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レアルが迎えた黄金時代。ここ4季で3度目のCL制覇。モドリッチ&クロースという生命線【西部の戦術アナライズ】

6/5(月) 11:50配信

フットボールチャンネル

 現地時間6月3日、16/17シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦が行われ、レアル・マドリーがユベントスに4-1で勝利した。堅守を誇るユーベ相手に4得点を奪った白い巨人。ここ4季で3度目のCL制覇と、まさに黄金時代を迎えていると言えそうだ。(文:西部謙司)

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●どちらかが攻め始めると、しばらくその状態が続く展開

 完成度の高い両チームの激突は、意外にもレアル・マドリーの圧勝に終わった。

 ただし、試合内容はさほど一方的ではない。少なくとも前半は互角だった。興味深いのは、どちらかが攻め始めるとしばらくその状態が続いていたことだ。奪えないのだ。しばらくどちらかが押し込む時間帯があり、それが過ぎると攻守交代という展開だった。

 10分をすぎたあたりからレアルがボールを支配した。ユベントスは立ち上がりこそハイプレスを仕掛けていたが、いったん引いている。自陣でボールを奪っても無理な速攻はやらなかった。

 どちらもオールマイティなチームである。ハイプレスも引いて守ることもできて、速攻も遅攻もできる。唯一、ユベントスの懸念はレアルの速攻だったはずだ。DFのスピードがレアルのFWに対抗できないからだ。そこで、ユベントスの守備は裏のスペースを空けないことがポイントになる。また、無理に速攻を仕掛けて戦列が伸びてしまうのも避けたかった。

 ところが、ユベントスはレアルにカウンターを食らって20分に先制点を許している。

 ハイプレスでボールを奪い、ディバラとダニエル・アウベスのコンビで攻め込んだが逆に奪われる。レアルは自陣深くからパスをつなぎ、中盤で受けたクロースが1人かわしてドリブルで運ぶ。このクロースの持ち出しによって、一気に攻撃のギアが入っている。

 クロースはベンゼマへつなぎ、ベンゼマから逆サイドのロナウドへ。後方からロナウドを追い越したカルバハルへつながれたボールは、ダイレクトでロナウドへ戻ってきた。ロナウドは、自分とカルバハルの2人を1人で守らなければならなかったキエッリーニの視野からそっと消え、カルバハルからのラストパスを待っていた。

 注文どおりのカルバハルのパスを冷静に決めるロナウド。レアルの攻め込みは高速カウンターというほどではないが、ユベントスは最後まで受け身の状態だった。

●畳みかけるレアル。終わってみれば4-1と大差に

 最も警戒していただろう形で失点を喫したものの、これで吹っ切れたのかユベントスは攻勢に転じる。今度はレアルが自陣へ引いて耐える番になった。

 ユベントスのハイプレスにレアルは自陣から出られない。1度だけ得意の高速カウンターから決定的になりかけるがイスコがコントロールをミスしてしまった。ユベントスはリスクを冒した攻撃を成就させ、26分にマンジュキッチがオーバーヘッド気味の、しかもドライブのかかった見事なシュートを決めて追いついた。

 その後もしばらくレアルは自陣からのビルドアップが上手くいかず、ユベントスの包囲網を逃れようとサイドチェンジの長いパスを使うがかえって狙い打ちにされる。終盤にようやくクロースとモドリッチをボールが経由するようになり、そこからは再び押し込み始める。レアルはこの2人さえ経由させれば運べる。

 後半開始から、レアルはバルザーリの裏へ長いパスを落として攻め込む。ここはユベントスのウィークポイントだ。後半はレアルのボール支配が続いた。ユベントスは背後のスペースを消して耐えるが、イスコ、クロース、モドリッチを中心としたパスワークに対して奪いどころを見つけられない。

 押し込むレアルはカゼミーロのミドルシュートで2-1と再びリード。前半同様、ここからユベントスのターンになるかと思われたが、今回はそうではなかった。レアルは攻勢を緩めず、ハイプレスで奪ったモドリッチからのパスをロナウドが絶妙の走り込みとボールタッチで至近距離から決めて3-1と畳みかけた。

 ユベントスはバルザーリをクアドラードに代え、右MFのダニエル・アウベスを右SBへ下げて攻撃型へシフト。レアルはいったん撤退して守るが、ボールを奪うと簡単には渡さない。ユベントスはピャニッチをマルキージオに交代、さらにディバラからレミナ。期待されたディバラは彼らしいプレーを見せられずじまいだった。

 一方、レアルはベンゼマ→ベイル、イスコ→アセンシオと交代カードを切り、フォーメーションを4-5-1として守備固め。84分のクアドラード退場で、クロースをモラタに代える余裕もあった。90分にはロナウドのハットトリックを狙ったFKが壁に弾かれると、拾ったマルセロがゴールライン際に切り込んでプルバック、アセンシオがダメ押しの4点目。終わってみれば4-1と思わぬ点差がついた。

●レアルが迎えた黄金時代。生命線はクロースとモドリッチ

 レアルの優勝はチャンピオンズカップの時代も含めると通算12回目。CLになってからは史上初の連覇を達成した。ここ4シーズンで優勝3回、レアルは華々しい彼らの歴史上でも何度目かの黄金時代を迎えている。

 ライバルのバルセロナは、ボールポゼッションとプレッシングの循環で勝ちパターンを作ってきた。ほぼ相手陣内で攻守を完結させてしまうやり方だった。レアルはバルサに似ているが、もう少しオールマイティだ。引いて守ることもできるし、カウンターは世界最高レベルである。

 ただ、オールマイティということならユベントスのほうがバランスは良かったかもしれない。レアルはユベントスほど守備に安定感がないからだ。先制した後にユベントスに攻め込まれると同点にされた。

 しかし、その後は再び攻撃に転じて立て続けの2ゴールで勝負を決めた。レアルの攻撃力がユベントスの堅守を上回った。もともとレアルに速攻されたくないユベントスとしては、背後を消しての堅守速攻に勝機があったと思う。だが、その堅守を崩されたのだから力負けである。

 速攻リスクを承知でユベントスが攻勢をとり続ければ、レアルの守備は崩せたかもしれないが、実際にはユベントスが攻め続けることはできなかった。クロースとモドリッチがいるかぎり、必ずレアルに反撃されるからだ。

 彼らにボールが入りさえすれば、ハイプレスからは脱出できる。相手を押し戻すこともできる。MVPは2ゴールのロナウドだが、レアルの生命線はやはりクロースとモドリッチだった。

(文:西部謙司)

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