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ユーベの堅守はなぜ決壊したのか。決勝でまさかの4失点。レアル相手に表出した“負債”

6/4(日) 11:30配信

フットボールチャンネル

 現地時間6月3日、16/17シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦が行われ、レアル・マドリーがユベントスを4-1で降した。決勝まで大会を通して3失点しかしていなかったユーベだが、決勝の1試合だけで4点も奪われてしまった。なぜイタリア王者の堅守は瓦解してしまったのだろうか。(取材・文:神尾光臣【カーディフ】)

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●序盤こそペースをつかむも…。後半に入り、あっさりと突かれた弱み

 大会を通して3失点しかしていなかったユベントスが、決勝だけで4失点。いったい、どうしてこうなったのか。

 序盤ユーベは、ペースをつかんではいた。速いパス回しでレアル・マドリーのチェックをかわし、さらに充実の中盤に捕まらないよう、ミドルパスをサイドに送り込む戦術で展開を動かし、シュートチャンスを作った。カウンターで先制点は奪われるが、そこからパワープレーを使ってマリオ・マンジュキッチの同点バイシクルへと流れを持って行っている。

「前半は素晴らしい内容だった。レアルに対抗するには運と、まさに前半でやっていたようなサッカーが必要だった」とマッシミリアーノ・アッレグリ監督は語った。レアル・マドリー陣営とてわざと引いて攻めさせていたわけでもなかったようで、「前半は自分たちも動きが硬く引きすぎた」とジネディーヌ・ジダン監督も語っている。

 つまりこの試合のポイントは、後半開始から15分の間に一体何が起こったかにある。レアル・マドリーはユーベの弱みをあっさりと突いて押し込み、展開の脱出を不可能な状態に追い込んだ上で得点を重ねた。

 まずは彼らは、後半の立ち上がりにユーベの右サイドを狙ってボールを放り込んだ。ここには、アンドレア・バルザーリがいる。カバーリングセンスも技術も高く、本職はCBながら器用にSBもこなすベテランだが、唯一の弱点はスピードがないことだった。そこに彼らはクリスティアーノ・ロナウドやイスコを代わる代わる走らせ、速いボールを送った。

 これまでの試合ならば組織守備で十分対応できたところだったが、レアル・マドリーはパスのスピードが速いのでスライドなどの対応が追いつかない。前半から一段ギアをあげた展開のスピードは、もうユベントスに止められるものではなくなってしまった。

●抑えられたディバラ。カウンターの演出も難しく

 そしてもう一つ、ユベントスがこれまでの試合でも出来が良くなったところを許さずにペースを握り続けた。つまり押し込まれた際のつなぎだ。

 守備をしてボールを奪い、カウンターを仕掛けようとボールを前に運ぶ。ところがミスが出て、FWやサイドハーフにきちんとボールが収まらない。これは今までの試合でもあったユーベの数少ない汚点だったが、レアル・マドリーはさらに執拗にプレスを掛けてボールを奪い、波状攻撃を続けた。

 高い位置にも適切に飛び出して、イグアインに前を向かせなかったセルヒオ・ラモスや、ディバラに厳しく体を寄せ続けたカゼミーロのプレーには甘さがなかった。特に、これまでチェックしたDFの裏を一発で取り続けたディバラが抑えられたため、ユーベはカウンターの演出も難しくなった。

 さらに、ユーベが頼みの綱としていたはずのサイドの連携まで切られた。マンジュキッチやダニエウ・アウベスにボールが入れば、SBとインサイドMFがすぐに挟み込む。4-3-1-2のシステムでサイドには数的不利が生じるため、アッレグリ監督も勝利を見出せると思っていたであろうエリアで手が出せない。

 守備の際はトップ下のイスコがちゃんと中盤にスライドし、サイドで人数をかけられるようなカバーができていたからだ。「イスコがいればその分隙ができる」とアッレグリ監督は前日会見で語っていたが、とんだ見込み違いではなかったか。

 そうして流れを失ったユベントスは、後半16分にカゼミーロのゴールで1-2とされる。失点自体は、DFに当たってシュートの軌道が変わったことでもたらされた不運なもの。ただそれまでに振り回された挙句、カゼミーロをフリーにしてミドルシュートへのチャレンジを許したことは、やはりユーベ側の失態であると言える。

●猛烈な運動量による消耗。体力と気力でも上回られ…

 そしてユーベの問題は、その後に巻き返すにも相手に体力と気力で上を行かれたことだ。レアル・マドリーの選手は実によく走っていた。特にインサイドMFを務めたルカ・モドリッチやトニー・クロースの2人は、パス出しのみならず守備に前線へのランニング、そしてドリブルによるボールの推進までありとあらゆることをやっていた。

 カゼミーロのゴールから3分後、まさにそのモドリッチがボール奪取から果敢に前に飛び出して、クロスを放っている。この時ユーベのDF陣は完全にボールだけを目で追ってしまい、クリスティアーノ・ロナウドの動きを見逃してニアに入られるという、これまでにやらなかったミスを犯した。

 これまでの守備の固さは、前線や中盤の選手の貢献あってだということをユーベのDF陣は良く理解していた。つまりサイドでボールが簡単に奪われボールを運ばれた時点で、劣勢を強く悟ったのかもしれない。そして、それをリカバーするための気力も切られていた。

「今日の勝利はフィジカル面でも優位性を証明した上での勝利だ」とジダン監督は試合後の会見で強調していた。タレント軍団にトレーニングを課し、ちゃんと実行させることができたことの証明でもある。マネジメントも適切で、試合の読みも冷静沈着だったジダンは、指導者として正しい評価を受けるに足る。そしてユベントスは、そんな彼らに走り負け、競り負けた。

 そもそも1点を追う展開になり、リスクを冒して果敢に攻めざるを得なくなった時点で、ユベントスは不利に追い込まれていた。

 現在の戦術は、サイドハーフを中心に猛烈な運動量を選手に要求する。しかも4-2-3-1システムに固めた後半戦からは、起用できるメンバーも固定化していた。結局それが体力上の“負債“として蓄積し、技術とスピードで上回られ、チームとしての規律遵守でも互角なレアル・マドリーとの一戦で表面に吹き出したということかもしれない。

「CLで勝つための準備は、以前より整っている」と、アッレグリ監督もユベントスの選手たちも語っていたはずだった。確かにその通りに成長を遂げてはきたが、メガクラブをねじ伏せて優勝を奪うには力不足だったということになる。「サイクルは終わっていない。これに選手を補強さえすればチームはもっと強くなる」と指揮官は語ったが、どんな上乗せが可能となるのだろうか。

(取材・文:神尾光臣【カーディフ】)

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