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『月がきれい』8話 夏祭り、今日から“ちゃん”付け呼び、そしてキス。究極の恋テロアニメに今週も地獄を見た

6/2(金) 18:00配信

おたぽる

──「ありえんキレた」「爆発しろ!」「壁! 圧倒的に壁不足!」などと今宵も阿鼻叫喚の嵐を巻き起こした『月がきれい』(TOKYO MXほか)。中学生の純愛を描いているだけなのに、なぜこんなに人の心を弄ぶのか。まさか「♯恋テロ」が公式になるとは思わなかったライター・大山くまおが全話レビュー中。フライングドッグ南健プロデューサーへのインタビュー(http://otapol.jp/2017/04/post-10440_entry.html)もあわせてどうぞ。


■やっぱり2人は前回ちゃんとキスしていた!

 前回の第7話で三角関係、四角関係に終止符を打ち、クラスメイト公認のカップルとなった小太郎(演:千葉翔也)と茜(演:小原好美)。ひょっとしたらこの後、振られた千夏(演:村川梨衣)や比良(演:田丸篤志)らの復讐やクラスの女子たちからの陰湿ないじめなどがあるんじゃ……とダークな展開を迎えるのでは、と予想していた視聴者も多かった模様。

 しかし、そんな心配は無用だったようだ。夏休みの登校日、小太郎の友人のろまん(演:筆村栄心)と小笠原(演:金子誠)は盛大にからかってきたし、茜の友人の女子グループは興味津々といった感じ。千夏は心に多少のわだかまりはあるかもしれないが、それを押し隠して普通の友人に戻り、比良は登場しなかった。今後も小太郎・茜のカップルとクラスメイトとの関係は良好なままだと思う。

 小太郎が冒頭で引用した「愛は、この世に存在する。きっと、在る。見つからぬのは、愛の表現である。その作法である」という言葉は、太宰治のエッセイ『思案の敗北』から。なんとも意味深なタイトルである。そういえば、7話で2人はやっぱりちゃんとキスをしていた。前回のレビューで指摘したとおりだ。


■制汗スプレーが示す茜の恋心

 相変わらず小太郎と茜の仕草が細かい。教室では、今まで意識して避けていた2人が視線を交わし、周囲の反応を感じて頬を赤らめながら視線を外す。クラスは一瞬静かになるが冷やかしの声などは上がらない。これだけで、2人が付き合っていることがクラスの中で受け入れられはじめていることを示している。

 茜は夏休みの部活の後、小太郎と会う前に汗の匂いを気にして制汗スプレーを使っているのもポイント。セリフもない、わずかなシーンで、茜の恋心や健気さなどを示している。ついこの前まではジャージ姿で出かけて外食しても平気な娘だったのに!(それはBパートの浴衣姿にもつながる)

 祭りの稽古中の小太郎を見ている茜の表情は、まごうことなき恋する乙女。7話が恋愛感情を態度で示した小太郎サイドの高揚を描いたエピソードだとすると、8話は茜サイドの静かな胸の高鳴りを描いていると言っていいだろう。7話と8話は一対になっている。


■恋テロ連続爆破ポイント接近!

 第8話のクライマックスは夏祭り。小太郎と茜が訪れる川越氷川神社の「縁結び風鈴」は毎年夏に行われている恒例の祭事。「風鈴回廊」や「光る川」などが名物で約20万人が訪れる。今年は7月1日から9月10日まで。『月がきれい』視聴者はぜひ訪れてみよう。そして一人で訪れてしまったことを悔やもう。

 浴衣姿の茜と夏祭りデートする小太郎が浮かれないはずがない。だが、ここでも小太郎の描写は抑えめで、茜に焦点が当たっている。茜だってしっかり浮かれているのだ。わずかな所持金で小太郎の誕生日プレゼントを物色する姿が、いかにも中学生らしくて微笑ましい。縁結び短冊だってやりたかったのは茜のほうだ。小太郎はお金を出して、茜の気持ちをサポートしている。

 履物の鼻緒で傷ついた茜の素足を手に取って手当をするシーン、茜から小太郎に誕生日プレゼントの「べにっぽ」を渡すシーンを経て、2人きりになった小太郎と茜はお互いの呼び方を「水野さん」「安曇くん」から「茜ちゃん」「小太郎くん」へと変化させる。そしてキスシーン! 今週の恋テロ連続爆破ポイントだ。ああああああ。

 このシーンの芝居も面白い。「べにっぽ」を弄っていた茜に手を重ねる小太郎。茜は小太郎の手の感触に反応する。小太郎は茜を見つめているが、茜が反応すると照れて視線をそらす。茜はうつむきがちだが視線の方向は変わらない。再び小太郎は茜のほうを向くと、茜は少しだけ視線を上げる。茜はほとんど動いておらず、小太郎だけが動いている。2人はロングショットでキスをするのだが、顔を近づけたのは小太郎のほう。小太郎が積極的なようでいて、実は茜が小太郎の動きをじっと待っているように見える。


■絶叫上映会を開いてみたら面白い……かも

 2人が夏祭りでキスをするシーンで流れるのは、東山奈央がカバーした「夏祭り」。もともとはジッタリン・ジンの曲だが、Whiteberryのカバーが印象に残っている人も多いだろう。ベタといえばベタだが、これ以上ない選曲だと思う。

 曲といえば、今回はエンディングテーマ「月がきれい」の2番の歌詞そのままのエピソードだった。

 歌詞は茜の視点で描かれている。茜にとってこの日がとても大切なものだったということがよくわかる詞だ。

 2人の恋愛はずっといい感じで続いてきた。この甘い感じは、めちゃくちゃ古くて恐縮だが、ちば拓のマンガ『キックオフ』(集英社)を思い出す。その甘さがクセになるのだ。今後訪れる2人の恋愛への障害は、たぶん2人とは関係のない外部要素だろう。ラストで映し出される2人が書いた縁結び短冊「ずっと一緒にいられますように」は恋テロ爆破ポイントだったが、なんだか今後の2人の行く先に不安を感じさせる。

 8話は作画が非常に不安定だったが、これだけ「縁結び風鈴」をしっかり描いているのだから仕方ないという気分にもなる。ディスクまでには修正が入ると思うので、楽しみに待ちたい。

 Cパートも絶好調だ。今回は本編で「彼氏とかめんどくない? マジわかんないわー」と呟いていたストイックな滝沢葵(演:白石晴香)が、陸上部では後輩男子から注目されていたという「女一匹 滝沢葵」がグッド。本編のセリフを引き取りつつ人物像を膨らましており、クラスのキャラクターをモブ扱いしないという制作側の意気込みを感じさせる。

 それはそうと、公式さんには今度ぜひとも絶叫上映会を開催してほしい。みんなでキュンキュンしながら「ああああああ」とか「うわあああああ」と叫び、二度と返ってこない青春を思って涙したい(マジで地獄)。
(文/大山くまお)

最終更新:6/9(金) 12:51
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