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「大きく儲けて小さく負ける」は奥が深い

6/2(金) 20:01配信

会社四季報オンライン

   このコーナーは「投資心得」と銘打っているので、今回は少し「心得」めいたものを書いてみたい。

 まずは、ちょっと大雑把な問いになるが、投資で成功を収めるために何が一番重要であろうか。相場の先行きをできるだけ正確に予測することだろうか。

 もちろん、相場の先行きを正確に予測できればそれに越したことはない。だから多くの投資家はどうすれば予測の精度を高められるかに心血を注いできた。だが、残念ながらどれだけ努力しても予測の精度はほとんど上がらないのが現実だ。そもそも、ただ漠然と「予測の精度を上げる」ことを目指すのは見当はずれといっていいだろう。

 そうではなく、本当に焦点を当てるべきは、「相場の中で比較的精度の高い予測ができる部分はどこか」を見つけ出すことなのだ。その点については、いずれまた触れるとして、ここでは予測の精度は簡単に引き上げられないという前提で、その先を考えてみよう。

 予測があてにならないとすれば、投資では儲かったり損したりするのが普通ということになる。そういう勝ち負け入り乱れた状態でなおかつ長期的に成果を上げるためには、儲かるときには大きな利益を出して、損するときには損失を小さく抑えることが何としても必要となる。当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれないが、私はこの点こそが、長期的な投資成績を左右する極めて重要なポイントだと思っている。そして、それさえクリアできれば、予測の精度がたいして良くなくても、投資の成果はかなり改善するはずだ。

 だが、この当たり前のことを実践することが実は非常に難しい。それは私たちの心理的な構造、もっといえば本能的な部分がそのための大きな障害となるからである。

 「大きく儲けて小さく損する」という一見簡単そうな「心得」は、本当はさまざまなテーマを含んだ非常に複雑なものであり、順を追ってみていく必要がある。まずは「大きく儲ける」というところから焦点を当ててみよう。

■ 早すぎる利食いのツケ

 実際に多くの投資家は、儲けるべき時に十分に利益を上げることができていないように思われる。そして、それが投資の長期的成功を阻む大きな壁となっている。

 「大きく儲けられない」ということには理論的な裏付けもある。行動ファイナンス理論の中心的な理論モデルである「プロスペクト理論」というものによれば、人は投資でわずかな含み益が出るとそれに満足してしまい、早くそれを確定させようと利食い売りを焦ることが示唆される。そのため、利食いはいつも早すぎたものになりがちなのだ。

 もう一つの側面もある。ひとたび相場が動き出すと、相場はかなり大きく動くことが多い。そして、その相場変動の(方向でなく)大きさを事前に予測できる人はまずいない。要するに、相場の大きなトレンドはたびたび発生するが、それは常に人の予想や感覚よりもはるかに長く大きなものになりがちだ。だから、ひとたびトレンドに乗ったあとはどっしりと構えてさえいれば大きな利益が出ていたはずのところを、ちょこちょこと利食ってしまって十分に利益を上げきれないという事態に陥る。

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