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ストレス解消でポチっ…読む時間もないのにキンドルには1000冊の電子書籍が【鴻上尚史】

6/2(金) 16:00配信

週刊SPA!

― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

 「女の人がストレス解消に買い物をする」というのがちょっと前まではどうにも理解できなかったのですが、最近は、ようく分かります。

 原稿を書いてて、気分転換をしたいと思うと、つい、アマゾンを開きます。

 で、本を買いたくなります。アクセサリーとか服とか時計とかはどーでもいいのですが、本は欲しくなるのです。読む時間なんか全然ないのに、あれもこれも欲しくなります。

 今までは、「いや、これを買って、どこに置くんだ? 仕事部屋はまた、ドロボウが入った直後みたいな散乱状態になっていて、床はもう2年ほど見えず、本を買っても置く場所なんかないぞお」という自分への突っ込みで、なんとか「買い物衝動」を押さえていました。

 が、キンドルです。電子書籍です。持ってます?

「キンドルだと、ダウンロードするだけなんだよ。なんにも場所も取らないんだよ。ほらほら、買えばいいじゃん」という悪魔の声が響きます。

 で、気がつくと僕のキンドルには、1000冊ほどの書籍が入っているのです。

 だって、買っても買っても、部屋が散らからないんだもんね。

 でもね、そんなに買って読めるわけないのです。死ぬまでに、間違いなく読めません。でも、ストレスがたまったり、旅に出たくなると、電子書籍をポチッとするのです。その時、なんか、ちょっとだけ、ストレスが消えるような気がするのです。

「ああ、これかあ。これが、女の人が買い物をしたらスーッとするって言ってるやつかあ」と、最近、しみじみしています。

 アマゾンさんは親切で、「あ、これ買おうかなあ」と思って、ポチろうとすると、「お客様は、2016/4/26にこの商品を注文しました」と教えてくれるのです。

 場合によっては、「2010/2/20」みたいな場合もあって、「おお、俺は7年も前に買っているのか!?ということは、キンドルのこのクラウドという雲の奥深くのどこかにあるはずなんだ。どこだあ!」なんて状態になるのです。

◆親切すぎるキンドルさん

 ちなみに、紙の本だと、この日付がもっと古くなります。10年前に買ったとアマゾンに教えられて、散らかった仕事部屋を見て、溜め息をつくのです。「おお。このカオスに紛れた中から救出できるんだろうか」と悲しい気持ちになります。

 電子書籍はなかなか定着しませんが、まずは、マンガを読むのにはとても便利です。

 活字は買わないけれど、マンガは買ったという人は多いでしょう。電車でも空港でも、電子書籍リーダーを持っている人の大部分がマンガを読んでいます。

 僕も、『Q.E.D.証明終了』とか『進撃の巨人』とか『金田一少年の事件簿』とか続々と買いました。

 慣れてくれば、活字も便利です。問題があるとすると、キンドルさんは親切で、読み始めると画面の左下に「本を読み終えるまで:2時間30分」とかっていう予測を出してくれることです。いや、これはこれで便利なんですけど、分厚い本だと「読み終えるまで:6時間20分」なんて場合があります。溜め息がでます。

 今、英語の本をつっかえつっかえ読んでいるのですが、「読み終えるまで:40時間」と出ています。死にそうになります。もちろん、非表示にできるのですが、機能があると知ると、つい、見たくなるのです。

 電車の中でひょいと取り出して、電源を入れると、読んでいた画面から表示されます。これも便利なのですが、そうすると、なんという作者のなんという作品か分からないまま読み続けられるのです。

 活字の本だと、本を手に取るたびに、表紙で作品名と作者を確認できます。キンドルはそれがなくても読めるので、「面白かったけど、作者と本のタイトル、覚えてないや」という状態になるのです。

 まだまだ、電子書籍は日本では定着してなくて、電子書籍化になってない作品も多いです。反対している作者さんもいて、そういう人の作品は全部が紙なので、逆に買うのをためらってしまいます。断捨離じゃないですけど、なるべく持たないまま楽しめたらいいなと思ってしまうのです。そんなわけで、今日も僕はストレスに負けて、読む時間もないまま、ポチるのです。はい。

※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて好評連載中

日刊SPA!

最終更新:6/2(金) 17:23
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