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知識がなくて経験にすがるヤンキー、経験がなくて知識にすがるオタク

6/4(日) 11:30配信

Book Bang

『「わからない」という方法』から『上司は思いつきでものを言う』、『いつまでも若いと思うなよ』に『性のタブーのない日本』と、あちこちの版元からいろいろ出ててもハズレ極少なのが“橋本治新書”。この『知性の顛覆(てんぷく)』も例外じゃない。

 トランプだブレグジットだ、ヘイトだカルトだと、バカの黴(かび)が蔓延(はびこ)る世界を分析してくれる口ぶりは、いつもの雑談調で熱くも冷たくもなく、自分自身もときに知性から離れてしまうと認めたりで、フェアです。国内については固有名詞を極力避ける穏当な語り口ながら、知性とモラルが分離したという指摘を読めば安倍だ東芝だのキイワードがちゃんと頭に浮かんでくるから、これまた見事だわ。

 大所高所の話のみならず、個人的に身につまされるような考察もあれこれ。この国は知識がなくて経験にすがるヤンキーと、経験がなくて知識にすがるオタクだらけになった。そう聞かされると、ワタシの身の置きどころのなさはヤンキーでもオタクでもないからかと、眼から鱗が落ちた。

 ちょと心配なのは、この新書が版元とテーマゆえ、“朝日が世に送る反知性主義叩き本”、つまり反安倍・反保守・反その他いろいろの狭量かつ政治的な書と誤解されかねないことだけれど、ろくに読まずに政治的に騒ぐような痴性恥性稚性あふれる連中からして、橋本治が今回イジり回す対象。蛾のように舞い虻のように咬む、その絶妙なイジり具合を愉しむ側に回ることを、皆様にはお勧めします。

[レビュアー]林操(コラムニスト)

新潮社 週刊新潮 2017年6月1日号 掲載

新潮社

最終更新:6/6(火) 17:58
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