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参加者をうんざりさせない「研修」運営のポイント

6/5(月) 16:00配信

HARBOR BUSINESS Online

◆ストレートに本題に入れば良いというものではない

 1対1であらたまって話す時にも、電話で相手に話しかける場合でも、コミュニケーションの序盤で、BIGPRという分解スキル(参照:『会って20秒で相手を引き付けるために重要なこと』)を発揮すると、相手を引き付けることが格段にできるようになる。BIGPRとは、B(Background 背景)、I(Introduction 紹介)、G(Goal 目的)、P(Period 時間)、R(Role 役割)を、コミュニケーションの冒頭で聞き手に伝達する方法だ。

 BIGPRは1対多数の会議や研修で実施する場合にも、多数の聞き手を引き付けるために効果を発する。例えば、会議の冒頭で、BIGPRを行わないで、「それでは、資料の1頁を開いてください」……と、いきなり本題から入ってしまうケースが、実は多い。

 いきなり本題に入ってしまっては、会議参加者は、いったいこの会議は何の前提で行うのか、話し手や進行役はどういう人なのか、会議の目的は何なのか、いったどのくらいの時間実施されるのか、参加者はどういう心持ちで参加すればよいのか……ということがわからないままスタートするので、会議の参画度合が低下する。低い参加度合のまま会議はスタートするので、会議の目的が果たされる確度が下がる。

「全社的な中期経営計画の実行計画のプラニングの一環で行います(B Background 背景)。進行を務める企画担当の山田です(I Introduction 紹介)。本日は当部の実行計画を確定させたいと思います(G Goal 目的)。15時までの1時間で実施します(P Period 時間)。本日は実行計画を確定させますので、存分に意見を言っていただきたいと思います(R Role 役割」というBIGPRを行えば、参画度合を高めて会議をスタートさせることができるのだ。

◆研修冒頭の「べからず集」はもうたくさん!

 このBIGPRは、参加者自身の自発的な参画意欲を高める効果もある。背景や目的や時間配分を明示して、参加者に安心していただき、心地良く、主体的参加する雰囲気を作り上げる効果があるのだ。

 一方で、現実に行われている研修は、参加者を不安にさせ、居心地悪く、主体的な気持ちを損なうことが、多く行われていることが実情だ。研修会場に到着すると、受付で名簿にチェックをされる、指定席へ案内される、発言は指名される……受付から研修会場に入るまでの間に、主体的な気持ちが、次次と低下するのだ(参照:『「準備万端」な研修ほど能力開発には役立たないこれだけの理由』)

 極め付けは、研修の冒頭だ。「それでは、ただいまからXX研修を始めます。まず、資料の確認です」と、資料の確認をさせられる。そして、第一声が、「注意事項を連絡します。携帯はオフ。PCはシャットダウン。私語厳禁。質問は最後にまとめて取ります。最後に再び出欠を取ります。この研修は、昇格のために必要な研修ですので最後まで必ず受講してください」という「べからず集」だ。

 そして、おもむろに、「それでは講師の先生を紹介します。XX先生の経歴は……」という具合だ。これを茶番だと思っている参加者は少なくない。しかし、いちいち口に出すほどのことはなく、ひたすら研修時間が過ぎるのを待てばよいと懸念を表明していないのではないか。こうした日本のビジネスパーソンの耐性が、押し付け研修を長年放置してきたと思うのは、私だけだろうか。

◆携帯オフもPCシャットダウンも不要

 年間100社、今年は3,000人が参加して、分解スキル・反復演習型能力開発プログラムを実施している。外部団体のセミナー講師を務めたり、大学で講義したりすることも多い。しかし、私は、一切、こうした注意事項の連絡や、私の紹介をお断りしている。そもそも受付を辞退して、私自身が参加者と挨拶して、入場を促す。他の人によってアナウンスしていただくことも辞退して、私自身がセミナーの最初から進行役を務める。

 そして、私が最初にやることは、BIGPRだ。「管理職研修の一環で実施するプログラムです(B Background 背景)。トレーナーを務める山口博です(I Introduction 紹介)。本日は、コーチング話法の演習です(G Goal 目的)。時間は2時間(P Period 時間)。ほとんどが話法のロープレですので、のびのびと積極的に取り組んでください(R Role 役割)」と話して、プログラムの本題に入る。

 この進行術を体得していただくプログラムを実施していて、よくある質問に、「携帯オフやPCシャットダウンの連絡をしなくてもよいのか」というものがある。その必要はない。トレーナーのファシリテーションやプログラムが魅力的であれば、携帯やPCで内職される率は低下する。そもそも、能力開発は自分自身のパフォーマンスやキャリアに跳ね返るので、プログラムに参加したくなければ参加しなければよいという考え方だ。

 私語はしたければすればよい。質問をしたければ適時すればよい。発言者は指名しない。出欠確認は、プログラム実施時の演習シートの回収に代えられる。受付もいらない。席は自由で不都合はない。私のプログラムの参加者からは、「これほど気持ちよく研修に参加できたのは、初めてだ」「ストレスが驚くほどなかった」「やる気が出た」というフィードバックをいただいている。

 BIGPRは、会議や研修の冒頭の切り出し方の話法であり、相手を引き付けるコミュニケーションスキルである。しかし、それだけではない、能動性を高める効果も高い、組織をハンドリングするスキルのひとつとしても位置づけられるのだ。

※「BIGPRのスキル」は、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月。ビジネス書ランキング:2016年12月丸善名古屋本店1位、紀伊國屋書店大手町ビル店1位、丸善丸の内本店3位、2017年1月八重洲ブックセンター4位)で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第36回】

<文/山口博>

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、リブ/コンサルティング組織開発コンサルティング事業部長。。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。

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