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ベイルかイスコか、鍵握るジダンの選択。CL決勝が「しょっぱい試合」にならない理由

6/3(土) 13:30配信

フットボールチャンネル

 現地時間3日夜、チャンピオンズリーグ(CL)決勝がカーディフで行われる。大舞台では好ゲームにならないことも少なくないが、今回はお互いの持ち味がそれを許さない可能性が高い。(取材・文:神尾光臣【カーディフ】)

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●大舞台一発勝負ゆえのこう着は心配無用?

「決勝の取材か、それはいい試合になるといいね。もっともCLに限らず決勝戦ってのは、大抵がしょっぱい内容になるもんだけどね。私は16年前のミラノでバレンシアとバイエルン・ミュンヘンが対戦した時に観戦に行ったんだが、面白かったのは最初の3分間だけだったよ。そこから先は…」

 カーディフで行われる今回のUEFAチャンピオンズリーグ決勝取材にあたって、イギリスはバーミンガムから入国し、同地の空港で入国審査を受けた時のことだ。筆者に滞在日数と渡航目的を質問した審査官は、返事を聞くなりニコニコとしながらそんな雑談を始めた。入国者の数が少ない時間帯だったので、そんなリラックスした雰囲気になったのだろう。ともかくこういう話を入国時に聞かされると、こちらのテンションも上がるというものである。

 振り返れば確かに、CLといいワールドカップといい必ずしも決勝戦でいい内容の試合が展開されるとは限らない。むしろ逆に、両チームともに負けたくないという思いからこう着状態に陥り、スペクタクル性を欠いたまま時間だけが経過する場合も少なくない。 01年でのミラノのCL決勝はまさにそういう試合だった。守備戦術や突き詰めた結果の表れでもあるので、ロースコアの試合は必ずしも悪いことだとは言えない部分もあるのだが…。

 ただ今回の決勝は、両チームともに腰が引けたまま試合を終える、という内容にはなりにくいだろう。前線にタレントを揃えるレアル・マドリーは、カゼミロを中盤の底に置いてバランスも大事にしているとはいえ、やはり攻撃的に戦うことを宿命づけられたチームだ。一方で守備がストロングポイントとされる現在のユベントスも、守り倒すだけのサッカーはしてこなかった。相手の弱点を攻撃的に突こうとし、実際そのように攻めきったことで、彼らは決勝まで勝ち登ってきたのだ。

 今回もユーベは、レアル・マドリーの弱点はどこであるかを見抜き、それを突くことで試合の均衡を破っていくというアプローチを取るだろう。その意味で重要なのは、ギャレス・ベイルなのかイスコなのか、ジネディーヌ・ジダン監督の選択はどちらになるのかということだ。なぜならそれは、レアル・マドリーの守備に大きく関わる話だからだ。

 ベイルを起用した場合は4-3-3。だが彼は不調で、守備への参加意識も高くはなかった。この決勝トーナメントで対戦したナポリは彼は、ベイルが守備に戻らず味方との距離を開けがちになっていた右サイドを狙った。そこを起点に次々と攻撃を繰り返し、少なくとも内容では善戦を果たしている。ただ以降の試合ではイスコが台頭し、彼をトップ下に据えた4-3-1-2でレアル・マドリーの守備バランスは回復したように見えた。

●ベイルかイスコか…。最後は規格外の「個」がカギを握る

 ところが2日に行われた前日会見で、マッシミリアーノ・アッレグリ監督は全く異なる見方を示した。「ベイルの方が、守備においてはきっちりポジションを取る。イスコには創造性があるが、こちらが狙えることのできる隙は多くなる」。

 おそらくそれは、システムに起因する理由をさしてのことだろう。4-3-3の場合はウイングが守備に参加することでサイドに守備力が確保されるが、4-3-1-2だとサイドには数的不利が生じやすくなる。実質上はサイドハーフとサイドバックが連動して攻めるユベントスにとっては、間違いなく狙いどころになるだろう。そこを使って仕掛け、今季はスピードに難を見せているレアル・マドリーのCB陣の裏を突きたい。

 ただ中盤では、イスコを置く分レアル・マドリーに数的優位が生じる。そこを2枚のボランチだけに守備をさせていれば、当然ピンチになる。それは全体の守備組織を収縮させることで対応することになるだろうが、もし先取点を取られるとなるとユーベも前に行かざるを得なくなり、組織の収縮が難しくなる。レアル・マドリーの弱点を突いて先手を取れるかが、戦術上でも非常に重要なポイントとなりそうだ。

 中央のエリアでの勝負をものにするという意味では、やはりパウロ・ディバラの存在もキーとなりうる。トップ下をホームポジションとし前後左右に動き、体を寄せた相手をワンタッチで抜いて背後を取るチャンスメイクでカゼミロを無力化できれば、レアル・マドリーのバランスは屋台骨から崩れる。逆にここをカゼミロに抑えられるようだと、ユーベにとっては攻撃のバリエーションを大きく減らすことになるだろう。

 そして、それぞれが戦術、技術を突き詰めた末に勝負を決めるのが、規格外の選手の存在である。月並みになるがレアル・マドリーではクリスティアーノ・ロナウド、ユベントスではゴールを守るジャンルイジ・ブッフォンの名が挙げられる。立場は表裏逆ながら、数少ないチャンスでの決定的なシュート、あるいはセーブが勝敗を左右するものになるというで意味で両者は同義の存在だ。

 「これが自分にとっては最後のチャンスになる」とブッフォンは会見の席で語っていたが、果たしてその通り集中力の高いセーブで優勝をもぎ取ることができるかどうか。

 ピッチの全域で、やはり見所は多い。戦術的な駆け引きからの攻撃の末に、優勝ををもぎとることができるのはどちらのチームになるのか。

(取材・文:神尾光臣【カーディフ】)

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