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J2で一番ヘンなサッカー。ボール支配率70%で負けまくるエスナイデルの千葉

6/4(日) 11:10配信

footballista

西部謙司の『戦術リストランテ』WEB出張版

今季のJ2は曹監督の湘南、風間監督の名古屋、大木監督の岐阜、間瀬監督の愛媛といったユニークな日本人監督はもちろん、スペイン人監督のロティーナ(東京V)やリカルド・ロドリゲス(徳島)がさっそく1年目から存在感を発揮するなど個性的なチームが多い。そんな中、ひときわ異彩を放っているのが千葉の監督に就任したアルゼンチン人ファン・エスナイデルだ。圧倒的なボール支配率で敵を押し込み攻めまくる。しかし、成績は中位以下。フットボリスタの人気連載『戦術リストランテ』のWEB出張版として、西部さんが密着するマイチームの不思議な魅力を堪能してほしい。


構成/浅野賀一



J2に突如現れた“トータルフットボール”



――アルゼンチン人のエスナイデル新監督が率いる今季のジェフ千葉はヘン
なサッカーをやっていると噂です。

「何がヘンなのかを語るためにも、まずJ2の中での千葉の位置づけから話しましょうか。当たり前の話ですが、J2はJ1よりもレベルが低い。簡単にいえば『プレッシャーをかけられるとビルドアップできない』、『相手に引かれると崩せない』という2点が最大の違いです。その結果どういうサッカーが展開されるかというと、自陣でごちゃごちゃ繋ぐよりもどーんと長く蹴っちゃって陣地を回復させる。で、前から猛烈にプレスをかける。そういうチームが必ずいくつかあって、毎回1チームは昇格している。J2ではこの“前プレ”がチャンスになる。ここでボールを取れなければ潔く引く。ロングボールを蹴って前から奪いに行くばかりでは間延びするので、実際は引いている時間の方が長いです。引くと攻撃はしにくくなりますが、引いたら崩せるチームは少ない。なので、前プレと引きこもりの組み合わせはJ2の必勝パターンです。その中で今季の千葉は『プレッシャーをかけられてもビルドアップできて、相手に引かれても崩せるチーム』を目指しています」


――“J2の弱点”を両方克服するのは確かに理想ですよね。だから、ボールを支配して攻めまくると。

「特徴はハイライン&ハイプレス、そして高いボールポゼッションです。もうこれで説明を終えていいぐらいの明確な特徴です。ポゼッションはだいたい65%以上取ります。これぐらいないとハイプレスで90分もたすのは無理です。その点でハイプレスの条件はクリアしています。守備ではとにかく前からプレスします。ボールが少しでも動いたらプレス、ボールに近い相手からマンツーマンで捕まえます。それに伴ってDFラインは高く上げ、だいたいハーフウェイラインまでプッシュアップします。とにかくラインが高い。しかも極力下げません。そのためGKの守備エリアは自陣の半分ぐらいカバーすることになります。GKの佐藤優也は毎試合ヘディングしますし、スライディングタックルもします。あらかじめペナルティエリア外にポジションを取っている時もあり、ガラ空きのゴールにシュートされることも毎試合です。それで失点したのは今のところ1点だけですが危ないのは毎回です」


――なぜ、そこまでハイリスクなサッカーをやる必要があるのでしょう?

「ハイラインのメリットはプレスが効きやすくなることで、デメリットは見たままですが裏のスペースが広大にあること。ただ、最近は裏のスペースをモロに突かれる場面は減ってきています。相手が意識し過ぎている感はありますね。トルシエ・ジャパンを思い出します。弱点を丸見せしている守り方なのですが、意外とやられそうでやられない。ただ、トルシエ監督の方が下げる機能もはっきりしていて守備戦術は洗練されていました。千葉のラインコントロールは“トータルフットボール”と呼ばれた1974年W杯のオランダ代表に近い感じです」


――J2で“トータルフットボール”を目指すのはチャレンジングですね。

「しかも最新のトータルフットボールじゃなくて、ちょっとバージョンが古いんですよね。とにかく前からガンガン行って、後ろはオフサイドトラップで守るというのに近い。DFラインを下げる明確な基準がないんです。例えば、トルシエ・ジャパンのフラット3はボール保持者が“オープンな状態=前を向いてパスを出せる状態”だと自動的に後退するなどの約束事がありました。だから、3バックがオートマティックに判断をそろえられた。エスナイデル監督はなるべく下げるなという感じですね」



「指示」と「判断」の板挟み



――でも、下げる時はあるんですよね?

「危ない時は個人の判断で下げます」


――個人の判断だとラインがそろわなくないですか?

「もちろん、こういう時は下げるという約束はありますが、基本は下げないわけですから、下げる判断がけっこうギリギリになります。CBが2人ならそれでも合わせられますが、3人の場合は3人が合わせられる基準、ギリギリでない基準が必要だと思いますね。80年代後半のミランでサッキが[4-4-2]ゾーンのプレッシングサッカーを導入した頃、名手バレージだけが上げ下げの判断が合わなかったそうです。彼はギリギリでダメだという時の判断がめちゃくちゃ早かったんです。サッキが決めた約束事はバレージから見れば緩かったのではないでしょうか。ただ、バレージ独自の基準に全員は合わせられないわけで。結局、バレージがサッキのサッカーに合わせられるようになった後、大枠の約束事だけではカバーできない穴を埋めたのはバレージの危機察知能力でした」


――全員がバレージのように守れと。

「そこまでは言いませんが、状況に応じて守れということでしょう。裏を取られないためにはどこかで危機を察知してラインを下げる必要がありますが、そこは個人の判断に関わる部分が大きい。何しろギリギリなので。相手がラインの手前で余っていれば原則的に1人が前に出てマークしています。ライン形成はしますが無駄には余らさず、ラインを崩すタイミングは早いですね。そこも判断が必要なところです」


――臨機応変さが要求されるので、日本人には少し難しいかもしれませんね。

「日本人は多少理不尽でも監督から『こうやれ』と全部決めてもらう方がやりやすいかもしれませんね。エスナイデルは『前から行け』と常に言っていますが、その通りにDFが前から行って抜かれたら『なぜだ?』と怒りますからね。常識的に考えて、DFが飛び出したらボールを奪うか、奪えなさそうなら止まらないとダメじゃないですか。そのまま行って抜かれたらまずいですよ。千葉の選手も今まで通りの基準でプレーしていたら、起こらないだろうエラーをしているのは、新しい外国人監督が来て、その人の言う通りやろうとするので自分の判断にブレができている。エスナイデルが口に出しているのは『前から行け』ですが、行き過ぎてピンチを招いたら意味がないのは当たり前です。しかし、時々やり過ぎてしまう」


――そのあたりのさじ加減は文化の違いもあるのでしょうね。

「キャンプの段階では意識付けを行っているので、前から行って抜かれたり、サイドチェンジに失敗しても『OK、OK』ですが、実戦で同じことをしたら『え?』となります(笑)。言う通りにはやらなければならないけれども、それでミスになったら選手の責任ですからね。サッカーですから監督がすべてのプレーを決めることはできないし、誰もそうしようとは思わない。オーダーはガイドみたいなもので、それに沿って一つひとつの判断を選手が丁寧に行うのは当然です。ただ、新しい戦術に取り組む初期段階では戦術に寄り過ぎて判断のミスが起こりやすくなりますね」


――選手はどう思っているんですか?

「良くなってきていると言う人もいますし、半信半疑の人もいます。ただ、『監督の方針に従う』のはプロとして当然ですし、千葉もそうなっていると思います」

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最終更新:6/8(木) 13:01
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