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フィーリングで判断するのも正解!?よりよい意思決定を下すためのサイエンス

6/2(金) 7:30配信

@DIME

 仕事でも生活でも日々は決断の連続だ。昼食のメニュー選びといった些細なものから、転職やマイホーム購入などその後の人生を左右するものまで、我々は次から次へと決断に迫られていってもいいだろう。そこで良い意思決定に役立つシンプルな見識が提案されている。意思決定は極論すれば2択であるというのだが……。

■よい判断をするための2つの理解

 細胞中に見いだされる直径約25ナノミクロンの管状の構造体がマイクロチューブル(微小管)である。いわばきわめて小さいストローのような形態のマイクロチューブルだが、常に両端で伸長と短縮が起っており形状が安定しないことでも知られていて、動的不安定性 (dynamic instability) が高い構造体であると定義されている。つまり時間の経過と共に本体を構成するタンパク質が丸ごと入れ替わるほどの変化を刻々と遂げているのだ。

 このマイクロチューブルに見られる特性であるこの動的不安定性はこの世の理解の大きな鍵を握っているという。一方でこれとは反対に、動的ではありながらも元の姿に戻ろうという力が働く動的安定性(dynamic stability)という特性もある。そして我々の意思決定は、極論すればこの動的安定性を選ぶのか、それとも動的不安定性に身を任せるのかという2択であるというのだ。

 心理学系オンラインジャーナル「Psychology Today」の記事でジョン・ノスタ氏は意思決定を迫られている物事について、動的安定性と動的不安定性という観点から考慮することでよりよい決断ができると主張している。まず、それぞれを下記のように定義している。

・動的安定性:元の位置に戻ろうとする動きの特性。

・動的安不定性:元に戻ろうとはせずに新たな均衡点にいたる動きの特性。

ノスタ氏はさらにわかりやすい例ととして、ジェットコースター(ローラーコースター)のレールの形状を引き合いに出している。それによれば、ジェットコースターのレールの一番低い谷底の1点が動的安定性が最も高い地点である。この地点に置いたボールは、前に押しても後ろから引いても手を離せば元の地点に戻ろうとする。

 これとは反対に、レールの最も高い頂の地点が動的不安定性がマックスになったポイントだ。この1点から少しでも前後に動けば“絶叫”必至の急降下を見せることになる。そして動力源がない限り、動き出せばもはやここに戻ってくることはない。

 確かにわかりやすい喩えだが、意思決定をするにあたってそれが動的安定性を求めるものなのか、それとも動的不安性を招くものであるのかを考えてみることでよりよい判断ができるということだ。極論すれば「現状維持」か「変化」のどちらを選ぶのかという究極の2択になる。

 もちろんそのどちらがいいのかは当人が考えた末の独自の判断だ。しかしこうしたことを考慮することで問題がよりクリアになる。そして現実の意思決定においては、ギャンブルのように決断してすぐ終りということではなく、長期的な影響を及ぼしすぐには結果が返ってこない性質の案件も多い。この種の意思決定では最初に何を望んで決断したのかを明確にしておかなくては、その後に続く判断が鈍ることにもなりかねない。今度何かを決断する際には、「現状維持」と「変化」、どちらを求めるのかを意識してみても良いのではないだろうか。

■“フィーリング”での判断はおおむね信頼できる

「現状維持」を求めるのかそれとも「変化」に打って出るのか、自分の意志と問題の在り処をクリアにして意思決定に臨みたいものだが、あくまでも判断そのものは自己責任ということになる。

 より良い判断のためには、判断材料をなるべく多く集めてじっくり検討してみたいものだが、そうした時間がないケースや、そもそもロジカルに考えても分からない種類の案件もあるだろう。そこで登場するのがカラダが感じる“フィーリング”での判断ということになる。しかしはたして我々は“フィーリング”をどの程度信頼していいものなのか?

 昨年、オーストラリアの研究チームが“フィーリング”を計測する研究を行なっている。その結果、人間は意思決定においてフィーリング(直感、直観)を重要視することで、判断を正しく、早く、自信をもって行なえることを報告している。つまりフィーリングを信じてよいということになる。

 オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学の心理学チームが昨年、「Psychological Science」で発表した研究では、20人の大学生にコンピュータスクリーン上に表示されている動き回る複数のドットが、最終的に左右どちらの方向へと移動するのかを予測して判断してもらう実験を行なった。動きに注目しじっくりと考えて予測する時間はなく、完全に“フィーリング”での判断になる。

 そして実はこの映像にはタスクを行なう実験参加者の気分を変えるサブリミナル映像が埋め込まれていたのだ。例えば仔犬や赤ちゃんといった気分をポジティブにする映像と、拳銃やヘビなど気分をネガティブにする映像が、意識的は認識できない速度で各タイミングで表示されていたのだ。

 実験の結果、ポジティブなサブリミナル映像が表示されたときの判断は正解回答率が高く、しかも素早く短時間で行なわれている傾向が明らかになったのだ。そして判断が素早いとということはそれだけ自信を持って回答していることにもなる。

 つまりポジティブなフィーリングが感じられる要素がある意思決定では、望ましい決断を行なえる可能性が高いということにもある。絶対的なものではないにしても、ポジティブな気持ちに従って判断をしてよいということなのだ。逆にどう考えてもネガティブな気分にしかならない種類の案件は、可能であればしばらく判断を保留するか、コイントスなどで運を天に任せるしかないのかもしれない。

 研究を主導したジョエル・ピアソン准教授によれば、フィーリングに着目した判断は経験を積むことで正答率が向上していくということだ。つまり自分の気持ちに正直な判断を行なってだいたい間違いはないというところだろうか。

■腸は気分や思考に大きな影響を及ぼす“第2の脳”

 直観や勘などの第6感をあらわす“フィーリング”は、日本文化の文脈では雰囲気や感触といったニュアンスだが、英語ではもっと具体的に“gut feelings”、つまり“はらわたの感触”と、より肉体的な感覚として形容されている。

 そして実際に最先端のサイエンスでは、腸は気分や思考に大きな影響を及ぼす“第2の脳”であるということだ。

 2010年に科学誌「Science」がこの10年の科学の10大成果の1つとして挙げているのが「マイクロバイオーム(Microbiome)」の働きの解明である。マイクロバイオームとは人体に棲息している1000兆個にもなるという微生物群の総称だが、その中でも特に腸内のマイクロバイオームの働きがこれまで考えらてきた以上に重要な役割を担っていることが徐々にわかってきているのだ。

 腸をはじめとする内臓の健康は当然ながら肉体の健康の要であるが、最近の研究では腸のマイクロバイオームの状態が、人の気分や思考、行動に影響を及ぼしていることが指摘されている。

 米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のエメラン・メイヤー教授は最近出版された自著の中で、感情を落ち着かせる働きがあるとされる神経伝達物質であるGABA(ガンマアミノ酪酸)が、腸内細菌によって生産されていることを解説している。つまり腸内で作られたGABAが脳に伝えられ、不安障害を抑制する働きを担っているということだ。

 文字通り“はらわたの感覚”に注意を払い、腸内の健康を保つことは、実生活の上での健全で賢明な意思決定に繋がるということでもあるだろう。

文/仲田しんじ

@DIME編集部

最終更新:6/2(金) 7:30
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