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【黄金世代・復刻版】遠藤保仁メモリアル ~ シドニー五輪秘話「進撃の裏側で」(前編)

6/5(月) 6:00配信

SOCCER DIGEST Web

忘れられがちなもうひとつの、“南豪の2週間”である。

【週刊サッカーダイジェスト 2000年10月18日号にて掲載。以下、加筆・修正】

 メダル獲得へ邁進したシドニー五輪代表チームは、キャンベラ、ブリスベン、アデレードと戦いの場を移し、かけがえのない経験と苦渋を味わった。
 
 だがその裏側で、自問自答を続ける男たちがいた。
 
 ピッチで戦うことも、ベンチに入ることもなかったバックアップメンバー。そのひとり遠藤保仁が、自身の分岐点となった南豪での日々を、いま振り返る。

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―――◆―――◆―――
 
 どこからか、記者の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
 
 眼前では、これから延長戦を迎えようかという日米両雄が円陣を組み、後方を振り返ると、日本の各プレスがこわばった表情で控え、いかなる結末を迎えるのか、緊張のままに構えている。
 
 アデレードのヒンドマーシュ・スタジアムでは、シドニーオリンピックの準決勝進出をかけた大一番が、いままさに始まろうとしていた。
 
 ふと、視線を下段のスタンドへずらすと、遠藤保仁と吉原宏太が、笑顔で手を振っている。傍らには曽ケ端準、山口智の姿もある。
 
 記者席とピッチを結ぶ長い距離、そのほぼ中間の位置で、彼らは戦況を見つめていた。それはどこか、現実から切り離され、和やかで穏やかな時間が流れるエアポケットのようだった。
 
 なぜ、この雰囲気のなかで笑っていられるのか。瞬間的には理解できなかったが、彼らの境遇をよくよく考えてみると、胸の奥底からこみ上げてくるものがあった。
 
 オーストラリアでの日々を高速回転で巻き戻すと、当然ながら、日本チームのあらゆるシーンに4人は登場した。
 
 1人ひとりの笑顔に触れ、いま一度、1つひとつをコマ送りで思い返してみる。
 
 彼ら4人はベンチに入ることを許されなかった者たち。だが紛れもなく、栄えある日本五輪代表のメンバーであり、誰と登録が代わってもおかしくない実力者たち。バックアップメンバー――栄光への進撃を続けたチームにあって、自己との葛藤を繰り返す選手たちがいた。
 
 これは忘れられがちなもうひとつの、“南豪の2週間”である。

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最終更新:6/5(月) 11:17
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