ここから本文です

浦和は美しく紳士的な勝者だったか 済州戦の乱闘騒ぎで思い起こすクラマー氏の言葉

6/5(月) 12:39配信

THE ANSWER

「本当に友だちが必要なのは敗者」 クラマー氏が背中で示した勝者の美学

「サッカーは子供を大人に、大人を紳士にする」――デットマール・クラマー 

“日本サッカーの父”デットマール・クラマー氏が残した至言だ。実はこうした言葉の数々に、クラマー氏が敬愛された理由がある。 

【画像】リオ五輪に出場した日本人美人アスリート

 取材を通じて長く交友を続けてきたスポーツライターの賀川浩さんが「指導の天才」と称賛していたように、近代日本サッカーの全てはクラマー氏によって導かれた。文字通り子供だった日本サッカーは、大人として成熟していくわけだが、さらに紳士とは何かも、クラマー氏は背中で見せてくれた。 

 1964年東京五輪で、日本はいきなり優勝候補のアルゼンチンと対戦した。当時の五輪はアマチュア限定の祭典だったが、アルゼンチンには間もなくフル代表に選出されていくロベルト・ペルフーモら名手が含まれていた。ところが劣勢が予想された日本が、大会屈指の強豪に3-2の逆転勝ちを収める。当然、試合後の日本ベンチは歓喜に沸いた。 

 しかしクラマー氏は、しばらくともに歓びを噛みしめると、アルゼンチン側のロッカーへと向かう。 

「勝者にはたくさんの友だちができる。でも本当に友だちが必要なのは敗者の方だから」 

 そう言い残して、まさかの敗戦を喫したアルゼンチンのスタッフ、選手たちに労いの言葉をかけに行くのだ。 

 勝者が何を気遣うべきか――。当時の代表選手たちは、クラマーの姿からそれを学んだ。

礼を重んじる心が備わっていた“世界一の柔道家”

 一方、同じ東京五輪で日本が痛恨の敗戦を喫した競技もある。同大会で初めて採用された柔道である。 

 日本は順当に軽量級、中量級、重量級で金メダルを獲得する。しかし最大の焦点は、実質“世界一の柔道家”を決する無差別級だった。そして日本の前に立ちはだかったのが、オランダのアントン・ヘーシンク。日本の切り札だった神永昭雄を、決勝の畳で押さえ込んだ。 

 金メダル獲得という快挙達成に、オランダのコーチ陣は畳に駆け上がろうとした。だがそれを見越したヘーシンクは、「待て」と手で制する。そして、そのままゆっくりと立ち上がると、礼をして静かに畳を降りた。日本の国技を学んだヘーシンクには、礼を重んじ相手を尊重する柔道の心もしっかりと備わっていた。その素晴らしい人間性に、敗戦という屈辱を味わい傷ついた多くの日本人の心が癒されたはずだ。 

 AFCチャンピオンズリーグのラウンド16で、済州ユナイテッドの選手たちが、醜悪な暴挙に出た。蛮行の度が過ぎたため、チョ・スンファン監督の「勝者にもマナーが必要だ」という発言は、轟轟たる非難にかき消さがちだ。しかし一方で、浦和は美しく紳士的な勝者だっただろうか。

1/2ページ

最終更新:6/5(月) 12:39
THE ANSWER

記事提供社からのご案内(外部サイト)

THE ANSWER

株式会社Creative2

アスリートを目指す子供たちや競技者の育成とスポーツの普及をテーマとした総合スポーツニュースサイトです。