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高齢者の財産守れ 関連法改正、投資まがい商品にも網

6/4(日) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 高額な商品・サービスを売り付けられたり、実体のない投資まがい商品を購入させられたりする被害が後を絶たない。特に高齢者が狙われるケースが目立ち、政府は対処するため関連法を相次いで改正。26日に国会で成立した改正民法でも、トラブル防止に役立つ項目を盛り込んだ。悪質業者から資産を防衛するためのポイントをまとめた。
 「母が高齢で一人で暮らしているのにつけ込み、言葉巧みに100万円を払わせたようだ」。会社員のAさん(52)は打ち明ける。先日、母の家を訪れると、真新しい布団が4組もあるのに気付いた。聞くと1カ月前に訪問販売を受け、戸惑いながらも契約し、支払いも済ませたという。

■「過量販売」対象に

 訪問販売で買った商品などは、一定期間内であれば無条件に解約できる「クーリングオフ制度」がある。Aさんの母のケースでは期限である8日を過ぎていた。困ったAさんは地元の消費生活センターに相談しに行こうと考えている。
 商品・サービスの契約に絡むトラブルは後を絶たない。国民生活センターによると、年間の相談件数は2013年度に9年ぶりに増加に転じ、その後90万件台で推移する(図A)。
 特に70歳以上が当事者となるケースが増えており全体の2割を占める。消費者問題に詳しい大迫恵美子弁護士は「多額の金融資産を持つ高齢者が悪質商法の標的になっている」と話す。
 悪質商法から高齢者らを守るため、政府は規制強化に乗り出した。目玉となるのが消費者契約法の一部改正だ。6月3日から施行される。
 同法は「不当な勧誘」を受けて不覚にも結んでしまった契約は、取り消しが可能だと明記している(表B)。取り消し可能期間を従来、気付いた時から「6カ月以内」としていたのを「1年以内」に延ばす。
 どんな行為が不当勧誘にあたるかついても、範囲を広げる。新設されたのが過量販売(過量契約)とよばれる行為だ。不要と知りながら、著しく多量の商品を販売するもので、冒頭の例もあてはまる。
 過量販売についてはこれまでも一部が別の法律(特定商取引法)で規制されていた。対象は訪問による販売。同法も改正(施行は12月1日の予定)され、電話による勧誘についても、過量販売があれば契約を解除できるようになる。
 もうひとつの目玉となる規制強化の対象がいわゆる「投資まがい商品」だ(表C)。金融商品取引法により利用者保護ルールが整備された株式や投資信託などと違い、規制が及びにくく被害を招きやすい。
 代表例が「転売するともうかる有料老人ホームの入居権」や「有望な未公開株に投資するファンドの受益権」など。実情に詳しい荒井哲朗弁護士によると、「えたいの知れない業者が高齢者に売り付ける被害が近年急増している」。
 「法律の欠陥が被害が拡大した一因」と東京経済大学教授で弁護士の村千鶴子氏はいう。詐欺罪などで摘発された例はあるものの、現実には法律の抜け穴を巧妙につく手口が目立つ。
 このため政府は、改正特定商取引法の運用を弾力的にできるようにして、投資まがい商品に幅広く規制の網をかける。悪質な業者には最長2年間の業務停止命令を下せるようになる。
 法改正ではもうひとつ大きな注目点がある。民法の一部(通称・債権法)が約120年ぶりに大幅改正され、その中で「敷金」についての規定が創設された。
■敷金の範囲明示
 賃貸マンション・アパートに入居する際には、貸し手に敷金を差し入れることが多い。敷金は本来、家賃の滞納に備えたり、故意や過失によって傷や汚れが生じた場合の修復に充てたりするためにある。
 ところが、通常の使用で生じた損傷や、時間とともに自然に傷んだ分(経年劣化)まで、修繕費用として敷金から差し引く貸し手がおり、借り手との間でもめ事になりやすかった。
 そこで改正民法では、通常の使用や経年劣化分について、借り手に修繕義務がないことを明記。改正民法の施行時期は、公布後3年以内とまだ先になるが、「法律に明示することで、敷金を巡る争いを防ぐ一定の効果がある」と弁護士の上柳敏郎氏は話す。
 トラブルから財産を守るために消費者自身が心掛けることは何だろう。消費契約法や特定商取引法など消費者法について概要だけでも押さえておきたい。主なポイントを表Bにまとめている。
 事業者が事実と異なることを伝えたり、「値上がり確実」など断定的なことを言ったりして勧誘した場合、その契約は取り消すことができる。
 契約書に不当な条項が潜り込んでいるケースも要注意だ。事業者が損害賠償責任を全面的に否定できる文言が入っていたり、度を越えて高いキャンセル料を設定していたりする場合、その条項は無効になる。
 被害に遭った場合は、地元の消費生活センターの相談窓口に行くのがよい。事業者とのやり取りの記録をまとめたり、説明書、契約書を保存したりすることも大切だ。「取引の経過が消費者自身の記録や契約書などで明らかであれば、法的な対応措置を取りやすくなる」と専門家はアドバイスしている。
(M&I編集長 後藤直久)
[日本経済新聞朝刊2017年5月27日付]

最終更新:6/4(日) 7:47
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