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史上初のCL連覇。レアルを偉業へと導くジダン監督の手腕とは? 批判を抑え込む唯一無二の存在

6/4(日) 12:09配信

フットボールチャンネル

 今シーズンのチャンピオンズリーグ決勝が行われ、レアル・マドリーがユベントスを破って大会史上初の連覇を果たした。これまで莫大な資金を費やして選手を補強しながら真の強さを発揮できなかったマドリーだったが、ジネディーヌ・ジダン監督のもとでついに開花した。(文:海老沢純一)

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●ジダン監督の全てが詰まった決勝戦

 16/17シーズンの欧州王者を決める一戦は、サッカーの歴史に新たな1ページを刻む結果となった。

 これまで、「CLで連覇はできない」という言葉は通説となっていた。実際に現行の形となった92/93以降、94/95のミラン、95/96のアヤックス、96/97のユベントス、08/09のマンチェスター・ユナイテッドといった今も語り継がれる伝説的なチームが連覇に挑んだが、いずれも野望を果たすことはできなかった。

 しかし、ついにその通説は破られた。ジネディーヌ・ジダン監督が率いるレアル・マドリーは、イタリアの絶対王者ユベントスを相手に4-1というスコアで勝利。大会史上初の連覇という偉業を達成した。

 単純なクラブの規模で考えれば、マドリーは連覇を達成しても不思議ではない。しかし、過去には“大金を使いながらも勝てないチーム”の代表格とされてきた時代もあった。

 そういった中で、ジダン監督はどのようにしてマドリーを連覇という偉業に導いたのか。このユベントスとの決勝戦にその答えは詰まっていた。

 まず、スタメンを見ると、およそ100億円もの金額を費やしたベイルもハメスも不在。クリスティアーノ・ロナウドとベンゼマとともに攻撃を任されたのは、ここ最近抜群のパフォーマンスを続けているイスコだった。

 そして、アンカーの役割を担うのはカゼミーロ。地味ながらも、中盤の底で徹底的に“邪魔をする”プレーは、相手にとってどんな強力な攻撃陣よりも嫌な存在でありジダン監督は就任以降、絶大な信頼を寄せている。

 莫大な金額のスター選手をベンチに置くことも、代わりに地味な選手を選ぶことも、仮に別の監督だったら出来なかっただろう。

 そして何より、ピッチで繰り広げられる戦いは、指揮官がジネディーヌ・ジダンでなければ、少なからず批判的な声が上がってもおかしくはないものとなっている。

●“華麗”よりも“勝利”。リアリスト同士の戦術合戦

 ジダン監督が志向するのは「堅守からのカウンター」。この決勝戦でユベントスはマドリーのカウンターを封じるために、ある程度相手にボールをもたせた上で強いプレスを仕掛けることによって主導権を取りに来た。

 データサイト『Who Scored.com』で前半45分間のスタッツを見ると、支配率は46.5%:53.5%、パス成功本数は193本:249本とどちらもマドリーが上回っている。

 一方で、マドリーの前半45分間のプレーエリアを見ると、自陣で57.87%となっており、逆にユベントスは敵陣で54.29%を記録した。

 このデータからも、主にマドリーが低い位置でボールを持ち、ユベントスが高い位置からプレスを仕掛けていたことがわかる。これ自体は恐らくユベントスの狙い通りだったはず。

 前半の展開はマドリーにとって難しいものとなっていたが、20分にはモドリッチ、クロース、ベンゼマ、ロナウド、カルバハル、そしてロナウドとボールをつないで先制ゴールをゲット。

 自陣からスタートしたこの速攻は今季のマドリーを象徴する流れであり、戦力・戦術ともに最も充実しているユベントスですらも対抗できない鋭さを持っている。

 その後、27分にはマンジュキッチによる見事なバイシクルシュートによって同点となるが、後半からはマドリーの一方的な展開が続いた。

●自らの武器を最大限に生かすジダン

 後半開始から、ユベントスは明らかに前半とは異なるチームとなっていた。

 後半45分間のユベントスのプレーエリアを見ると、自陣で57.09%と大きく後方へと後退し、シュート数は前半の8本から後半はわずか1本。タックル数も前半の9回から5回へと減少した。

 これは、試合開始からギアをトップに入れてプレーしたことが影響しているのだろう。とはいえ、アッレグリ監督にとってはそれも想定内であり、後半からはじっくりカウンターを狙う戦略を立てていたことも考えられる。

 前半は前線からプレスを仕掛け、後半からは相手が前に出たところをカウンターで応戦…という戦略は常套手段ともいえる。

 しかし、マドリーのプレーエリアを見ると、後半の45分間も自陣で51.75%と過半数を記録。相手の誘いに乗らず、徹底して低い位置からの速攻というスタイルを貫くことによって3得点を生み出した。

 このマドリーの戦い方は、ポゼッション志向の人々からは「つまらないサッカー」と言われてしまうものでもあり、過去15年近くに渡ってマドリーが苦しめられてきた部分でもある。

 一方で、マドリーの面々を見ると明らかに堅守速攻に特化したメンバーとなっており、ジダン監督は単純にチームが最も力を発揮できる戦術、そしてメンバーを選んでいるに過ぎない。

●攻守に大きく貢献した影のMVPとは?

 そして、この決勝戦でも最も重要な働きをしていたのが中盤の底に位置するカゼミーロだった。

 カゼミーロは90分間で両チームトップのタックル数7回を記録し、ユベントスのキーマンでもあるディバラを抑え込んだ。さらに92.6%という高いパス成功率を維持し、61分にはペナルティエリア外から勝ち越しとなるゴールを決めた。

 公式の決勝MVPは2得点のクリスティアーノ・ロナウドだったが、影のMVPはカゼミーロだった。このカゼミーロのような選手は、一時期のマドリーであれば冷遇される可能性の高い存在だが、ジダン監督は誰よりも重宝している。

 派手さよりも堅実な選択ができるというのがジダン監督の強みとなっており、そういった指揮官こそマドリーに必要な存在ながら、これまでは受け入れられないことが多かった。

 しかし、ジダンという世界中から尊敬を集める人物に安易に異議を唱えられる者はマドリーの周辺にはいないのかもしれない。ジダンという指揮官の登場によって、ついにマドリーは本当の強さを手に入れた。

(文:海老沢純一)

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