ここから本文です

「親にジョッキで殴られた」あなたの隣にも、被虐待児はいる――。

6/4(日) 15:00配信

サイゾー

――虐待を受けた「わたしたち」に残ったものとは? よじれてしまった家族への想いを胸に、果たして、そこに再生の道はあるのだろうか。元・被虐待児=サバイバーである筆者が、自身の体験やサバイバーたちへの取材を元に「児童虐待のリアル」を内側からレポートする。

自分はまともに育つことができたのだろうか?

「親にビールジョッキで殴られて2回流血」
「親父と面と向かって話そうとすると、身体が震える」
「ある程度の年齢になるまで、自分の家がおかしいということに気づかなかった」

 数年前から、こんな書き込みの絶えないサイトがある。『あるある祭り』という掲示板に設置されたスレッド『ガチで親に虐待されてた奴にしかわからないこと』だ。投稿者は文字通り、家族から身体的・精神的な暴力やネグレクト(育児放棄)を受けてきた被虐待者たち。2013年の開設以降、2700件を超える「切ない実体験」で埋めつくされている。

 未成年向けの掲示板かと思いきや、オトナたちの参加も目立つ。20代半ばの男性や子持ちの主婦、中年と思しきユーザーまでもが投稿し、共感を示す「あるあるボタン」のクリック数に「この悲しみは自分だけではなかった」と安堵しているのだ。

 彼らは、虐待を生き延びた人。カウンセリングの世界などでは「サバイバー」とも呼ばれることもある。わたしもその中の一人だ。「サバイバー」というと、無人島で昆虫でもかじっていそうな響きだが、ある意味、危険な生物(親や家族)と同じ空間でどうにかこうにか生き延びてきたのだから、やはりこれ以上ぴったりの言葉はないだろう。

 さて、わたしは今まで「同志」に会いたい一心で、他のサバイバーたちにも取材を重ねてきた。そこでわかったのは、彼ら彼女らは成人した今もなお、虐待の後遺症と闘っているということだ。

「大声を出されると体がすくんでしまう」「真夜中になると、ふとした瞬間に“あの時”の恐怖が蘇り、涙が止まらない」「自分はまともに育ったのか不安」「いくつになっても親の存在がしんどい」など挙げればキリがない。

 東京の大学に通っていたフクちゃん(仮名・当時21歳)は「小学生のときに母親からよく包丁を向けられていたので、今も怖くて包丁に触れないんです。肉や野菜を切るのはもっぱらハサミですね」と、日常生活の悩みを打ち明けた。中にはうつ病やパニック障害、解離性障害などで心を病んでしまい、精神科の薬が手離せないケースも珍しくない。

 もしかしたら、あなたのそばにもいるかもしれない。人知れずひっそりと闘っている「サイレント・サバイバー」が。

「え、身近では聞いたことないけど!?」

 そうおっしゃるのもごもっとも。サバイバーたちは、親しい友人や恋人にさえ、虐待の過去をカミングアウトすることがほとんどないからだ。暴力のない「普通の家の子」には理解されないと諦めているし、同情されるのもいたたまれない。だからこそ同じ境遇の「仲間」が集い、なおかつ匿名で本音を吐き出せるインターネットに、彼らは引き寄せられていくのだろう。

1/2ページ

最終更新:6/4(日) 15:00
サイゾー

記事提供社からのご案内(外部サイト)

サイゾー

株式会社サイゾー

2017年10月号
9月19日発売

定価980円

【視点をリニューアルする情報誌】
第1特集:閲覧注意な動画
第2特集:哲学的水着グラビア
第3特集:MC漢、小学生と"ビーフ"対談