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香川真司に求められるリーダーシップ。受け身から脱皮し、ピッチ上の統率役となれるか

6/6(火) 11:08配信

フットボールチャンネル

 日本代表は5日から全員が集合し、本格的な合宿を開始した。シリア代表戦を2日後に控え、徐々に集中力も高まりつつある。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は13日のイラク戦を前に、国際親善試合で以前採用した布陣を再びテストする様子。そこでキーマンになるのは香川真司に他ならない。いま、日本の“10番”に求められる役割とは。(取材・文:元川悦子)

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●香川、ドルトムントと同じポジションで先発か

 千葉県内での8日間の欧州組合宿を打ち上げ、5日から6月2連戦(7日=シリア戦、13日=イラク戦)を視野に入れた合宿に突入した日本代表。この日から今野泰幸(G大阪)、山口蛍(C大阪)ら国内組11人が合流し、これまでサポートメンバーだった宇佐美貴史(アウグスブルク)も正式に追加招集されたことから、26人で重要な2連戦に向かうことになった。

 同日夕方、試合会場の東京スタジアム(味の素スタジアム)で行われたトレーニングの冒頭では、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が前日とは別人のように激しい身振り手振りで8分半にわたる演説を展開。勝利の必要性を強調した。指揮官を含めてチーム全体にスイッチが入った様子だ。

 3月のUAE戦(アルアイン)と対タイ戦(埼玉)の2連戦では、前者が4-3-3、後者が4-2-3-1と基本布陣を変えながら戦ったハリルホジッチ監督だが、今回は今野の復帰もあってUAE戦と同じシステムに戻すようだ。

 同日冒頭の練習を見る限りだと、最終ラインは(右から)酒井宏樹(マルセイユ)、吉田麻也(サウサンプトン)、昌子源(鹿島)、長友佑都(インテル)、アンカーに山口、右インサイドハーフは今野、左インサイドハーフに香川真司(ドルトムント)、右MF久保裕也(ヘント)、左FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)、1トップは大迫勇也(ケルン)というフィールドプレーヤー10人がファーストチョイスと見られる。

 もちろんシリア戦はテスト的な部分も多いことから、違った組み合わせが試される可能性も否定できないが、イラク戦は彼らを起用するプランが基本線と考えていいだろう。

 となると、香川は代表でも所属クラブと同じポジションでプレーすることになる。5月20日のドイツ・ブンデスリーガ最終節・ブレーメン戦、27日のDFBポカール決勝・フランクフルト戦の最近2試合のボルシア・ドルトムントは3-1-4-2のような形を採っており、香川はウスマヌ・デンベレと並んで左インサイドハーフに入っていた。そのどちらでも得点をお膳立てしたことから、ハリルホジッチ監督も同じ位置で使ってみたいという気持ちが高まったのかもしれない。

「よりボールに触れる機会が増えると思うし、そこでリズムを作れるのは自分にとっては大きいのかなと。どんどんボールを受けて、前へ出ていくのを繰り返していければ、必ず相手にスキが生まれてくる。シリアもそうだと思うんで、そこは大きなメリット。ドルトムントでもやってるポジションなんで、楽しみですね」と本人も前向きに捉えている。

●不安が残る相方・今野の状態。香川がリスク管理役にも?

 同じインサイドハーフを務めるのが、UAE戦で目覚ましい働きを見せた今野というのも心強い点だ。もちろんデンベレほどの傑出した個の打開力はないにせよ、今野は日本人では頭抜けたアグレッシブさと球際の強さを誇る万能選手。香川自身も「UAE戦のプレーを見れば、問題ないと思いますし、あそこで攻守において出ていけるっていうのは、このチームのストロングポイントになる。その回数を僕たちがさらに増やしていければ、より脅威になる」と今野と組むメリットを改めて口にした。

 とはいえ、ご存知の通りベテランMFは右足小指骨折の重傷から2か月半ぶりに公式戦復帰を果たしたばかり。4日のジュビロ磐田戦での30分間のプレーは本来の姿とはやや遠い印象も否めなかった。本番になれば凄まじい闘争心を発揮する選手ではあるが、今回負担をかけすぎるのはマイナスだ。守備面も含めて香川がよりサポート意識を強め、相方の役割を軽減してあげることが肝要だ。

「(中盤は)1ボランチは1人しか残らないから、サイドバックの選手も含めてリスクマネジメントを考えないといけない。(イラク戦は)アウェイで、特にピッチコンデションが悪い中でやるんで、そういう部分も確認しながらやっていきたい。自分たち1人ひとりが持っているものをピッチで表現することを次の試合では意識してやりたいなと思います」と、香川は山口を含めた中盤のバランスや距離感に細心の注意を払いつつ、ベストな関係を構築していくつもりだという。

 今季ドルトムントでは、デンベレやラファエウ・ゲレイロら若いアタッカー陣に囲まれ、香川が周りに気を使ってサポートに入ったり、バランスを取りながらプレーする場面が少なくなかった。その傾向が特に強かった昨年末には「個でどうにか打開してくれみたいな雰囲気があって、それも(勝つための方法の)1つだとは思うけど、もっとチームとして連携していく必要がある。そう周りを自分が引っ張っていくつもりでやってました」と語り、リーダーシップをより強く押し出そうとしていた。

●求められる受け身からの脱皮。香川が担うべきリーダーとしての役割

 周りを取りまとめ、コントロールしたその経験は日本代表でも必ず生きてくる。インサイドハーフのパートナー・今野は34歳のベテランだが、ハリルホジッチ監督がスタメン候補と位置づける他の攻撃陣はいずれも香川より年下。アンカーの山口も同様だ。国際Aマッチの試合数もハイレベルな国際舞台に立った回数も際立って多いのだから、自分からどんどん周りを動かす役割を担うべきではないか。

 ダイナミックなランニングを得意とする原口に対して「ボールを取った後のスプリントだけじゃなくて、それ以外の引き出しも増やしていかなきゃいけない」と要求するあたりは、その自覚に表れだろう。長年、本田圭佑(ミラン)や岡崎慎司(レスター)ら年長者に引っ張られ、彼らの考えに合わせがちだった香川だが、そろそろ受け身な姿から脱皮してもいい時期。シリア戦でそれができれば、自信と余裕を持ってイラク戦に乗り込めるはずだ。

 そのシリアという相手も、2016年3月の2018年ロシアW杯アジア2次予選最終戦(埼玉)で彼自身が2ゴールを奪ったゲンのいい相手である。

「そのことは考えてなかったけど…」と香川は笑ったが、ゴールへの渇望は人一倍強いはず。今季ブンデスリーガで1ゴールに終わった悔しさを晴らし、納得のいく形で今季を終えるためにも、ここでスッキリとした得点がほしい。1年3か月前の再現が期待されるところだ。

「今回はメンバーも代わるだろうし、初めての選手もいるし、そういう選手のサポートしながら、自分がチームにいいものをもたらすことにこだわりを持ってやっていきたい」と本人も言うように、香川が攻守両面のスイッチ役、統率役として新たな一面を見せてくれれば理想的。エースナンバー10の躍動が楽しみだ。

(取材・文:元川悦子)

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