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常識を解きほぐす。4人の現代アーティストの競演

6/3(土) 7:00配信

文春オンライン

 光が乱反射する水面や、微風に揺れる木立の葉群れ。精巧にカットされた宝石なんかもそうだけれど、人はとかくキラキラ、チラチラと揺らめき輝くものにすぐ心を奪われる。ビジュアルによって人の心を掴まんとするアートでも、揺らめき輝くものをどう表すかは大きなテーマ。そうした作品を集めたグループ展が東京・恵比寿のMA2 Galleryで開かれている。「ripple effect –through the surface」展だ。

織物をバラして「美」のありかを探る手塚愛子

 4人の現代アーティストが出品する展示で、たとえば手塚愛子の作品は、精緻な織物が途中から繊細な無数の糸の連なりへと変化している。いくつもの色が重なり合いながら垂れ下がっているさまに、うっとり見惚れてしまう。じつはこれ、細かく織り込まれたタペストリーを、ほぐして解いてしまっているのだ。一枚の織物をつくるのに、こんなにたくさんの糸が使われているとの事実に、改めてびっくりさせられる。

 いったん完成された織物が元の姿に逆戻りさせられているのだから、どこか無残な感じもするけれど、素材そのままでもこんなに美しいのだとも感じ入る。そのきらめく素材を、人は膨大な手間と時間をかけて、違う美しさを持つ織物に仕立て上げる。ずいぶん不思議な営みをしているものだ。でも、それがアートと呼ばれるのであれ、工芸品とみなされるのであれ、人の手が生み出したものはやっぱり愛おしくて尊いとも実感する。

誰かのようで誰でもない人物像を生み出す田口和奈

 田口和奈の作品にも、訳がわからぬまま惹きつけられる。鈍色の画面に、ぼんやりと白い像が浮かび上がっている。コップ、だろうか。像がぼやけていくつか重なっても見えるので、コップの存在自体が揺らいでいるように感じられる。

 女性の顔がアップで写された作品もある。整った顔立ちで、何かの映画に出ていた女優だったかしらと考えを巡らせてしまうものの、記憶を探ってもぴたり当てはまる名前は浮かばない。

 見たことがありそうなのに、まったく知らない人物。それはちょうど、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》や、フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》といった名画に描かれた女性のことを、像は見慣れているからよく見知っている気になるけれど、考えてみればその人物についてこちらは何も知らないし、描かれた人が実在したかどうかもわからないのだと、ふと気づきびっくりする感覚に似ている。

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