が広がっているからだとか、経済面以外の理由を挙げている。しかし、本当にそうだろうか?

 中国の専門家が米中貿易問題をどう捉えているのか1例を紹介したい。国務院発展研究センター弁公庁の隆国強主任は、「貿易摩擦は勃発しない。その理由は以下の3点である」と主張している。

(1)米中貿易品目は競争関係よりも補完関係が強い
 アメリカは先進国であり、中国は発展途上国である。アメリカは、ハイテク産業、農業、エネルギー産業などに強みがあり、一方、中国は相対的に労働集約的産業やサービス業に強みがある。衝突が起きにくい。

(2)米中トップによる政治的合意がある
 4月6、7日の首脳会談において、習近平国家主席は、“我々は米中関係を良好にする1000の理由がある。1つとして悪くする理由はない”と発言している。トランプ大統領や政権はこれに対して積極的な反応を示している。

(3)貿易戦争は両者が敗者となる
 貿易戦争は何の問題解決にもならず、お互いの利益を損ねるだけである

 米中間の貿易関係が密接であれば当然、その中で摩擦も生じる。それに関しては、両首脳会談の際に約束された“百日計画”が重要となる。貿易、投資や関連領域において、双方が具体的な行動を取ることで、目に見える成果を短期間に挙げることができる。

 中国がアメリカにとって最大の貿易赤字国であることを、アメリカは問題視する。しかし、それはグローバルな生産価値連鎖形成によるものである。例えば、アップルのiPhoneを例にとれば、中国で組み立てて、そこからアメリカを含め世界に輸出しているが、このiPhoneの付加価値でみればアメリカが最大である。部品はアメリカ(ICチップ)、東南アジア、日本、韓国、台湾などから輸入されたもので、中国の付加価値部分は一部の部品や組み立て加工部分に過ぎない。これは一つの縮図であり、アメリカに輸出している多くの製品が同じような生産価値連鎖構造となっている。

 米中の貿易、サービス貿易、投資などの領域において、中国における米系企業がアメリカの投資家や企業に対して巨額の利益をもたらしている。米中の経済関係を単に貿易収支だけから見るのではなく、サービス貿易、投資、金融提携など、広い視野から見るべきである。その中で、米中関係を深めるための潜在的な何かを探すべきである。

 百日計画の作成は双方における問題を解決するのに非常に良い方法である。その完成を経て、双方で密接に話し合い、成果を出すことが可能である。たとえば、中国はアメリカからの農産品、自動車部品、ハイテク製品、文化的製品などの輸入を増やし、アメリカは石炭、天然ガス製品などの中国への輸出を拡大する。トランプ大統領が提唱する1兆ドル規模のインフラ投資拡大については、中国はこの20年来高度にインフラ投資を重視してきたことで、融資、建設、プロジェクトの管理など多方面で協力の余地がある。中国政府の提唱する“一帯一路”地域での協力計画について、中国はアメリカ政府、企業の参加を歓迎する……。

 こうしてみると、米中貿易不均衡について、中国の貿易赤字額が圧倒的に大きいと言ってもそれ自体は重要でないことがわかる。日本にとって辛いのは、アメリカ側の貿易赤字について、その大きな要因が自動車の巨額な輸出超過であることだ。この産業はアメリカと利害関係が真っ向から対立する。さらに、中国は日本の2倍以上の市場規模があり、しかも高い成長力を維持している。消費市場として、中国はアメリカにとってより重要な市場である。

 トランプ大統領誕生決定時にも同じことを書いたが、イデオロギーよりもビジネスを重視するトランプ政権は中国にとって有利である。日本のマスコミのトランプ大統領批判が厳しいのもこの辺りに理由の一端がありそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサル ティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。

最終更新:6/2(金) 19:01
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