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伊賀大介は『1984年のUWF』を読んで「至り」ながら大人になったヤツらの過去に熱くなる

6/5(月) 10:00配信

Book Bang

 青春譚‼ それは、とてもとても純粋で脆く美しく、いつの世でも夢見がちなヤツらの心を掴んで離さない。
 歴史上の、世界中の、あらゆる若者たちに起きた、出逢いと別れ、約束と反目、理想と現実、愛情と友情と愛憎を全て引っくるめた、星座の瞬きの記録! いつだって若者たちは街角や安酒場で夢を語り、現状に抗い、革命を望み、その殆どが理想の高さ故に道を分かつ。幕末の志士、トキワ荘、ビートルズ、ヌーヴェルヴァーグ、ダイヤモンド映像、駒大苫小牧、フェイスブック……繰り返される諸行無常(©向井秀徳)。だからこそ! あらゆる青春譚は輝いている。読みたい気持ちを抑えきれないのと同時に、コレを読んでしまったら自分の何かが傷付いてしまうのでは、という読みたくない感情二つ我に在り。この相反する感情を持ちながら、結局読んでその苦味を味わうのだ。
 そしてこの冬、そんな禁断の青春譚がまた、この世に産み出されてしまった‼ そのアルファベット3文字に覚えがある奴は、歓喜の声を挙げるかもしれない。彼らの理想に青春を捧げた奴は、死んでも読むまいと瞼を閉じるかもしれない。
 1984年、この日本で旗揚げした「UWF」という、小さなプロレス団体。そう、これはまだ世間の若者が「あの話、ガチだぜ」とか「ガチうめぇー」とか当たり前の様に使う何十年も前のおはなし……。プロレス・格闘技を御存知ない方でも、00年代初頭の大晦日格闘技番組の狂騒は多少なりとも覚えがあるかもしれない(民放3局って狂ってるだろ‼)。PRIDEもKー1もヒクソン・グレイシーも桜庭和志も、つまりは全て、この男達から始まったのだ。

 格闘技を渇望したのに、天才的にプロレスの才能があった男・佐山サトル(初代タイガーマスク)と、プロレスと生き様が不器用であった故に、熱狂的なファンに愛された男・前田日明。両者を筆頭に、遅咲きの職人・藤原喜明と、当時は才能豊かな若手レスラーに過ぎなかった高田伸彦(当時)ら、の夢と現実と葛藤を冷静且つ愛情を込めて描いたのが、本書『1984年のUWF』である‼ 筆者は今までも「1976年のアントニオ猪木」「1985年のクラッシュギャルズ」など近年の年号ナンバリング・ノンフィクションの先駆けとなるド・名著を何冊も上梓している、掛け値無しに「リアルワン」な作家である。
 勿論、元プロレスファンなら涙&感慨無しではラストまで辿りつけない最高な一冊なのだが、ここは敢えて全くプロレス/格闘技に興味のない人にも是非触れて欲しいのだ。
 常に、若者たちは「至り」まくりながら、大人になって行く。彼等の傷だらけの日々が、時を経てこんなにもグッとくる「青春譚」に成り得た事実を確認し、もし機会があれば現在の彼等の姿を見てみて欲しい。そこには、後ろめたさなど微塵も感じない「イイ顔」が揃っている事だろう。
 よし‼ 「UWFメイン・テーマ」聴きながら、今日も今日とて俺のリングに向かうかっ‼

[レビュアー]伊賀大介
1977年生まれ。熊谷隆志に師事後、独立。ミュージシャン、広告、舞台、映画などのスタイリングを中心に活動。band所属

太田出版 ケトル vol.35 掲載

太田出版

最終更新:6/5(月) 12:49
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